ESより効率的?就職難の中国で広がるAI面接、「人間味のない”拷問”」との声も

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人工知能(AI)技術が進展するにつれて、これまで金融系や外資系企業などごく一部で採用されていた「AI面接」が、さまざまな業界に広がりつつある。

人材採用にAIアプリを導入する企業は2024年に43%に達すると予測されているが、中国ではこの傾向がいっそう強まるとみられる。24年の大学新卒者は前年から21万人増の1179万人。厳しさを増す雇用市場で、多くの企業が候補者をふるい分ける手段として低コストかつ効率的なAI面接を採用し始めている。消費財大手の英ユニリーバでは、AIシステムを用いることで面接にかかる時間を10万時間減らし、採用コストを年間100万ドル(約1億5000万円)節約できたという。

一方で、多くの就活生はAI面接を「一人芝居のようだ」と感じ、大きなプレッシャーを抱えている。カメラに向かって筋道を立てて自然に話せるよう繰り返し練習しても、実際のAI面接では通信状況が悪かったり、予想外の質問が投げかけられたりと思うようにいかず、がっかりすることが多いという。人間味の欠如したAI面接を「拷問」と呼ぶ就活生もいるほどだ。

1日に5社のAI面接に参加したある新卒者は、カスタマーサービスで最初にAIが自動応答するのと同じで、まずAIという関門を突破しなければ対面の面接にたどり着けない、とこぼす。

興味深いことに、AI面接を採用する企業が増えたことで、若者たちはソーシャルプラットフォーム上でAI面接の攻略法や質問例を検索するようになった。また「AIをもってAIを制する」との考えで、ChatGPTにAI面接の回答を作らせようとする人も現れている。

AI面接の画面(画像は小紅書より)

AI面接は正しい評価を下せるのか?

企業にとってAI面接のメリットは、人事担当者が大量の面接ビデオをまとめて確認することで時間を節約し、より採用が難しいポストに力を注げることだ。また、AIは論理的思考力や言語化能力など、さまざまな角度から候補者を評価できるため、販売スタッフやサービススタッフ、配達員など応募者の多い職種や、新卒採用の選考に適している。高い英語力が求められる職種でも、AI面接を使えば英語スキルを効率よくテストできる。

現在、企業の多くは外部企業の提供するAI面接サービスを導入しており、主に応募者の中から対面面接に進む候補者を絞る一次選考に利用している。

市場に出回るAI面接サービスはどれも似通ったもので、候補者の回答や表情、動作、声などをアルゴリズムで分析して評価レポートを作成し、全応募者のスコアランキングを出す。また、販売系の職種ならばコミュニケーションスキルを重視し、ブルーカラーであればメンタルの強さを見るなど、各職種に必要な特定の分野を重点的にチェックすることもできる。候補者が適任かどうかを十分に検討するため、企業が独自に質問ライブラリや評価モデルを調整することも可能だ。

AI面接を利用するには一定の費用がかかるため、中規模企業や大企業に導入されるケースが多い。AI面接サービスを提供する会社に問い合わせたところ、面接者数に応じたプランは1人あたりの料金が15~30元(約300~600円)で、AI面接サービスのほか評価レポートや質問ライブラリの作成、メールの一斉送信など多くの機能が含まれるとのことだった。

しかし、AI面接の正確性や公平性については議論が続いている。求職者の中には、偏ったデータによりAIがゆがんだ判断を下す「AIバイアス」を懸念したり、面接官とのリアルなやり取りがないため自身の能力が十分に伝わらないと心配したりする人もいる。実際、画一的な質問では候補者の専門スキルや創造性を総合的に評価するのは難しい。

企業によっては、全てをAI任せにはせず、人事担当者が面接ビデオを確認したうえで次の選考に進めるかを判断するとアナウンスしている。それでも、求職者としてはAI面接の結果やフィードバックなど、もっと多くの情報を受け取りたいというのが本音だろう。

*1ドル=約146円、1元=約20円で計算しています。

(翻訳・畠中裕子)

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