「越境EC」「人型ロボット」「空飛ぶクルマ」⋯2024年の中国ビジネスを知る5つのキーワード【年末特集】

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2024年、中国メディアで頻出したトピックを基に、トレンドとビジネスの観点から注目キーワードをそれぞれ5つ選んで紹介していきたい。

本記事では話題にあがったビジネス向けサービスのトレンドを取り上げる。年間を通して中国の景気低迷の話しが多いなかでも前向きな動きを見せた「越境EC」「海外向け製品」「人型ロボット」「低空経済」「AIサービス」に焦点を当てて解説する。

ビジネス編はこちら:

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越境EC

AmazonやAliExpress(アリエクスプレス)をはじめとするECプラットフォームを通して、中国から世界に商品を販売する「越境EC」がとにかく活況だった。2023年からTemuやSHEINなどの格安路線を全面に打ち出す越境ECが中国で数少ない活発な業界で、お手頃なメイドインチャイナの商品が世界中で売られるようになり、「越境EC元年」と呼ばれることもある。これは世界中で商品がこれまでよりも迅速に、かつ比較的時間通りに顧客に届けられ、在庫が十分に倉庫にあり、また決済の仕組みが整ったことが背景にある。海外向けに簡単に出品でき、そして商品が売れるという話は広がり、より多くの企業が海外市場への越境ECを強化した。

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世界中から日用品や消耗品を安く購入したいというニーズと、中国企業のできるだけ多く商品を売りたいというニーズから競争が激化し、2024年のブラックフライデーとサイバーマンデーでは、中国からの越境ECの売上高が増加するものの利益率は低下した。これは既に海外のプラットフォームでも対地場企業ではなく、中国企業同士で消耗していることを意味している。

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主要プラットフォームとしては、前述したもののほか、東南アジアを中心としたLazadaやShopee、中南米で展開するMercado Libreに加え、動画配信プラットホームを活用したTikTok Shopも人気で、ライブコマースでの販売も浸透しつつある。商品認知のためにFacebookやInstagramでの活用も増えている。EC最大手のアリババは負けじと、アリエクスプレス出品者に向けて「海外進出ブランド向けに100億元(約2000億円)の補助金キャンペーン」、「アリエクスプレスでの出品で、傘下のLazada、Miravia、Daraz、Trendyolでも出品可能に」、「傘下の物流企業の菜鳥で5日以内の国際配送する対象国を拡大など様々な全世界販売強化策を打ち出した。

この恩恵を受けて部分的に景気がいいのが広東省深センだ。モノづくりが素早くできる環境で、かつ世界に運べる鉄道港湾空港の拠点となっていることが魅力。中国のAmazon販売事業者の3分の1が深センに集結し、LazadaやMercado Libreほか世界規模の有力ECプラットフォーム各社が中国支社を深センに構え、中国製品を世界に供給している。

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海外向け製品

越境ECの成長に伴い、中国企業は海外市場向け製品開発に注力。家電やスマートフォンといった既存分野だけでなく、、海外市場進出を前提に特定の商品ジャンルに特化した企業が台頭した。例えば、BYD出身の創業者が率いるマイクブランド「Maono」や懐中電灯メーカー「Olight」、家具インテリア「AuGroup」やペット向け用品「FUNNY FUZZY」などがその代表例だ。日本向けにもAI搭載の掃除ロボットやプロジェクターメーカーをはじめ、様々な中国製品が進出した。

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さらには中国のスタートアップ企業による、米国をはじめとした特定の地域に向けた製品も目立った。前者では米国の住宅事情を考慮した庭の芝刈りロボットやプール清掃ロボットといった製品も登場し、クラウドファンディング「Kickstarter」での100万ドル規模の資金調達を実現した企業も少なくはない。バーベキュー人気から開発したを狙ったDJI出身が立ち上げた「ASMOKE」なども話題になった。これらの企業は「高品質かつリーズナブル」を武器に展開を広げており、中国製品への信頼性向上に寄与している。

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中国製商品の流通が世界中で拡大することで、海外ユーザーが中国製品の品質をいいものだと捉えているという報道も見るようになった。その結果、深センの電子街「華強北」や、浙江省義烏の巨大卸売市場にも多くの外国人が買い出しにやってきた。特に華強北では、外国人バイヤーをターゲットにしたAI翻訳機やAI搭載ギター、スマートリング、スマホケース、AI眼鏡といった製品がかなり売れたという。

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海外へ進出するに、これまでは中国で成功したものをそのままコピーしていたが、各国に合わせた製品、人材、チャネル、ブランドのローカライズが成功の法則だとする風潮が強まった。外国人客のニーズに応えるべく、ショップ対外国人向けサービスで対応し(後述)、日本においても東京の繊維街に義烏のサテライトセンターが誕生した。この流れは2025年以降も加速していくだろう。

