民泊向け宿泊管理システム「Smart Order」 多様化するチャネルに対応し、SNSアプリからも予約可能

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民泊向けの宿泊管理システム(PMS)「訂単来了(Smart Order、中国語で『注文が入った』の意味)」の運営元が昨年にシリーズAとA+で総額7000万元(約11億2500万円)を調達していたことが分かった。それぞれの出資者は「杭州安益盛銀(Hangzhou Anyi Shengyin)」と「有賛(Youzan)」。調達した資金は事業開拓に充てられ、民泊事業者向けにより高度なサービスを提供すると共に、ブティックホテルなどへの業務拡大を進めるとのこと。

訂単来了は創業者の沈愛翔氏が浙江大学4年生の時に立ち上げた民泊事業者向けシステムで、業務管理、会員管理、データ統計管理、グループ管理を行い、業務効率の改善と運営コスト削減をサポートする。現時点で同サービスを導入している民泊は3万カ所にのぼり、システムの年間取引額は2020年に80億元(約1300億円)を超えた。

業界への参入が決して早かったわけではないものの、これまで順調に事業を拡大できた理由として、沈愛翔氏は差別化戦略を挙げる。

まず初期には大手ブランドとの契約を取り付けることに全精力を傾け、初めから料金体系をはっきりと打ち出したこと。大手ブランドと提携したモデルケースを提示できれば、「業績の良い民泊はどこも訂単来了を利用している」というイメージを業界内に浸透させることができる。

次にトラフィックの分散傾向を正確にキャッチしたこと。近年、民泊業界のチャネルに変化が生じており、これまで主流だった「携程(Trip.com)」や「飛猪(Fliggy)」などのオンライン旅行会社だけでなく、SNSアプリ「WeChat(微信)」、ショート動画アプリ「抖音(Douyin、TikTokの本国版)」、ソーシャルEC「小紅書(RED)」を経由するケースが増え、チャネルが多岐にわたるようになった。オンライン旅行会社は「どこで」予約すればいいかを解決してくれるが、ソーシャルプラットフォームは「どこを」予約すればいいかを教えてくれるのだ。

訂単来了はチャネルの多様化にすぐさま対応した。2019~ 2020年に抖音・小紅書と提携し、アプリ内から直接予約を行えるようにした。ショート動画アプリ「快手(Kuaishou、海外版は『Kwai』)」とも協議を進めている。

過去1年に、訂単来了はマーケティングに特化したツールをいくつもリリースしてきた。ツールをうまく使いこなせない事業者に対しては、運営代行サービスも提供する。またサプライチェーンにも切り込み、事業者のニーズをまとめたうえで川上サプライヤーから一括調達を行っている。現在はアメニティー用品が中心だが、将来的にはコーヒーや書籍などにも拡大する考えだ。

2021年は業界浸透率の向上を第一に掲げ、上半期にはより多くの事業者をカバーできるよう複数バージョンのリリースを、下半期にはブティックホテル向け業務の開始を計画している。

沈氏は現状を次のように分析する。ホテルに対するユーザーのニーズが、安全面重視からソーシャル性重視へと変化しており、それに呼応するように個性的なホテルが数を増している。トラフィックは分散が進み、SNSプラットフォームがシェアを拡大してチャネルが多様化している。システムはローカル管理からクラウド管理へと移行する必要があり、新しいホテル事業者もIT化サービスを求めている。これらの変化は全て、訂単来了にとってのビジネスチャンスだ。

現時点で訂単来了は全国300都市以上に進出しており、有料契約を結んでいる事業者は4000社を超えるという。主な収益源は1店舗当たり年間3800元(約6万円)のサービス利用料で、このほか運営代行サービスの利用料やマーケティング手数料がある。2019年には黒字転換を果たした。(翻訳・畠中裕子)


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