ヒューマノイドは「大規模導入の段階ではない」 上場直後、Unitree創業者が語った現実
中国のロボット大手、宇樹科技(Unitree Robotics)の創業者で最高経営責任者(CEO)の王興興氏は、2026世界ロボット大会(WRC 2026)で講演し、人型ロボット(ヒューマノイド)の商用化や現在地についての見解を語った。同社は8月19日に上海証券取引所の科創板(スター・マーケット)に上場したばかりで、王氏の発言にも市場の注目が集まった。
王氏は、現在のヒューマノイドが抱える最大の課題は「動けるかどうか」ではなく、「環境が変わっても作業できるかどうか」だと指摘した。特定の環境で十分に学習させれば、タスクの成功率を100%近くまで高めることは可能だが、対象物や周囲の環境が変わると成功率は大きく低下する。こうした汎化能力の不足が、世界のエンボディドAI産業に共通するボトルネックになっているという。
Unitreeは近年、ロボットを実際の生産現場に投入する取り組みを進めてきた。2024年から自動車工場と連携して生産ラインへの導入を進めるとともに、自社工場でもロボットを配備し、実用化に向けた検証を続けている。ただ王氏は、現時点では大規模な導入に踏み切れる段階には達していないと認める。
ロボットはすでに一部の簡単な組み立て作業をこなせるものの、作業効率では依然として人間を下回る。さらに、新しいタスクや環境に対応させるためには、データを改めて収集してモデルを学習させる必要があり、導入コストの上昇につながっている。このためUnitreeのAI開発チームでは、単にロボットの運動性能を高めることより、家庭や工場で実際に作業する能力の向上にリソースの大部分を振り向けている。
王氏は、AIモデルの汎化能力を高めるカギは依然としてデータにあるとみる。ロボットの学習データを大きく2種類に分け、1つはインターネット上のデータや人間による実演データで、大規模な事前学習に用いる。もう1つは、ロボットの実機を動かして得られるデータだ。データ量でいえば前者がメインになるものの、後者も不可欠だという。AIモデルを最終的に現実の物理世界に適応させるには、実機を通じた学習が欠かせないためだ。
エンボディドAIが大規模展開の壁をいつ突破できるかについて、王氏は自身の予測も語った。「早ければ2~3年、遅ければ5~10年」で、ロボットが未知の環境でも十分な汎化能力を発揮できるようになることを期待しているという。
王氏は、将来ロボットを初めての環境や家庭などに持ち込んで、改めてタスクを学習させることなく、そこで必要とされる作業の約80%をこなせるようになれば、エンボディドAIは真に「確実性のある段階」を迎えるとの見方を示した。それが、ロボット産業が大規模な実用化へと進む転換点になるとみている。
(36Kr Japan編集部)