「自動車ビジネスモデルの変貌、中国EVが先導」現場知る経営者が一致

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世界の自動車産業では近年、中国メーカーを先導役として電気自動車(EV)の普及が進み、ビジネスモデルそのものが変貌しつつある。中国テック・スタートアップ専門メディアの36Kr Japanとモビリティ領域のコンサルティング事業を手がけるAMANE(東京・港)は2月28日、中国EV最大手の比亜迪(BYD)の日本販売の責任者らを招き、「EVシフトがビジネスにもたらす影響とは?」と題したセミナーを共催した。参加者は中国EV産業の最新の取り組みについて情報を共有し、日本の自動車産業にも商機になるとの見方で一致した。

セミナーは東京都内の会場とオンラインのハイブリッド方式で開き、中国系3社の責任者が講師を務めた。まずは能鏈智電(NaaS Technology)の曹増光・能鏈研究院院長が登壇した。同社は中国・浙江省安吉県に本社を置き、充電ステーションの設計・建設や消費者向け充電サービスなどEV充電に関する事業を総合的に展開している。2022年6月には、中国の充電サービス会社として初めて米ナスダック市場に上場している。

能鏈研究院の曹増光院長

曹院長は講演で、中国の車社会では25年にガソリン車の保有台数がピーク(3億2700万台)に達し、その後はEVなど新エネルギー車(NEV)への代替が進むとの見通しを明らかにした。NEVの保有台数は25年時点では5000万台だが、35年に2億台を超えてガソリン車を逆転する。さらに、中国はこの2億台の充電ニーズを満たすため、4000万~5000万基の公共充電器を整備する必要があると予測した。

NaaSの経営に関しては、中国で現在、7万3000カ所の充電ステーション、76万7000基の公共充電器にサービスを提供していると説明した。今後3年で欧州、中東、東南アジアなど海外事業の売上高比率を5割以上に高める方針だが、日本市場への参入計画は現時点では初期段階にあるとした。

続いて、AutoX3の創業者である黎鋭煒・最高経営責任者(CEO)が登壇した。同社は自動車の販売店・修理工場の運営効率の向上に使うデジタル技術を提供している。中国で小型車「Smart(スマート)」を展開する浙江吉利控股集団と独メルセデス・ベンツグループの合弁会社やマレーシアのプロトンなど完成車メーカー6社のほか、2000以上の販売店や4000以上の修理工場を顧客として抱えている。事業の国際化を加速するため、今年1月に本社機能を中国・北京市からシンガポールに移転した。

AutoX3の黎鋭煒CEO

黎CEOはAutoX3が開発し、Smartの新車納入時に使われる「新車のデジタル納車サービス」について紹介した。まず販売担当者は新車が店に到着すると、スマートフォンのカメラ撮影で外観、内装、シャシーなどに異常がないか検査し、納車基準を満たしていることを確認する。購入者が店に到着すると、販売担当者は新車の3Dモデル画像を大型モニターに表示し、車両の状態や運転上の注意などを視覚的に伝えるシステムだ。関連商品の追加購入を勧める「クロスセル」の機能も持ち、システム導入から4カ月が経過した販売店で車用フロアマットの販売が42%も増えた例があったという。

黎CEOは、故障した部位を3D画像で顧客に視覚的に見せる修理工場向けの「デジタル・ツイン技術」も紹介した。人工知能(AI)による画像分析でタイヤやスパークプラグの損傷を識別する機能も持ち、240車種、2万9000種類の部品に対応している。AutoX3はこれまで日本市場で実績がないが、黎CEOは進出する意向を表明した。

最後に、BYD Auto Japanの東福寺厚樹社長が登壇した。BYDは15年に日本でEVバスの販売を始め、23年1月には小型のスポーツタイプ多目的車(SUV)「ATTO3(アットスリー)」で乗用車市場に参入していた。さらに、23年9月に小型ハッチバック「DOLPHIN(ドルフィン)」を発売している。

BYD Auto Japanの東福寺厚樹社長

東福寺社長はBYDのEVについて、バッテリー、半導体、モーター、コントローラーなど主要部品を内製する垂直統合型のビジネスモデルを展開していると説明した。全世界での23年のNEV販売台数が302万4417台と前年比で61.9%増加し、2年連続で世界一となった好調ぶりも紹介した。

中国BYD、23年は世界自動車販売台数トップ10入り 次は「スマート化戦略への移行」

日本市場では、23年の乗用車の類型販売台数が1446台だったことを明らかにした。内訳はATTO3が1198台、DOLPHINが248台だった。24年はショールームを備えた販売店を2月28日時点の21カ所から、年末までに50カ所に増やす方針だという。

日本の輸入EV販売台数、24年1月は1186台 中国BYDが2割占める

締めくくりのパネル討論はAMANEの井上佳三代表取締役がモデレーターを務め、東福寺社長と36Kr Japanの公文信厚取締役が参加した。東福寺社長は「激しい競争を勝ち抜いた中国のEV関連企業が日本に進出してくることを期待したい」と語った。AMANEで日本企業向けに技術の実装支援を行う井上氏は「中国社会のデジタル化の進歩とスタートアップの技術力に改めて驚いた」と語り、公文氏は「中国スタートアップが持つ技術の日本展開や日中企業間のオープンイノベーションの支援に注力したい」と意欲を示した。

(36Kr Japan編集部)

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