血圧測定スマートウォッチに医療用クラスが登場 難所は「超小型化」

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医療用として使用可能なスマートウェアラブル端末が広く注目を浴びている。中国では複数のベンチャー企業が血圧測定機能付きのスマートウォッチに照準を当てており、そのうちの一社に「研和智能科技(YHE Technology)」がある。同社の製品はカフ(腕帯)で加圧して正確な血圧を測るものだ。従来の水銀血圧計や上腕式電子血圧計なら難しいものではないが、カフを腕時計に合わせたサイズに縮小し、なおかつ正確に脈動の圧力を伝達するとなると、技術力が試される。

「研和智能科技が開発した血圧測定スマートウォッチ『BP Doctor MED(医療用グレード)』はバンドの上下二カ所に加圧用のエアーバッグをを取り付けたダブルエアバッグ設計で、現在は型式試験に進んでおり、今年第2四半期には中国国家薬品監督管理局(NMPA)から第II類医療機器(安全性・有効性を保障するための管理が求められる医療機器)として承認が下りる予定だ。さらに同時進行で欧州CEマーク(安全性能基準)、米FDA(食品医薬品局)への認証申請も進めている」。同社の創業者・盛奕冰CEOはこう説明した。同社は2019年から血圧測定機能を備えたスマートウォッチの開発を始めた。カフに空気を入れて血管を圧迫し、血管壁の振動を感知して最高血圧と最低血圧を推算する「オシロメトリック法」を採用している。

中国には高血圧を患う人が2億7000万人おり、盛CEOらは新製品を開発して彼らの慢性疾患管理を手助けしたいと考えてきた。医療用のウェアラブル機器は医療用としての精度を備えるだけでなく、軽量薄型で外観にも優れていなければ、ユーザーは長期的に使ってくれないだろうと盛CEOは考えた。

そのためカフのエアーバッグを小さく、軽くすると同時に、空気圧の出力を安定させることが課題の一つとなった。素材ごとに異なる歪み状態は信号伝達に影響を与える。素材の線形歪みが安定しないと元の信号が歪む可能性もあり、計測結果の正確性に影響してしまう。また、血圧測定スマートウォッチは比較的ライフサイクルが長く、何度も加圧と減圧を繰り返すため、耐用性も高くなければならない。

「エアーバッグに適した素材を見つけるため、我々は100以上のサプライヤーを訪ね、100種類以上の素材を試した。最終的に技術者とサプライヤーが共同で加工技術を改良し、ようやく薄さ3ミリのエアーバッグが完成した。BP Doctor MEDで血圧を測った場合の誤差はプラスマイナス5mmHg以内だ」と盛CEOは述べた。

BP Doctor MED分解図(画像提供:研和智能科技)

エアーバッグ以外にも多くの超小型パーツの独自設計やオーダーメイドが必要だった。超小型エアーバルブもその一例だ。エアーバルブそのものは完成形の部品だが、これを大豆ほどの大きさに縮小し、耐圧性や耐熱性を持たせ、数万回の使用に耐える耐久性を持たせるとなると、市場に既製品はない。さまざまな種類のメーカーを訪問し、求めるものに合った部品を見つけ出して超小型エアーバルブを作り上げたという。

技術上の難題をいくつも乗り越え、研和智能科技は現在8つの特許権、9つの実用新案権、3つの意匠権、1つのPCT(特許協力条約)特許を取得している。

2020年初めに行われたクラウドファンディング

同社のマーケティング責任者によると、同社は2020年初めに海外のクラウドファンディングサイト「Indiegogo」で資金集めを行い、最終的に58万ドル(約6600万円)を調達した。同年6月にBP Doctor MEDの下位モデル「BP Doctor Pro」が米国で発売されている。

生産能力については、初代BP Doctor Proが量産化を実現したほか、医療用グレードのBP Doctor MEDが少数を試験的に製造中で、今年にも量産に入る予定だ。中国でも昨年10月に発売したBP Doctor Proは定価1998元(約3万6000円)で、ネット通販と体験型店舗の両方で販売されている。大手ECサイト「天猫(Tmall)」、「京東(JD.com)」での販売と代理店販売を主としている。

中国高血圧予防・治療指南修訂委員会などによる2018年の「中国高血圧予防・治療指南」によると、中国では高血圧の認識率は51.5%、治療率は46.1%、管理率は16.9%で、慢性疾患管理のプロセスや効果性には大きな改善の余地がある。

最近では通信機器大手ファーウェイも血圧や心電図の測定が可能なスマートウォッチ「HUAWEI WATCH D」を発表した。同製品は第II類医療機器として登録されている。ウェアラブル端末を装着することでいつでも血圧を計測・記録できるようになるうえ、継続的に記録したデータは医者にとっても優れた参考資料で、高血圧の治療や管理に役立つ。
(翻訳・山下にか)

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