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産業用AIや時系列データを手がけるテック企業「大制科技(Manulism)」は、「涌鏵投資管理(Yonghua Capital Management)」が出資を主導するシリーズAで数千万元(数億円)を調達した。
大制科技は2015年、上海で設立された。機械学習、時系列データベース、産業用インターネット、エッジコンピューティングなどの技術を組み合わせ、設備の予知保全、品質管理を行う次世代技術プラットフォームを自主開発。自動車、コア部品、ハイエンド製造設備など製造業のトップ企業に提供している。
製造業では、製造設備が予定外に停止すると巨大な損失につながる。産業用インターネットが進化するにつれ、効果的に機器のメンテナンスを行って機器のダウンを防ぐとともに、メンテナンス費用を削減する方法が多くの製造企業の関心事となっている。IoTを専門にインサイトを調査するIoT Analyticsの推計では、2018年の世界の予知保全市場は33億ドル(約3600億円)規模で、2024年までの年平均成長率は39%を超え、235億ドル(約2兆5800億円)規模に達する見込み。
予知保全市場には工業分野に特化したベンチャー企業が存在する。米ユニコーン企業「Uptake」は多業種にサービスを提供し、中国の「締声科技」は音響信号を用いた故障診断や予知保全を多業種に提供する。その他、米IBM、独SAP、独シーメンス、米マイクロソフトのクラウドコンピューティングサービスAzureなども、IoTや予知保全のソリューションを手がける有力プレーヤーだ。
大制科技は製造の過程で収集した高密度データを機械学習技術などで処理し、フィードバックされた結果を製造ラインへすぐに転送する。顧客に提供しているのは品質検査や工程改善、故障早期警報などのサービスだ。スポット溶接、ビス止め、吹き付け塗装、輸送など複数のシナリオ向けにソリューションを開発した。
郭雲CEOによると、同社には三つの強みがある。
一つ目はデータ粒度が細かいことだ。同社製品は0.02〜0.05秒間隔で一次データを収集し、その密度によって収集したデータの分析や予測の確実性を保証している。
二つ目は、取得の難しい製造データを収集できることだ。製造過程で用いられる設備はほとんどが専用装置だが、大制科技はこれらに比較的精通しており、さまざまな製造設備の構造を理解している。製造過程に関するデータを収集するには企業の許可を得て製造現場に入らないとならないため、こうした意味でもデータ収集は簡単ではない。
三つ目は、製造技術やデータの理解力だ。データは多次元であり、トラブルの原因も多岐にわたる。これらのデータを一カ所にまとめて分析するには、製造技術を深く理解していないとならない。
データ収集の際、大制科技は顧客に高性能データ収集ボード(DAQ)と同社独自の製品、プラットフォームと互換性のあるエッジコンピューティング機器を提供する。顧客に提供される大制科技の製品とは、アプリとそのバックエンドにある工業用プラットフォームだ。異なるシナリオに向け複数のアプリが提供されるため、顧客は必要に応じてアプリを選択してエッジプラットフォームに配置、クラウド上でこれらを一元管理する。
大制科技の製品はクラウドプラットフォーム上で工程管理、設備管理、製造スケジュール、在庫管理などのサードパーティーシステムにも接続でき、互換性や拡張性が高く、総合的な管理を支援できる。ハードウェアからOS、アプリまでを網羅したトータルソリューションを顧客に提供するのが大制科技の事業モデルだ。
同社提供のデータによると、ある自動車メーカーは大制科技の製品を導入後、製造作業における価値創造時間の比率が倍増し、60%となった。総合的な運用コストも現在より15%、年間4〜6億元(約70〜100億円)を削減できると見込まれる。
大制科技は「上汽大衆汽車(SAIC Volkswagen Automotive)」「長城汽車(Great Wall Motor )」など中国トップクラスの自動車メーカー、「華域汽車車身科技(Huayu Automotive Body Components Technology)」などのコア部品メーカーを顧客に持つ。
(翻訳・愛玉)
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