「メタバース元年」の中国、9月から商標申請3000件。Facebook砲には「リブラの二の舞」警戒も

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米フェイスブックが28日(現地時間)、社名を「Meta(メタ)」に変更したと発表した。マーク・ザッカーバーグCEOはメタバースと呼ばれる仮想空間の構築に注力することを7月に表明していたが、SNS企業という自社の立ち位置を一新するため、社名変更に踏み切った。

中国でも2021年が「メタバース元年」になるという思惑からこの半年で参入企業が増えており、フェイスブック砲によって関連銘柄の株価が急騰している。

AR/VR、オンラインゲーム企業の株価がストップ高

フェイスブックが社名変更を発表した翌29日、「メタバース銘柄」とみなされている企業の株価は10%近く上昇した。特に注目されているのは、AR/VR技術に強みを持つデジタル音声デバイスメーカーの「共達電声」、AR/VR、ロボット、センサーなどを手掛ける子会社「海南元宇宙(メタバース)」を設立した「宝通科技」、オンラインゲームで開発したアルコール飲料をリアルの醸造所で受け取れるという、バーチャルとリアルを融合したゲームのリリースを発表した中青宝といった面々だ。

メタバース銘柄の株価はフェイスブックが「メタバース」に言及するたびに上昇し、8月末から9月にかけて急騰した。10月に入ってやや落ち着いていたものの、同社が17日(現地時間)にメタバース構築に向け今後5年で1万人を採用すると表明すると再び高騰。22日には中青宝、共達電声2社の株価がストップ高となった。

テンセントは2019年から布石

中青宝が発表したメタバースの概念を取り入れたゲームは、オンラインで醸造した白酒を、リアルで受け取ることができる。ただしゲームのリリース日は決まっていない。

フェイスブック砲で注目度が一気に高まったメタバースだが、中国では世界最大のゲーム会社であると同時に、10億人以上のユーザーを抱えるメッセージアプリ「WeChat(微信)」の運営企業でもあるテンセント(騰訊)が早くから布石を打ってきた。メタバースはブロックチェーンやIoT、5G、ビッグデータなど次世代技術の進展によって実現が近づいたコンセプトであることに加え、中国政府が今年3月、2035年に向けAR/VR産業を強化するビジョンを発表したことも受け、2021年が「メタバース元年」になると早くから言われていた。

テンセントは2019年に、米ゲームプラットフォーム「Roblox(ロブロックス)」との提携を発表し、2020年の資金調達でも出資。中国での事業に向けて合弁会社を設立した。

自らゲームを作って皆で遊べるのが特徴で、メタバースの実現にもっとも近い企業の一社と言われているロブロックスはコロナ禍の巣ごもり消費拡大でユーザーを大きく増やし、今年3月にニューヨーク証券取引所に上場した。同7月にはロブロックスの中国版がリリースされた。

また、テンセントグループで人気ゲーム『フォートナイト』の開発元であるEpic Gamesは今年4月、メタバースの構築に向けソニーなどから10億ドル(約1100億円)を調達したと発表しており、「テンセントが有望分野とみなすメタバース」という文脈で、参入が活発化していたのだ。

企業データベース「企査査」によると、2021年9月以降これまでに「元宇宙(メタバース」」関連の商標が約3000件申請された。

当局、企業ともに「リブラ」の二の舞警戒

もっとも、関連銘柄の株価が上昇を続け、バブル化することには当局も警戒している。新興企業向け証券取引所「創業板」管理部は10月25日、中青宝など数社に対し「株価の異常な上昇」を理由に、事業について説明を求める文書を送った。中青宝は「不正はない」と強調しつつ、「メタバースに関連してAR/VRが伸びるという思惑から、同技術に強みを持つ当社の株価が異常な上昇をしているが、当社の取り組みは初歩的な探索の段階で、ゲームのリリースも不確実な要素が多い」などと回答を発表した。フェイスブックが2019年に発表したデジタル通貨構想「リブラ」は各国の当局から反発を浴びて頓挫したこともあり、企業側はメタバースへの関心の高まりを歓迎しながらも、目立ちすぎるのは避けたいようだ。

(文・浦上早苗)

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