3DプリントとAI技術で製造を効率化。中国の新興油圧機器メーカー、大幅なコスト削減を実現

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3DプリントとAI技術で製造を効率化。中国の新興油圧機器メーカー、大幅なコスト削減を実現

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油圧機器の製造を手がける「賽諾動力(SynoDinamics)」が2023年12月に、シリーズAでベンチャーキャピタル(VC)の啓明創投(Qiming Venture Partners)から数千万元(数億~十数億円)を調達した。資金は製品ラインの拡大、市場の開拓、量産化に充てられる。

2022年に設立された賽諾動力は主に3Dプリント技術と人工知能(AI)ベースの設計技術を活用して、高性能かつコストパフォーマンスの高いハイエンド油圧機器を製造している。

油圧制御は現代の工業で重要な役割を担っており、非常に高いエネルギー密度を提供できるのが特長だ。建設機械、一般機械、自動車、航空宇宙などの分野で活用され、2022年の世界の油圧機器市場規模は3000億元(約6兆円)に上り、うち中国市場が30%を占めた。

しかし、中国は依然としてポンプやバルブ(弁)などの技術が海外に劣り、ハイエンド製品のほとんどを輸入に依存しているため、技術革新が急務となっている。

従来の鋳造や機械加工に比べ、3Dプリント技術を活用した油圧機器の製造はコストが同程度ながら、流体力学に沿った湾曲する流路を作ることができ、流体性能の向上、発熱と損失の低減、サイズの縮小につながる。近年の金属3Dプリント技術の成熟に伴い、航空向け油圧機器の実用化と量産化が実現した。

油圧機器の頂点に立つと考えられている電動油圧サーボ弁は、Moog(ムーグ)やBosch Rexroth(ボッシュ・レックスロス)といった外資系メーカーが大きなシェアを握り、平均価格は3000ドル(約45万円)、納期は6〜12カ月に上るという。中国にもサーボ弁の開発と量産を手がける研究機関はあるが、性能と生産能力に限界があり、市場競争力は弱い。

賽諾動力は、リバースエンジニアリングや従来の精密加工によって設計と製造を進める他の中国メーカーとは異なり、AIで高性能なサーボ弁の流路構造を設計しており、それは3Dプリント技術でしか製造できない。この新たな構造や特徴は部品点数を大幅に減らすと共に部品の要求精度を下げ、組立と調整の効率化、製造コストの削減につながる。

バルブの本体はAI設計と付加製造により、内部流路の圧力損失と自重が減少し、特殊材料で付加製造されたスプールなどが強度と耐摩耗性を高めることで、制御性が向上する。

賽諾動力とMoogのサーボ弁スペック比較

同社のサーボ弁は1分あたり2〜250リットルの流量をカバーする5種類をそろえ、主要な技術指標はMoogと同等もしくはそれを上回る水準で、同レベルの海外製品と比べ価格は3割にとどまるという。航空宇宙産業用機器、建設機械、ロボットなどの分野で中国航空工業(AVIC)や中国船舶(CSSC)など中央政府が管轄する国有企業のほか、多くの民間上場企業、特殊ロボットメーカーを顧客に抱える。

また、賽諾動力は強化学習と流体トポロジー最適化に基づく流路自動設計ソフトウエアを独自に開発した。このソフトは設計者が外形寸法、配管出入口、接続箇所、圧力などの情報を入力するだけで、数十秒から数分で流路モデルを自動生成し、製品の開発時間を短縮できる。

賽諾動力の流路自動設計ソフト

同社が四川省成都市に設立した面積3000平方メートルの実験室と工場は、2024年1~3月に稼動する予定で、サーボ弁の生産能力が1万個以上に上り、製造コストを現在の10分の1まで圧縮する見込みだという。

*2023年12月19日のレート(1ドル=約143円、1元=20円)で計算しています。

(翻訳・大谷晶洋)

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