DeepSeek、API価格を大幅値上げへ ”価格破壊”の主役に何が起きているのか

中国のAIスタートアップ、DeepSeekは8月6日、API(アプリケーション経由でAIモデルを呼び出す仕組み)の利用料金について「近く全面的に値上げする予定。値上げ幅は大きくなる見通し」と開発者向けに告知した。具体的な新価格や実施時期は「正式発表を待ってほしい」としており、現時点では未定。

これまで積極的な値下げで業界の価格競争を主導してきたDeepSeekの方針転換として注目を集めている。

AIモデルのAPI料金は、文章を分解した最小単位である「トークン」の処理量に応じた従量課金制となる。多くの場合、①ユーザーが入力する分(インプット)と、②AIが返す回答分(アウトプット)で単価が分かれ、さらに①は過去のリクエストと共通する入力部分を再利用する「キャッシュヒット」と、新規に演算処理が必要な「キャッシュミス」で価格差が設けられているのが一般的だ。

現行のDeepSeekの料金体系(値上げ前・平時価格)は以下の通り:

  • DeepSeek-V4-Flash(軽量・高速版):入力(キャッシュヒット時)100万トークンあたり0.02元、入力(キャッシュミス時)1元、出力2元
  • DeepSeek-V4-Pro(高性能版):入力(キャッシュヒット時)0.025元、入力(キャッシュミス時)3元、出力6元

なおDeepSeekは6月末、V4正式版の公開に合わせて時間帯別料金を導入すると発表。北京時間の9〜12時と14〜18時をピーク時間帯とし、API料金を通常の2倍に設定している。

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利用急増、計算コストも背景か

値上げの背景として考えられるのが、API利用の急増と、それに伴う推論コストの増大だ。

DeepSeekは、7月31日に「V4-Flash」正式版APIのパブリックベータを開始した。公開後、開発者の利用が急速に広がっている。AIモデルのAPIを集約する「OpenRouter」の週間ランキング(7月27日~8月2日)では、DeepSeek V4-Flashの処理量が7兆2200億トークンに達し、首位に立った。また、オープンソースのAIコーディングツール「OpenCode」によると、同プラットフォーム上では8月1日だけでV4-Flashの処理量が8兆トークンに達したという。あまりのアクセス集中で、8月4日には一時的にV4-Flashの処理が追いつかなくなる事態も発生した。

安すぎる価格設定が想定を超える利用を呼び込み、採算を圧迫する構図は、計算リソースに高性能GPU(画像処理半導体、AI演算に不可欠)を必要とする生成AI業界に共通する課題だ。低価格を維持したまま利用が急増すれば、企業のキャッシュフローを継続的に圧迫することになる。

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同様の動きは他社でもみられる。智譜AI(Zhipu AI)は2026年1~3月期に自社モデルのAPI料金を段階的に引き上げ、累計の値上げ幅は83%に達した。張鵬CEOは3月31日発表の2025年12月期決算説明会で、値上げ後も需要は衰えることなく伸びており、API利用量が前年同期比400%増加したことを明らかにした。テンセントも3月に大規模言語モデルのAPI料金を引き上げ、「HY 2.0 Instruct」では入力価格が約463%上昇した。さらに5月にはAI向け計算リソースなどの料金も5%引き上げている。

相次ぐ値上げは価格競争一辺倒だった中国AI市場に、採算性を意識する動きが出始めたことを示している。一方で、値上げ後もClaudeやGPTなど海外の主要モデルと比べれば価格面でのメリットはなお大きく、中国勢の「低価格」という武器が失われたわけではない。

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今回の発表については、コストを度外視した価格競争から距離を置き、持続可能な経営を志向し始めた表れだと前向きに捉える見方がある一方、AIを活用してコストメリットを享受してきた中小開発者やスタートアップにとっては、直接的な負担増につながるとの懸念も出ている。DeepSeekの新たな料金体系と実施時期はいつ明らかになるのか、今後の動向に業界の注目が集まっている。

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(36Kr Japan編集部)

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