人の「経験」をロボットの学習データに 中国Synapath.Ai、相次ぎ資金調達
エンボディドAI向けデータサービスを手がける中国スタートアップ「枢途科技(Synapath.Ai)」がこのほど、追加のエンジェルラウンドで2回にわたり資金を調達した。先のラウンドでは麟閣創投(Kylinhall Partners)や深圳高新投(Shenzhen HTI Group)などから数千万元(数億円)を調達し、続くラウンドでは基石資本(Costone Capital)、南山戦略新興産業投資(Nanshan SEI Investment)、蘇州趨勢資本などから約1億元(約23億円)を調達した。
枢途科技は2024年に設立され、当初はエンボディドAI向けのデータ収集事業に携わり、現在はエンボディドAIのデータサービスを手がけるインフラ企業への転換を進めている。実際の現場で人が培った動作やノウハウを、ロボットが学習できるデータやスキルに変換し、実環境でのロボットの訓練や導入につなげることを目指している。
慕巍CTOは、エンボディドAIの実用化をめぐる課題は、データ不足だけでなく、集めたデータをいかに効果的に活用するかにあると指摘する。現場に導入されている実機は限られているため、幅広いタスクをカバーし、データギャップを埋めるのに十分なデータを集めるのは難しい。一方、人が実際の現場で行う動作には、作業手順や操作のコツ、周囲とのやり取りなど専門的な知識や経験が含まれており、ロボットの学習に活用できる貴重なデータ源となる。
枢途科技は、単にデータ収集の規模を拡大するのではなく、人の行動データをさらに解析するというアプローチをとった。まず物理情報の分析や行動特性評価、動作のマッピングを通じて、実際の作業の映像から空間内の位置関係、体や手の動き、物の状態、周囲との接触、作業手順、行動の結果といった情報を抽出する。それをロボットが学習できる物理特性に変換し、実機データと組み合わせてトレーニングと検証を進めていく。「人の行動→学習可能な物理的経験→ロボットの行動」という流れだ。

現在、同社はさまざまなデータ形式をカバーする製品ラインアップを整えており、AIモデルやロボット本体、タスクに応じた学習用のデータ製品を提供している。これらの製品はすでに複数のエンボディドAI企業やIT企業、ロボットメーカーなどで検証が進んでおり、中国国内の評価額100億元(約2300億円)を超えるエンボディドAI企業のうち、60%以上と取引がある。
顧客のニーズが変化するのに伴い、エンボディドAI向けデータも当初の関節や空間情報といった基礎的なデータから、操作の意図、物体との関わり、行動の因果関係などより高度な情報へと広がりつつある。慕CTOは、データに含まれる有用な情報をロボットが学習できる形に加工する技術、さらにアルゴリズム企業のニーズに合った的確なデータを提供することが、この分野での競争力を左右すると指摘する。
一部のロボットメーカーやAI開発企業が自前でデータチームを組織していることについて、慕CTOはデータサービス企業の存在意義を脅かすものではないと考えている。枢途科技は独立したパートナーとして、複数の顧客を同時に支援できるため、スケールメリットによるサービスの効率化や改善が見込めるという。また、たいていのメーカーは自社ロボットに特化したデータの最適化を進めるが、エンボディドAI業界では汎用的な理解力や行動能力を実現することが急務となっている。だからこそ、汎用的なデータを提供できる枢途科技のような企業が必要なのだ、と同氏は力を込めた。
*1元=約23円で計算しています。
(翻訳・畠中裕子)