中国新素材メーカー、PODフィルム量産拡大へ AI向け放熱市場を開拓

中国の新素材スタートアップ「墨鋒新材料」(江蘇省蘇州市)はこのほど、険峰基金(K2VC)と成都科創投資集団(Chengdu Science and Technology Venture Capital Group)から1000万元(約2億4000万円)規模の資金を調達した。資金は主に生産ラインの建設や生産能力の拡大に充てられる。

墨鋒新材料は2023年に設立されて以来、高性能ポリマー「ポリオキサジアゾール(POD)」の産業化に一貫して取り組んでいる。コアメンバーは四川大学高分子材料研究チームの出身で、約20年にわたり技術開発のノウハウを積み重ねてきた。創業者の李文涛氏は以前、中国で唯一POD繊維の量産を実現した宝徳新材料(POD NEW MATERIALS)に勤務し、POD繊維のパイロット生産から量産、市場開拓に至る全プロセスに関わった。

PODは耐熱性に優れたポリマーとして1960〜70年代から注目されてきたが、加工成形の難しさや設備の腐食問題により産業化が長年進んでいなかった。従来のPODフィルム製造では、フィルムを裁断してから焼成する方法しかなく、ロール・ツー・ロールでの連続生産ができなかった。一度に処理できる量が限られるためコストが高く、黒鉛化処理後に粉落ちが起きる点も課題だった。

墨鋒新材料は、製造プロセスを改良し、材料の弾性率と結晶化度を高めることで、フィルム材をロール状のまま焼成しても変形しない技術を確立した。これにより、焼成コストを大幅に低減したほか、緻密性を高めて粉落ちの問題も改善できたという。

同社はPODフィルムの量産技術を確立した。製品の初期弾性率は4.0GPa、引張強度は200MPaを超え、膜厚は400㎛以上、黒鉛化・圧延後の厚さは最大200㎛を実現。顧客企業による検証では、熱拡散率は1000 mm²/sを超え、黒鉛化後の熱伝導率は2000W/(m・K)に達した。

製品の用途については「2本柱」の戦略を採用している。1つは、スマートフォンやノートパソコン向け放熱シート前駆体材料で、極厚・超極厚タイプの製品をメインに展開する。熱拡散性能や総合的な放熱性能は、国内外の競合製品を上回るとしており、複数の大手スマホメーカーが導入に前向きな姿勢を示しているという。

もう1つは、AIチップや光モジュール向け熱伝導材料(TIM)だ。AI学習・推論用チップの消費電力と発熱量が増え続ける中、熱伝導グリスやゲルといった従来のTIMでは対応が難しくなっていると指摘する。PODをベースにした新たな熱伝導フォーム材料は高い熱伝導率と柔軟性を兼ね備え、AIチップの放熱を支える新たな選択肢となることが期待されている。

このほか、軽量・高強度・耐熱性というPODフィルムの特性を生かし、航空宇宙や高速鉄道向けのハニカム構造材への応用も模索中で、川下企業と共同開発を進めている。ただし商用化にはなお時間を要するとみられる。

現在の年産能力は約100トンだが、1件当たりの受注規模がすでに数十トン単位に達しているため、年産300〜500トン規模の新たな生産ラインの建設を計画している。

AIデータセンターや高性能半導体の普及に伴い、放熱材料への需要は世界的に拡大している。中国では電池材料や炭素材料に加え、機能性ポリマー分野への投資も活発化しており、高性能熱伝導材料が新たな競争領域になりつつある。

*1元=約24円で計算しています。

(翻訳・畠中裕子)

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