自分の意志で制御し触覚も得られる神経義肢、MITと上海交通大学が開発

36Kr Japan | 最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア

日本最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア。日本経済新聞社とパートナーシップ提携。デジタル化で先行する中国の「今」から日本の未来を読み取ろう。

スタートアップ注目記事

自分の意志で制御し触覚も得られる神経義肢、MITと上海交通大学が開発

36Kr Japanで提供している記事以外に、スタートアップ企業や中国ビジネスのトレンドに関するニュース、レポート記事、企業データベースなど、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」を会員限定にお届けします。無料会員向けに公開している内容もあるので、ぜひご登録ください。

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

続きを読む

テックメディア「智東西(Zhidongxi)」によると、マサチューセッツ工科大学(MIT)と上海交通大学のエンジニアが共同で、柔らかく軽量で低コストの神経筋骨格義肢「EcoFlex」を開発した。

この研究は8月16日に、国際的な総合科学ジャーナル「Nature(ネイチャー)」誌のサブジャーナル「Nature Biomedical Engineering」に発表された。論文のタイトルは『筋電制御と触覚フィードバックの同期を提供する柔軟な神経筋骨格義肢』(A soft neuroprosthetic hand providing simultaneous myoelectric control and tactile feedback)

論文リンク:
https://www.nature.com/articles/s41551-021-00767-0

軽くて廉価な義肢 価格は約5万5000円

現在、世界では500万人以上の人が手足の切断手術を受けており、義肢に対する需要は大きい。装飾用の義肢以外に神経義肢も増えている。

神経義肢とは四肢切断者の筋肉信号を感知し、行いたい動作を実現するものだ。これまでこのようなテクノロジーを駆使した義肢は価格が高く、金属で作られモーターを搭載するため重くて硬かった。

それに対してEcoFlexは柔軟で弾力性のある材料で作られており、空気圧によってコントロールする。重さはわずか292gで価格は500ドル(約5万5000円)程度だ。

EcoFlexは触覚フィードバックシステムを搭載し、人間の手と同じように触覚を持たせることができる。四肢切断者はEcoFlexを着用することで、ファスナーを閉める、ジュースを注ぐといった日常の動作を行うことができる。

マサチューセッツ工科大学の機械工学、土木および環境工学の教授を務めるXuanhe Zhao氏は「EcoFlexはまだ完全な製品ではないが、その性能は現在市場に存在する神経義肢よりはるかに優れている。さらに製作コストが低いため、低収入の四肢切断者にも利用してもらえる見込みがある」と述べている。

空気圧による制御と触覚フィードバック

EcoFlexはモーターによって指をコントロールする従来の神経義肢と異なり、空気圧システムによって指先に空気を送り、特定の位置で曲げたり伸ばしたりすることができる。

マサチューセッツ工科大学の博士研究員であるShaoting Lin氏は、指の曲げる度合いをエアポンプが加える力と関連付けるコンピューターモデルを開発した。このモデルを使って、チームはコントローラを開発し、空気圧システムで指先に空気を送り、手を握りしめる、握手するといった日常的な動作を実現した。

手を握りしめる動作のテスト

人が何かの動作を行う場合、運動ニューロンは筋肉を制御するために電気信号を生成する。研究チームは既存のアルゴリズムによって電気信号を解読し、手を握りしめるなどの日常的動作と関連付けた。空気圧システムは、四肢切断者の身体に装着した筋電センサーを通じてこのような信号を受け取り、神経義肢を制御する。

例えば神経義肢の装着者がコップを持っていることを想像すると、センサーはその筋電信号を受信し、コントローラはそれを適切な圧力値に変換する。圧力値に応じてエアポンプがそれぞれの指の関節を膨らませたり曲げたりして、装着者が行いたい動作を実現する。

触覚フィードバックはほかの神経義肢にはあまりない機能だ。
EcoFlexの各指先には圧力センサーが取り付けられており、センサーが何かに触れたり押されたりすると、その圧力に比例した電気信号を発生させる。各センサーは装着者の身体と繋がっており、例えば神経義肢の親指が押されたら、装着者の身体の親指と関連する部分が刺激を受けるようになっている。

15分のトレーニングで使用可能

EcoFlexのテストを行うために研究チームは上肢を切断しているボランティアを募集し、彼らに15分間のトレーニングを受けてもらい、その後一連の標準動作をこなしてもらうテストを行った。テストの標準動作には将棋の駒を置く、字を書く、重いボールを持つ、地面にあるものを拾うなどの動作が含まれた。

研究チームは同時に硬い材料で製作した従来型の義肢を用いて、同様のテストを行った。その結果大部分の動作においてEcoFlexは従来からの義肢と同じ効果を得られ、さらにいくつかの動作においては従来型の義肢より良い結果が得られた。

EcoFlexで猫を撫でるボランティア

もう1つのテストでは神経義肢の装着者に目隠しをして、義肢の指を突いているか、撫でているかを判別できることを発見した。また義肢の中にある瓶の大きさの違いを感じることができることも発見した。

これらのテストは神経義肢の装着者がEcoFlexによって物の形に対する触覚が得られ、さらに物体をコントロールできることを示している。

研究チームはマサチューセッツ工科大学を通じて特許を申請し、センシングと運動範囲の改善に努めている。

一般家庭での普及を目指す

筋肉信号によってコントロールする義肢は珍しいものではなくなったが、これまでの神経義肢は重く高価で、一般家庭で気軽に使用できるものではない。

EcoFlexはその柔らかさと軽さ、さらにコストの低さによって、収入の少ない家庭においても神経義肢が普及することを目指している。

ソース:MIT News

作者:WeChat公式アカウント「智東西 (ID: zhidxcom)」、健恩

(翻訳・普洱)

36Kr Japanで提供している記事以外に、スタートアップ企業や中国ビジネスのトレンドに関するニュース、レポート記事、企業データベースなど、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」を会員限定にお届けします。無料会員向けに公開している内容もあるので、ぜひご登録ください。

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

関連記事はこちら

関連キーワード

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録