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カルティエなどの高級ブランドを傘下に抱えるラグジュアリー・コングロマリット「リシュモン(Richemont)」は、同グループの時計ブランド「ヴァシュロン・コンスタンタン(Vacheron Constantin)」の新製品発売を1カ月前倒しする決定をした。この時期のセールはクリスマスや正月に属していたものだが、今では「双11・ダブルイレブン(毎年11月11日に開催されるECセール)」に主戦場がシフトしている。
ダブルイレブンにシフトしたのはリシュモンだけではない。ディオール、ファーウェイ、MINIなども新製品の発売をアリババ傘下のECサイト「天猫(Tmall)」で行う。中国の消費市場が回復傾向にあるため、多くのブランドにとって天猫は非常に魅力的に映っている。中国国家統計局が公表した最新データによると第3四半期のGDP成長率は4.9%に達したという。これは経済と消費者市場の回復を示す強力なシグナルであり、新型コロナウイルス感染症の流行で抑制されてきた消費需要がダブルイレブンである程度復活すると見込まれる。
これは海外ブランドにとっても朗報だ。海外ブランドは比較的勢いのある中国市場に真剣に向き合い始めた。ダブルイレブンは消費者にとってもはやただのビッグセールではない。その圧倒的な集客力によりダブルイレブンはブランドの大々的な宣伝舞台へと姿を変えつつある。
「かつてない規模の新製品のオンパレード」
「2020天猫ダブルイレブン・ショッピング・フェスティバル」の記者会見中、アリババ副総裁兼天猫マーケティングプラットフォーム事業部総経理 家洛氏の背後の巨大スクリーンにこのテロップが流れた。社内では、今年のダブルイレブンで5億人が新製品会場を訪れ、30アイテムで売上高1億元(約15億円)超、1000アイテムで売上高1000万元(約1億5000万円)超と見積もっている。
こうした強気のデータが意味するのは、新製品をリリースしたい企業にとって天猫はもはや選択肢の一つではなく、必須手段であるということだ。
天猫小黒盒が基盤強化のカギ
ビッグデータとAIにより新商品のプロモーションを行う「天猫小黒盒(Hey Box)」が、天猫の新製品リリースの主戦場になることに疑問の余地はない。
天猫小黒盒は2017年3月23日にリリースされたマーケティングツールだ。リリース当初は自身のポジションを「オーダーメイドのブランド新製品マーケティング用ソリューション」としていた。
天猫ブランドマーケティングセンターの竣一総経理は「ブランドマーケティングにとって新製品の発売と運営は重要だ。天猫小黒盒はオンラインで最大の新製品発表と販売の場となる」と語る。
市場にチャンスが豊富にある場合、競争を左右するのは勇気と効率だが、市場が飽和状態になってくると、競争の焦点は将来を見据えたビジョンと緻密な運営へと回帰する。
物流や決済などのインフラが整備されるにつれ、eコマース参入の敷居は下がり始め、多くのプラットフォームによるパイの争奪戦へと進展してきた。こうした状況下で小黒盒は堅固な基盤を固めていった。
新製品は一種の希少品であり、あらゆるチャネルで販売されるわけではない。これまで、話題性の高い新商品はまず実店舗で発売され、次にECプラットフォームで販売されて、売れ残った在庫はソーシャルECを通じて地方市場で消費されるのが一般的だった。
したがって「新製品の大ブレイク」を起こすには、プラットフォームがサプライチェーン全体をコントロールし、組織する力が必要になる。中国国内のeコマース市場を見渡す限り、新商品をこれほど集中的にアピールできるのは、恐らく天猫だけであろう。
昨年、天猫は3年以内に新製品を1億アイテム以上リリースするという目標を設定した。今年1月8日、天猫小黒盒主催のイベント「2020年中国新品消費盛典」で、同チームはこの目標をすでに達成したと宣言する。これらの商品の並外れた開発速度は、国外ニーズの高まりと小黒盒の相互作用で実現したものだ。小黒盒は販売方法を多様化し、消費者のアクティブ度とスティッキネス(粘着性)を強化した。それが今度は話題の新製品のリリース場所という地位を不動のものにしたのである。
(翻訳:永野倫子)
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