海洋ロボットで240億円調達 中国「Seahi Robotics」、深海作業の自動化狙う

海洋ロボットを開発する中国スタートアップ「世航智能(Seahi Robotics)」がこのほど、シリーズAで約10億元(約240億円)を調達した。海洋ロボット分野で1回の資金調達額として世界最大規模となる。出資には上河動量基金(River Motion Capital)、シンガポールの政府系ファンドVertex Growth、大洋電機(Broad-Ocean Motor)などに加え、既存株主の金沙江創投(GSR Ventures)も参加した。

調達した資金はコア技術の開発やグローバル市場の開拓、産業エコシステムの構築などに充て、海洋ロボットの大規模活用をさらに推し進めていく方針だ。

世航智能の海洋ロボット

標準化が進んだ工場や倉庫などとは異なり、海洋環境は長年ロボットの活用が極めて難しいとされてきた。水中では視界が悪く、海流や高水圧、腐食、通信の不安定さなど複数の課題が存在するためだ。その結果、多くの水中作業は依然として潜水士や大型設備に依存しており、安全性やコスト、作業効率の改善が課題となっている。

⽔深1万メートルの超深海まで対応

世航智能は2023年5月に設立され、海洋ロボットの基盤技術に特化して独自開発を進めてきた。現在は主に、動力、制御、センシング、ナビゲーション、密閉、敷設という6つのシステムを手がけている。

同社のロボットは水深1万メートルの超深海まで対応し、自律航行や複数機による協調運用が可能だ。すでに船体清掃や水中警備、洋上風力発電、海面養殖場、海底点検などの分野で実用化されている。受注額は2026年上半期だけで10億元(約240億円)を突破した。なかでも、水中作業ロボット「虎鯨(Orca)」は、中国の招商輪船(CMES)や中遠散貨(COSCO SHIPPING Bulk)など大手海運企業で採用され、これまでに1000隻を超える大型船舶の保守作業を担った。また、シンガポール海事港湾庁(MPA)が推進する国家水中船体検査・清掃プログラムにも採用され、技術パートナーとして国家プロジェクトに参画している。

商用展開と並行してAI技術の開発も進める。2026年4月には、海洋ロボット向けAIモデル「滄穹(CEORION)」を発表した。周囲の環境認識から作業内容の理解、動作生成までを単一モデルで処理するエンドツーエンド型アーキテクチャを採用し、実際の作業データとシミュレーションデータを組み合わせて学習する。

12種類の⽔中作業に対応

創業者の陳暁博CEOによると、100万時間規模の商用作業データを基に「海洋世界モデル」を構築しており、実運用を通じて継続的に性能を向上させている。海洋ロボットに「CEORION」を搭載すれば、用途ごとにAIモデルを切り替えることなく、点検や清掃、切断、溶接、捜索救助、緊急対応など12種類の水中作業に幅広く対応できる。

シミュレーション試験では、タスク成功率は90%を超え、精密な位置決めを伴う把持作業でも問題なく対応できる。これは訓練を受けた潜水士に匹敵する水準だ。また、未知の海域や水質条件、光の変化のほか、異なるロボットプラットフォームに対する適応率も70%を上回るという。さらに、物理推論モジュールを組み込んだことで、ロボットが動作を実行する前にリスクを予測し、最適な判断を下せるようになった結果、衝突事故の発生率も大幅に低減できるほか、通信が不安定な環境でも自律的に作業計画を立てて実行できる。

シンガポール国家水中船体検査・清掃プログラムにも採用

同社は今後、海洋ロボットの基盤技術やAIモデルの高度化を進めるとともに、海外市場の開拓を加速する方針だ。船舶保守や洋上風力、水産養殖、海底インフラ点検など、高度な水中作業の自動化需要を取り込む考えだ。

*1元=約24円で計算しています。

(翻訳・畠中裕子)

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