いきなりヒト型は作らない 「手のあるロボット犬」から攻める中国Vbotの戦略
人型ロボットを作る前に、まずロボット犬に「手」をつける。 中国で人型ロボット(ヒューマノイド)への投資が過熱するなか、そんな独自の開発戦略を取るのが、ロボットブランド「Vbot」を展開する維他動力(Vita Dynamics)だ。
同社が7月13日にリリースした「大頭EDU版」は、ロボットアームを搭載できる四足歩行ロボット。アームを取りつければ、猫への餌やり、カーテンの開閉、洗濯機の操作などが可能になる。見た目はロボット犬だが、移動するだけでなく、現実世界の物体を「操作する」能力を持たせようとしている。
この一見遠回りにも見えるアプローチは、実は同社が人型ロボットへたどり着くために描いた段階的な戦略だ。

こうした独特の設計の根底にあるのは、ロボットを家庭に普及させるための現実的な発想だ。維他動力の創業者・余軼南氏は、「ロボット犬+ロボットアーム」という組み合わせを、家庭にロボットを導入するための最小構成と位置付ける。自由な移動と物体の操作さえできれば、物の運搬、スイッチ操作、カーテン開閉など基本的な家事の大部分をこなすことができるからだ。二足歩行のバランス制御や双腕の協調などに挑むのに比べ、明らかに実用化は容易だ。
この方式を選んだ理由は、同社の開発チームが自動運転の開発経験を有することと深い関係がある。コアメンバーの多くは、人工知能(AI)チップ開発の地平線機器人(ホライズン・ロボティクス)や電気自動車(EV)メーカー理想汽車(Li Auto)の自動運転チームの出身者であり、ロボットに環境を理解させ安全に移動させるノウハウに長けている。
維他動力はまずペットロボット寄りに位置付けた「大頭BoBo」をリリースした。丸みを帯びたフォルムで、頭部のディスプレイに表情を表示し、追従、障害物回避、荷物運搬、見守りなどの機能を備える。価格は9988元(約23万円)。予約販売期間中に6540台を受注し、2026年5月に第1陣となる500台を出荷した。その後、生産能力の拡大を続けて月産2500台以上体制とし、オフラインの体験店舗へも順次出荷している。こうして同社は、人型ロボット分野に参入する前に、コスト管理からサプライチェーン、量産・納品までの消費者向けロボットの全工程を完成させた。

現在はそこから一歩進んで、ロボット犬の背にロボットアームを搭載するというステップを踏んでいる。大頭BoBoは安定して移動することに重きを置いたが、大頭EDU版は必要な場所まで移動した後、いかに操作をこなすかという課題に取り組んでいる。大頭EDU版には128TOPSのエッジ演算力、ステレオ深度カメラ、16ラインLiDARが搭載され、拡張インターフェースやロボット開発プラットフォームの「ROS 2」プロトコルにも対応、4本の脚で移動して位置を決め、背中のロボットアームを使って掴む、引く、押すといった動作を実行できるようになっている。

これらの取り組みはすべて、維他動力が最終目標とする人型ロボット開発への布石だ。今年3月、自動運転開発企業のチーフサイエンティストだった秦海龍氏を開発部門副総裁に迎え、世界モデルや空間知能、AIエージェント向けOS、人型ロボットの研究開発を統括する体制を整えた。5月にプレシリーズAで調達した約5億元(約120億円)は、ロボット犬の量産と次世代人型ロボットの開発に充てる。
維他動力のロードマップは徐々に明確になってきた。まずロボット犬により移動の問題を解決し、消費者向けモデルを製品化する。そしてロボットアームを1本追加して物を操作できるようにし、サプライチェーンや量産体制、AIモデルの性能などが徐々に成熟した段階で、二足歩行や双腕協調、全身制御などが必要な人型ロボットの開発に挑む。人型ロボットという最難関を一気に攻略するのではなく、細分化して段階的に実現する戦略を作り上げたのだ。

*1元=約23円で計算しています。
(翻訳・36Kr Japan編集部)