20万円で買える中国の人型ロボット、まだ「ハイテク玩具」なのか
2026年、中国では人型ロボット(ヒューマノイド)がECサイトに並ぶようになり、個人でも手が届く価格帯の製品が相次いで登場している。ただ、購入者が自宅に迎えて気づくのは、ダンスや会話、動画撮影はできても、洗濯物を畳んだり、食器を片付けたりするのは難しいという現実だ。
人型ロボット、20万円台の時代へ
数年前まで、人型ロボットは主に展示会や大学の研究室、企業の実証実験に使われていた。個人向けの販売は限られていたが、2025年後半から状況が変わり始めた。調査会社Smart Analytics Globalによると、2026年上半期に世界の人型ロボット出荷台数は、前年同期比で約4倍の約1万9100台に達した。中国メーカーのシェアは97%を超え、智元機器人(AGIBOT)と宇樹科技(Unitree Robotics)の2社だけで世界出荷台数の約4分の3を占めた。
価格も急速に下がっている。松延動力(Noetix Robotics)の「小布米(Bumi)」は9998元(約23万円)と、二足歩行の人型ロボットとして初めて1万元を下回った。宇樹の「R1」は2万9900元(約69万円)から、上緯啓元(PrimeBOT)の「Q1」「T1」はいずれも1万9999元(約46万円)から。AGIBOTの「霊犀X2 青春版」は9万8000元(約225万円)、加速進化(Booster Robotics)の「Booster K1」教育版は6万6900元(約154万円)となっている。
安さの代わりに、何を削ったのか
値下げを支えるのは、高度なサプライチェーンや主要部品の内製化、量産体制の整備だ。同時に、メーカー各社は本体の小型化や構成の簡素化、用途の限定によってもコストを抑えている。
宇樹の目論見書によると、同社の人型ロボットの平均販売単価は、2023年の59万3400元(約1400万円)から2025年には16万6400元(約380万円)へと、2年間で約72%下がった。主要部品の中国国産化率も75%に高まった。
ただ、低価格モデルでは機能も制限される。宇樹のエントリーモデル「R1 AIR」は2万9900元で、3万9900元(約92万円)の標準モデルより関節の自由度が6つ少ない。腰の回転や頭部の自在な動きはできず、高精度の力制御モジュールも省かれ、高度な追加開発には対応していない。
小布米の用途はさらに明確だ。松延動力の公式説明では、手は外観を再現したもので、物を持たせずに使うことが推奨されている。LiDARや深度センサーも搭載せず、障害物のない平らな場所での歩行やダンス、会話が中心となる。創業者の姜哲源氏も、1万元のモデルは教育や交流、科学技術を楽しむ用途を想定しており、そもそも家事を代行する機能は設計に含めていないと説明している。
全体として、10万元(約230万円)以下の消費者向け製品は、片腕で扱える重さが1.5~2.5キログラム、連続稼働時間が2~3時間程度のものが多い。6~8時間稼働する業務用の最上位機種とは、なお大きな差がある。
誰が、何のために買うのか

こうしたロボットの販売は、予想以上に好調だ。優必選科技(UBTECH)の超バイオニック・ヒューマノイド「UWORLD U1」は予約注文が1万3000件を超えたほか、小布米も一時、京東(JDドットコム)の人型ロボット部門で販売首位となった。
もっとも、購入者の大部分はロボットやAIの愛好家、大学の研究チーム、SNSのインフルエンサーなどだ。家事をこなせない機械に数万元を払おうとする一般家庭は、まだ限られる。
実際、購入者からは「まずは遊んでみたい」「子どもへのプレゼント」といった声が聞かれる。ダンスや会話には満足していても、コップの水を手渡すよう指示すると、10回中2~3回しか成功しなかったという報告もある。愛好家のコミュニティーで話題になるのも、動作のプログラミングや歩行パラメーターの調整、AIモデルの導入といった内容が多い。
技術的な壁は、器用な動きを可能にするロボットハンドと、環境が変わっても対応できる汎化能力にある。宇樹創業者の王興興氏は、十分に整えられた固定環境では成功率ほぼ100%で作業できても、環境が少し変わるだけでパフォーマンスは大きく低下し、数センチ、場合によっては数ミリのずれでも失敗につながると説明している。
ダンスなら、あらかじめ設計した動作を繰り返せばいい。一方、家庭ではコップの位置も、衣類の素材や形も異なり、椅子が動かされることもある。家庭こそ、変化への対応が求められる場所なのだ。
「遊んで終わり」を超えられるか
まだ実用性に欠けるなか、メーカーはなぜ販売を急ぐのか。その狙いの一つが、市場での足場づくりだ。低価格で利用者を増やし、実際の使用環境からデータを集めてAIモデルを改良し、さらに利用者を呼び込むという循環を目指す。
現時点では、収益化の道筋がより明確なのはレンタル事業だ。東方財富証券は、2026年の中国のパフォーマンス用ロボットのレンタル市場が100億元(約2300億円)を超えると予測している。
1万元前後の製品は、個人がロボットを所有するハードルを下げた。次の課題は、物珍しさが薄れた後も使い続けたいと思わせ、次世代製品の購入につながる価値を提供できるかどうかだ。
*1元=約23円で計算しています。
(36Kr Japan編集部)