スマホで車の解錠、キック動作でドア開閉。UWB技術の「清研智行」、自動車に大規模搭載へ

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自動車向けUWB(超広帯域無線)技術のソリューションを手がける「清研智行(TsingCar)」がこのほど、啓迪之星(TusStar)の主導するシリーズAで数千万元(数億~十数億円)を調達した。

清研智行は2020年末に設立された。前身はUWB業界の著名企業「清研訊科(Tsingoal)」の自動車事業部で、創業チームは清華大学精密測定技術・計器国家重点実験室がルーツ。カーエレクトロニクス部品の一次サプライヤーとして、UWBデジタルキー、UWB車載レーダー、UWB駐車ナビゲーションの三大事業に注力している。

2019年にリリースされたiPhone11をきっかけに消費者向けのUWB技術が注目を集めるようになり、サムスンやグーグル、シャオミ(小米)、OPPOなど多くのデバイスメーカーが続々とUWBに対応したスマートフォンや関連アクセサリーを投入し始めた。清研智行創業者の趙瑞祥氏は、UWBデジタルキーがスマホと自動車それぞれのエコシステムをつなぐ重要な架け橋であり、スマホを利用したデジタルキーが物理キーに取って代わるのは必然的な流れだと考える。

清研智行は自動車向けと駐車場向けの2方面でビジネスを構築している。自動車の標準装備向けにはUWBデジタルキーとUWBレーダーを開発し、これらが現在の主力製品となっている。駐車場向け事業は将来的な計画であり、UWBデジタルキーやUWBレーダー、自動運転レベル4がある程度浸透した後に、車両に搭載されたアンカー(測位・通信を行う固定装置)を利用して屋内での高精度測位やナビゲーションを実現する予定だ。

同社は8年に及ぶアルゴリズム研究をベースに、環境適応性のある正確な測位アルゴリズムを完成させ、広い場所では誤差わずか10センチ、車両が密集した場所でも20センチという高い精度を実現した。

清研智行のUWBデジタルキー搭載車両の展示

清研智行のUWBデジタルキーはUWBレーダーとしても活用できる。通常、UWBデジタルキーを使用する場合には無線通信を行うアンカーを車両に設置する。OTA(Over The Air)方式でこれらのアンカーを遠隔アップデートすれば、車内置き去りを検知する生体センサーや、手を使わずドアやトランクを開けられるキックセンサーといった、ミリ波レーダーを搭載した場合と同じ機能を持たせることができる。

ミリ波レーダーを搭載するのにかかる費用は約300元(約6000円)、キックセンサーは100元(約2000円)だが、既存のUWBアンカーを活用すればコストはほぼゼロに等しい。UWBデジタルキーを導入する費用だけでこれら3つの機能を利用できるなら、Bluetooth式のデジタルキーより多少高価だとしても明らかに割安で、UWBデジタルキーの普及に弾みがつくと考えられる。

UWBデジタルキーをレーダーとしても使えるように開発するには、デジタルキーの測定性能やアルゴリズムを開発するスキルと、無線レーダーのセンシングアルゴリズム開発スキルの両方が必要となる。さらに重要なのは、基盤となるUWB技術を深く理解し、デジタルキーの距離測定やレーダーの多重化を基礎から作り上げられるスキルだ。ボッシュやコンチネンタルなど主要な一次サプライヤーがUWBデジタルキーのレーダー利用で苦戦しているのも、この技術的課題によるところが大きい。

UWB技術が複雑な環境下で高い精度を保てるかどうかは、アルゴリズムに大きく依存すると趙氏は考える。アルゴリズム研究で8年の経験を持つ清研智行は、UWB技術の研究を始めて1年余りの一次サプライヤーに比べ性能面で2~3年リードしているといい、「研究開発への投資を続けることで、製品の優位性を保つことができる」とも語る。

清研智行

同社はすでに多くの概念実証(PoC)や量産化プロジェクトを完了しており、国内外の主要完成車メーカー40~50社とプロジェクトの立ち上げが進んでいる。2024年には自動車への大規模搭載が始まる見込みだという。

(翻訳・畠中裕子)

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