人型ロボット

2024年、中国では二足歩行型をはじめとする人型ロボット開発が加速。。世界的にはボストン・ダイナミクスの製品が知られているが、負けじと中国企業も様々なロボットをリリースしている。

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その一例となるが、中国を代表するロボット大手の「UBTECH(優必選科技)」は、EVの「NIO」の工場内で同社の人型ロボット「Walker S」を発表し話題に。BYDの工場では、「Walker S1」が、他のロボットと協働してピッキングから搬送、物流までを完全自動稼働を実現した。

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ほかにも「宇樹科技(Unitree Robotics)」「逐際動力(LimX Dynamics)」「星動紀元(Robot Era)」「智元機器人(Agibot)」「優理奇科技(UniX AI)」などのスタートアップが新製品を次々に発表し、家事ロボットや山道を登るロボットなど多様な用途に対応する製品が登場している。

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スタートアップの資金調達でもロボットは勢いがあるジャンルで、世界の人型ロボット業界では2024年1~10月に69件の資金調達が行われ、案件数では中国のスタートアップ企業による資金調達が56件と最多で、調達額は計50億元(約1000億円)を上回った。ロボットが思考をするプロセスに大規模言語モデル(LLM)を活用できるようになったことから、コストは大幅に削減でき、来年はさらに自然な動作を実現するロボットが、今までよりも手が届きそうな価格で登場することだろう。

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空飛ぶクルマやドローン(低空経済)

eVTOL(電動垂直離着陸機)やドローンなど、いわゆる「低空経済」分野も注目を集めた。例えば上海で開催された中国国際輸入博覧会(CIIE)では「時的科技」の5人乗りの「E20 eVTOL」や、「御風未来」の「M1 eVTOL」、「沃蘭特航空」の「VE25-100」が登場。また珠海で開催された中国国際航空宇宙博覧会では「白鯨航線(AirWhiteWhale)」の世界最大の大型無人貨物機「W5000」や小鵬匯天(Xpeng Aeroht)の陸空両用の空飛ぶクルマ「陸地航母(Land Aircraft Carrier)」も話題になった。

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この業界はここ数年、政策と資金面の後押しを受け盛り上がっている。完成機だけでなく、動力系統開発企業や新素材を使った機体構造分野開発企業など産業チェーンが整った。しかも低空経済に関連する上場企業70社のうち、1~9月の純利益が黒字となったのは52社で全体の7割強を占め、儲かるようになった。

日本絡みでは、eVTOLメーカーの「億航智能(EHang)」は、茨城県つくば市に日本初の都市型航空モビリティ(UAM)センターを開設。「峰飛航空科技(Auto Flight)」の「盛世龍(prosperity)」も日本企業に引き渡され、両者の製品は大阪万博でのデモ飛行が計画されている。

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AI活用サービス

2023年に生成AIは中国でもブレイクし、個人向けサービスIは多数登場したが、2024年には企業向けソリューションとしてさらに進化。前述した越境ECでは中国企業が海外へ販売することを目的として、商品の紹介動画をアップすると、自動翻訳・口パク対応の動画生成や、多言語対応の商品紹介ページ作成などが実用化され、効率化を支えた。

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たとえば、2024年のパリ五輪では中国企業がAIを活用したデザイン制作やグッズ生産で大きな進展を見せた。五輪に合わせて世界規模で売れるネイルをつくるべく、デザイン作成には画像生成AI、フィードバックには意見を出すAI、さらにデザインの絞り込みを評価するAIという3種類のAI組わせて活用。これにより短時間で多数のデザインを絞り込んで多種多様なネイルを効率的に量産すること可能となった。

このような生成AIの活用はネイルにとどまらず、シルク製品メーカーの万事利をはじめとするアパレル業界全体にも広がり、デザイン工程の効率化が進んでいる。

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ロボット分野でも「枢途科技(SYNAPATH)」などによるマルチモーダルLLM導入が進み、自ら考えるロボットの敷居を下げた。自動運転を活用した新ビジネスも目立ち、武漢の広い地域でロボタクシーの実用化をはじめ、工場や港湾や鉱山など様々な場所でAIを活用した自動化ソリューションが導入された。

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2025年もさまざまなジャンルでAIの活用や導入は進む見込みだ。特に、もともとコストパフォーマンスに優れた中国製品とAIを活用したデザイン、さらには越境ECとの組み合わせは、中国製品の競争力をさらに押し上げると考えれる。また、西側諸国の製品と比較して圧倒的な低価格を実現しているロボット製品なども、中国がグローバル市場で優位性を発揮する一因となる。これらの分野での技術革新と市場開拓は、2025年以降も中国経済の成長を支える原動力となるだろう。

(文:山谷剛史)

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