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定型業務を自動化する「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」市場が中国で盛り上がっている。今年、わずか数カ月で評価額を3~4倍に伸ばす企業も現れ、投資業界の隠れたチャンスとなっている。RPAとは何か、なぜ脚光を浴びているのか、また市場の将来性などについて探った。
RPA とは何か?
RPAとは人に替わってロボットが業務を行うことだ。
多くの企業がIT化を進めてきた中で、人の手を経なければならない業務も依然として存在し、従業員の多くの時間を奪っている現実がある。例えば、交通経費の精算一つとっても、配車アプリのバックエンド、イントラネット、システムプリンターなど複数のシステムに接続しなければならないが、RPAならこれらを一括して担ってくれる。
繰り返し発生する単純業務で、なおかつ複数のシステムを経由する業務は、RPAに任せるにはうってつけだ。これまでは個人が処理していた日常の雑務をコンピュータで処理できるシステムは、組織構造が複雑で事業分野が多岐にわたる大企業では特に需要が高い。
世界最大手の会計事務所デロイト・トーマツの2017年の調べでは、一企業のフルタイム当量のうち、機械に任せられる業務は平均20%となっている。こうした状況を受け、海外では2012~2015年ごろにRPAが実用化されはじめている。中国国内でも、2017年ごろから実用化がはじまり、「芸賽旗(i-SEARCH)」「弘璣(CYCLONE)」「雲拡科技(Encootech)」「Uibot」「アリババクラウド」などの企業が参入した。
現在、RPA企業の大部分の顧客は、金融やエネルギー分野を手がける大型国営企業や上場企業だ。なぜなら、RPA1台の導入費用は年間数万元程度(数十万円~140万円)だが、収益のためには単一の顧客に複数のRPAを導入してもらう必要があるからだ。大企業は事業規模が大きいだけではなく、多くのルーティン業務を抱えている。また、ITシステムの導入にも多額の予算を割ける。さらに、IT化の進んだ大企業では自社の基幹システムを運営しているが、これらに大きな変更を加えることが難しいため、システム間の潤滑剤的役割としてRPAが適任だという背景もある。
中国国内で一線級のRPA企業は、年間売上高が数千万元(数億~14億円)クラスで、評価額7000万~8000万ドル(約76億~87億円)が多い。
投資業界の台風の目となったRPA企業
世界のRPA企業を見渡してみると、トップクラスの米「オートメーション・エニウェア」や米「UiPath(ユーアイパス)」が、過去数カ月余りで数億ドル(数百億円)クラスの資金調達に成功しており、今年の投資業界では驚くべき注目株として浮上した。
RPA業界がここまでの注目を集めた理由には、以下の三つが考えられる。
1)リーディングカンパニーの急成長
米ビジネス専門ニュース媒体「ビジネスインサイダー」の報道によると、UiPathは2016~2018年の2年間で5000%の成長を遂げた。2018年の年間経常収益(ARR)は2億ドル(約217億円)と推計されており、2年前の350万ドル(約3億8000万円)から大幅に伸びている。
2)RPA導入を希望する企業の増加
RPA市場は年100%超のスピードで成長を続けている。楽観的に見積もれば、そのグローバル市場は今後5年間で1000億ドル(約11兆円)規模になる可能性がある。
デロイト・トーマツの調べでは、試験的にRPAを導入した企業は、平均150万ドル(約1億6000万円)を投じて本格的に導入することを希望しており、すでにRPAを導入している企業は平均350万ドル(約3億8000万円)を支払ったという。一定の予算を割いてでも導入したいという多くの企業の意向が見える。
3)さらなる進化の可能性
RPAはAIと結びつき、インテリジェント化を進めることで飛躍的に価値を上げ続けることができる。IT関連調査会社ガートナーの推算では、2018年に世界のAI市場は1兆2000億ドル(約130兆円)規模に達している。
RPA関連企業へ積極的に投資する人々は、RPAが将来的にIPA(インテリジェント・プロセス・オートメーション)へ進化していくことを見込んでおり、これが多くの業種の企業にとって、AI導入の最善の選択肢の一つとなることを確信している。グーグル傘下のPE「Capital G」のパートナーも過去に、「RPAは企業がAI技術の恩恵を受けるための主要経路となるだろう」と発言している。
RPA市場の規模は?
年100%成長を続け、グローバル市場が1000億ドル(約11兆円)規模に達すると見込まれるRPA業界だが、一定の不安要素も存在する。
収益モデルやターゲットユーザー、市況などを含めて予測される同業界の市場規模は、数十億ドル(約1000億~1兆円)程度で高止まりするとの見方もある。一企業の売上高も1億元(約16億円)が限界とされる。中国のRPA企業の主な取引先は大型国営企業、中央企業(中央政府管轄の国営企業)、金融機関、医療機関、エネルギー関連企業、物流企業などだが、昨年6月時点で中国国内に存在する中央企業は96社、国営企業は13万社だ。取引先が無限に存在するわけではない。
また、空前の成長を見せるRPA企業だが、トップ企業であっても損益分岐点を突破できていないケースが多く存在する。米大手「Blue Prism(ブループリズム)」の例をとってみると、過去3年間の成長率は100%を超えているが、同時に損失額も年100%増で推移している。
さらに、RPAからIPAへの移行も現時点では難易度が高い。RPAは規則的かつ固定化した業務を自動で実行する技術だが、これにOCR(光学文字認識)、NLP(神経言語プログラミング)、ナレッジグラフなどの技術を融合して、機械自身が自動識別・分析・意思決定・実行を行えるようになるまでには、相当のハードルが存在する。
中国から第二のUiPathは誕生するか?
中国企業がUiPathと同等の成功を収めるには、以下の条件をクリアしなければならない。
1)技術力:コードレス開発、AI開発で相応の技術力を持つこと。
2)エコシステム構築:十分な資金力、ビジネス力、コミュニティ力を備えること。
現在のRPAは人の行動を模倣し、決められたマニュアルを自動で遂行するものだが、作業フローの一部は人による操作も必要とする。数千台のRPAを導入する大企業で、これらの作業を人を配置することによってカバーするなら、業務の効率化が大幅に妨げられることになるだろう。
UiPathのような企業が急速な成長を遂げられたのは、製品開発をコードレス化することで有能なプログラマーへの依存度を下げ、人的コストを削減して生産性を上げたからであり、また、製品にAI技術を取り入れて顧客企業の業務上の問題をより多く解決し、他製品への乗り換えを阻止し、企業へのロイヤルティを高めたからだ。
多くの企業に活用されるRPA製品の背後には、必ず強力な開発者コミュニティとエコシステムによる支えがあり、また企業としてのビジネス力やリソースによるバックアップがある。
中国企業が勝ち抜くには、ビジネスエコシステムの構築、財務モデルの最適化、潤沢な資金やリソースの確保が課題となる。これらがあって初めて市場競争で優位に立てるだろう。
(翻訳・愛玉)
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