ステア・バイ・ワイヤ量産元年 中国・毫秒智控、北⽶EVに参⼊

自動車のステア・バイ・ワイヤ(SBW、ハンドルとタイヤを機械的につながず電気信号で操舵を制御する技術)を手がける中国スタートアップ「毫秒智控(Millisecond Intelligence Control)」はこのほど、追加のエンジェルラウンドで、松禾資本(Green Pine Capital)と蘇高新融晟から数千万元(数億円超)を調達した。前回のエンジェルラウンドで厚雪資本(Houxue Capital)からも出資を受けており、設立からわずか1年で2回目の資金調達に成功した。

2025年4月設立の毫秒智控は、SBWシステムやその中核となる電子制御部品の開発・生産に注力している。創業者兼最高経営責任者(CEO)の李傑氏は、SBWに関する中国の国家規格の策定に携わった人物だ。

SBWは、レベル3(L3)以上の自動運転を実現するうえでの重要な技術基盤とみなされている。ハンドルとタイヤを機械的につなぐ従来の電動パワーステアリング(EPS)と異なり、電気信号で操舵を制御するため、応答速度や制御の精度、車体レイアウトの自由度を高められる。

自動車のステア・バイ・ワイヤを手がける「毫秒智控」

中国では2025年に自動運転L3の認証制度が導入され、26年7月からはステアリングの機械的な接続を必須としない新しい国家標準が施行される。これにより、SBWの普及に向けた市場面・制度面の環境が整った。専門家は、26年がSBWの量産化元年となり、30年までに搭載車が新車の3割を超えると予測する。すでに蔚来汽車(NIO)の「ET9」、理想汽車(Li Auto)の「L9」、小鵬汽車(Xpeng)の「GX」といったフラッグシップモデルにSBWの搭載が決まっており、量産化が目前に迫る。

NIO-ET9(北京モータショー2026)

Xpeng‐GX(北京モータショー2026)

毫秒智控は、SBWシステム全体の開発を狙うのではなく、中核部品の開発に絞った。特に技術的なハードルが最も高い、モーターと電子制御ユニット(ECU)を一体化した「パワーパック」の量産に力を入れ、段階的に他部品の開発も進めて大規模な生産・納入体制の構築をめざす。すでに北米の電気自動車(EV)メーカーのサプライチェーンに参入したほか、今年に入ってから複数の主要自動車メーカーと提携して製品開発を進めている。

李CEOはSBW技術の難しさを、システム全体で冗長性と機能安全をどう設計するかにあると説明する。中国勢と海外大手の差は主に2点で、自動車の機能安全で最も厳しいASIL-Dを満たす設計・実装の力と、アルゴリズム改良に欠かせない自動運転の実走データの蓄積だという。

SBWの生産コストはまだ、従来のパワーステアリングシステムを3割ほど上回る。ただ李CEOは、コスト削減に向けた道筋ははっきりしていると見る。普及率の向上に伴うスケールメリット(量産効果)に加え、冗長化されたメインコントロールチップなど中核部品の国産化、機能統合を通じた部品点数の削減を挙げている。生産コストは2028年頃までに、大規模普及が可能な水準まで下がる見込みだという。

*1元=約23円で計算しています。

(翻訳・大谷晶洋)

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