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中国初のパワードスーツを開発した「遠也科技(Yrobot)」がプレシリーズAで数百万ドル(数億円)を調達した。出資者は「百度風投(Baidu.ventures)」「高瓴資本(Hillhouse Capital)」「線性資本(Linear Venture)」「喬貝資本(Chobe Capital)」「智慧碁石(AIBasis)」。
2018年に設立された遠也科技は、主にパワードスーツの研究開発を手掛け、中高年や脳卒中患者など、運動障害のある人々にサービスを提供している。調達資金は主にパワードスーツの開発と改良、部品の国産化推進、複数の医療機関での臨床試験の実施、第二類医療機器(中国の医療機器登録証を取得した医療機器)認証の申請および市場開拓に充てられるとのこと。
同社は現在、複数の三甲医院(中国における最高等級の病院)と臨床試験を実施する準備を進めている。同社は初の製品を発売後に病院やリハビリテーション機関などの企業向けに提供し、回復期の脳卒中患者に科学的かつ正確でパーソナライズされた歩行評価および訓練ソリューションを提供する予定だ。将来的には、企業向け(to B)と消費者向け(to C)事業を同時展開し、運動障害のある在宅患者を支援し、市場のギャップを埋めていくという。
現在パワードスーツは、産業、軍事、医療、アウトドアなど様々なシーンで応用可能となっているが、遠也科技は、ユーザー数が多く緊急性の高い医療分野を優先的に選択した。
遠也科技の創業者兼CEOの丁也氏によると、中国には脳卒中患者が1300万人、下肢運動障害に苦しむ人々が900万人いるという。中国では生活習慣などを原因とする脳卒中患者が毎年約200万人ずつ増加している。病院はこれらの患者に対し、効果的な能動的トレーニング方法、正確かつリアルタイムでのトレーニングデータのフィードバックやリハビリテーション評価基準、リアルタイムで患者に付き添い訓練するための十分な医療スタッフを欠いている場合が多い。患者が在宅でのトレーニングを希望しても、市販のリハビリトレーニング機器は過度に重い・大きい・高価という難点があり、また松葉杖、歩行器、スライド式装具、さらには数名の医師による介助と共に行う必要があり、広い場所を確保しなければ行うことはできない。また脳卒中患者に加え、筋ジストロフィー患者や体の不自由な中高年の数も増加している。現在、中国には2億3000万人の高齢者がおり、そのうち2100万人が杖や歩行器などの歩行補助具を使用している。
このような問題を解決するため、遠也科技は、より柔軟・手軽・スマートなパワードスーツシステムを開発した。このシステムは、パワードスーツと体を高度に連携させ、人工知能(AI)アルゴリズム、ロボット工学、軟質材料設計、人間生体力学を組み合わせ、機械学習を通じて着用者の行動意図を予測し、ユーザーがより安定的、簡単、正確に四肢を動かすことを可能にするものだ。
現在、市場に出回るリハビリ用ウェアラブルロボットは主に「外骨格型ロボット」が主流だ。だが外骨格型ロボットが提供するのは、デバイスがあらかじめ設定した移動ルートに従い患者がゆっくりと歩けるようにする「受動的」トレーニング方法だ。また、患者は重く柔軟性のない硬質の支持具に固定されるため、バランスと安定性を維持することが難しく、歩行を補助するために松葉杖などの補助器具を追加で必要とする。
一方、同社のパワードスーツは、患者が何をしたいのかを機械が理解した上で、機械のパワーを利用し患者が困難とする動きを行えるようサポートし、フィードバックによる調整により、患者の主体性をトレーニングの中でより発揮させるものだ。これは脳卒中患者が正常な運動コントロールを回復させるための大切なステップである「皮質リモデリング」にとって非常に重要な意味をなしている。これは、損傷を受けた神経経路が筋肉運動と運動コントロールをより良く行えるよう、新しく形成された経路によって補完されることを意味している。
競争における優位性やコアコンピタンスについては、丁也氏によれば以下の通りである。ハードウェア設計においては、このパワードスーツは軽便なバイオニックカーボンファイバーフレームや超高出力密度の駆動装置により、デバイスを大幅に軽量化(わずか2.5kg)すると同時に着用体験を向上させた。ソフトウェア・アルゴリズムについてははマンマシン・インタラクションのコントロールアルゴリズムに長けている。パワーアシストスーツはミリ秒の時間スケールで人間の行動や姿勢を予測し、様々な歩行姿勢の患者に対し、最適なタイミングで安定的かつ極めて正確なパワーアシストを提供する必要がある。
実際の使用効果について、丁也氏は以下の2例を挙げた。ある25歳の患者は、鈍器で殴られ脳に損傷を受けたために体の動きが制限され、介助を受けながら20メートルしか歩けなかったが、同社製品を着用後、1人で軽々と100メートル以上歩けるようになり、歩行姿勢も着用前に比べ安定し、対称的になった。また別の40歳の脳卒中患者は、パワードスーツの着用から1ヶ月で歩行速度が着用前の0.5m/秒から1m/秒に向上し、歩行の対称性も15%以上向上した。
こうした強みは主に創業チームによるこれまでの研究経験にもとづくものである。創業者兼CEOの丁也氏はハーバード大学のエンジニアリングサイエンスの博士号を、また同社のコアチームはハーバード大学、マサチューセッツ工科大学やその他大学の博士号や修士号を取得しており、研究開発エンジニアは業界で数十年の経験を積んでいる。
丁也氏はハーバード大学在学中、人間の歩行・走行の効率を大幅に向上できる世界初のフレキシブルウェアラブルロボット、および個別化支援ソリューション用にカスタマイズされた「マンマシン・クローズドループ・ベイズ最適化アルゴリズム」の研究開発を主導した。このスマートアルゴリズムは、ウェアラブルデバイスの個別化制御ソリューションの迅速な最適化を初めて実現し、デバイスのアシスト効率を大幅に向上させるものだ。関連研究の成果は米科学誌「Science」の姉妹誌「Science Robotics」や「JNER」「TNSRE」「ICRA」「ICORR」「IROS」など多くの学術誌に掲載され、関連研究は1200回以上引用されている。
同社は将来的に、ビッグデータやクラウドコンピューティングなどの技術を活用し、運動障害のある全ての人々に対して正確な歩行姿勢分析および検討評価を行う予定だ。さらにパーソナライズされた科学的な歩行姿勢トレーニングソリューションを提供し、患者の最も切実なニーズであるリハビリテーションの最も手薄な部分を克服し、デバイスの小型化、軽量化、個別化を進め、地域・在宅リハビリテーション市場に参入するとしている。
今回の資金調達ラウンドについて、百度風投の執行役員である張玉豪氏は以下のように分析している。「健康・高齢者介護市場は、人口構造の体系的変化によりもたらされた巨大な『剛需市場(価格変化が起きても需要が変化しない市場)』であり、ニーズの中心はスポーツリハビリテーションである。従来のスポーツリハビリテーション製品は技術障壁が低く、脳卒中患者や中高年の個別化されたリハビリテーションニーズを充分に満たすことができていなかった。遠也科技の画期的開発であるスマートパワードスーツプラットフォームは、ダイナミックなモーションキャプチャおよびパワーアシストを正確に実現し、様々な脳卒中患者や中高年の臨床ニーズを満たすため、個別化されたフルサイクルのリハビリテーション治療ソリューションを提供している」(翻訳:浅田雅美)
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