中国の不動産テック、物件情報をワンクリックで公開 契約書も自動作成

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商業不動産管理のデジタル化サービスを手がける「匠人科技(ARTISAN TECHNOLOGY)」がシリーズB2で1億元(約17億円)近くを調達したことがわかった。「摯信資本(TrustBridge Partners)」が出資を主導した。

匠人科技は2015年に設立され、不動産テックに注力してきた。1年半前にもセコイア・キャピタル・チャイナが主導したシリーズB1で5000万元(約8億5000万円)を調達している。

同社の主要製品は物件管理SaaS「CREAMS」で、物件や空き室の管理、テナント募集、テナントや管理会社の管理、入出金管理、統計・分析、資産査定、権限管理などの機能を持つ。

CREAMSでは不動産所有者が物件の断面図を調べることも可能で、物件情報をワンクリックで公開したり、契約書の自動作成などもできる。あらゆる角度を切り口にした報告書の出力が可能で、賃料の支払いや契約書の期限到来をリマインドするほか、ビッグデータで賃料を予測したり、企業の状況やキャッシュフローなどを分析したりする機能を持ち、不動産所有者の管理・運営能力を向上させられる。

匠人科技はCREAMSを土台とした多くの製品をリリースしている。

匠人科技製品ラインナップ

例えばテナント誘致する側を対象としたのが「LikeCRM」というツールだ。テナント誘致者が顧客データの収集やプロファイリング、顧客の行動分析を行うサポートをし、管理チームの業績管理や物件内覧記録の管理、リアルタイムでの入居情報の可視化などができる。

「来客推広」は短期間で入居率を上げるソリューションだ。SNSアプリWeChatのモーメンツ(写真や文章をシェアする機能)、公式アカウント、ミニプログラム(ミニアプリ)、グループチャットに加えこれまで蓄積した顧客情報、仲介業者、広告プラットフォームなど全チャネルを統合して物件のプロモーションを行う。プロジェクト情報、写真、空き室リスト、入居状況、インセンティブなどの情報を含むポスターもワンクリックで作成できる。

CREAMSは現時点では数少ない商業不動産の管理業務向けSaaSだ。中国国内22都市の1万6000棟を超えるビルで採用されており、管理面積は2億平方メートルを超える。

海外に目を向けてみると、ナスダックに上場している「コースターグループ(CoStar Group)」が現時点では米国最大の商業不動産向けデータサービス企業だ。同社は30年余りの時間をかけて全米最大の商業不動産データベースを構築。88億平方メートルもの商業不動産をモニタリングしており、建設から賃貸、販売、解体までを部屋ごとに記録している。

中国国内では現時点でこのようなワンストップ型プラットフォームは存在せず、匠人科技はコースターグループをベンチマークとしている。中国国内で類似のサービスを提供する企業には「中指控股(China Index Holdings)」や「明源雲(MINGYUAN SOFTWARE)」傘下の「明源雲空間」などがある。

同社創業者の項銘氏は「目先の利益よりも重要なのは商業不動産業界のためにダイナミックデータベースを構築し、明確な業界基準を形成することだ」と話す。商業不動産は絶えず増加しており、ニーズは安定している。対して供給サイドの競争は日増しに激しくなっており、精密管理が利益を左右する重要な要素になってくるだろう。匠人科技の製品はそこに照準を合わせている。

匠人科技は資金調達後も製品の規格化を継続し、商業不動産業界のエコシステム全体をデジタル化するためのインフラ構築に注力していく。
(翻訳・山口幸子)

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