モーターではなく「空気」で動く 中国・SoulX、ソフトロボットで睡眠支援
ソフトロボットを開発する中国スタートアップ「弘火智能科技(SoulX)」はこのほど、エンジェルラウンドで高瓴創投(GL Ventures)から数千万元(数億円規模)を調達した。資金は主に製品の改良や技術開発、サプライチェーン整備、量産体制の構築などに使われる。同社は初の製品となる睡眠サポートロボット「MoYa」を、2026年下半期に発売する予定だ。
SoulXは、これまで睡眠やストレス管理、ホームヘルスケアの分野でロボット技術を生かすことに力を注いできた。開発チームは、複雑な動きや高度な対話を追うのではなく、触覚神経科学の知見に基づき、「触れる安心感」と「リラックス効果」をソフトロボットに持たせることを目指した。
創業者の鄭潜最高経営責任者(CEO)は、睡眠トラブルの多くは、睡眠時間の不足や環境ではなく、神経が常に緊張していることに起因するとみる。そこでMoYaの開発にあたり、睡眠データの改善ではなく、ユーザーが緊張した状態からリラックス状態へと移行できるようサポートすることを目指した。
これを実現するため、MoYaは独自に開発した空気圧駆動のソフトロボット技術を採用した。従来のモーター駆動型とは異なり、エアーポンプで本体を動かし、空気の出し入れでハグしたりトントンとあやしたりする動作を再現する。動作音はほとんどなく、力加減の制御も簡単にできるため、挟まれてケガをしたりぶつかったりする心配はほとんどないという。また、胸部と背中に搭載した触覚センサーが圧力の変化をリアルタイムで感知し、触れる強さやリズムを調整する。さらにユーザーの呼吸リズムに動きを同調させることもでき、眠りを妨げることなく安心感を与えるとしている。
鄭CEOによると、MoYaは外からの働きかけに反応する「受動的トリガー」を基本とし、ユーザーが抱きしめたり、触れたり、音声で指示したりしたときだけ反応するので、ロボットが寝室にいることで感じるストレスや「不気味の谷」による嫌悪感などを抑えるという。また、プライバシー保護のためにカメラは搭載せず、計算処理はクラウド上で行われる。
一見すると自然なハグ動作だが、それを支える技術は多岐にわたる。ソフトロボットは、ロボット本体の構造、素材の特性、非線形動作の制御、触覚フィードバック、ポンプやバルブ、騒音・振動、耐久性、量産時の品質の安定といった課題を同時に解決する必要がある。SoulXはこれまでに、軟らかい本体や制御技術、消費者向け空気圧駆動部品の調達網の構築など、さまざまな技術を蓄積してきた。
MoYaの初代システムはすでに主要技術の検証を終え、小規模なテスト段階に移っている。同社によると、利用者がMoYaを使う場面は、就寝前、起床後、帰宅後の3つに集中しており、「緊張が和らいだ」「寝付きが良くなった」といった声が多く寄せられたという。

BEYOND EXPO 2026に出展された「MoYa」
しかし、睡眠時に寄り添うことだけがMoYaの目標ではない。
鄭CEOは、睡眠は家庭用ヘルスケアロボットとしての第一歩にすぎないと考えている。将来的に、ソフトロボット技術をAIエージェントと組み合わせ、睡眠時のパートナーから、寝室でのメンタルケア、さらには家庭全体のケアを担う中心的な存在へと育てる計画だ。
そのためにSoulXはロボットの長期記憶システムの構築に取り組んでいる。従来のチャットロボットのように対話の履歴を記録するのではなく、ユーザーの日常の出来事や感情の動き、家族関係を継続的に理解し、絶えず更新される「パーソナルプロファイル」を作る。例えば、ユーザーの不眠傾向を知っているだけでなく、ストレスとなっている具体的な原因まで記憶し、その後のやり取りに自然に生かせるようにするという。
*1元=約24円で計算しています。
(翻訳・36Kr Japan編集部)