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マルグレーテ・べステアー(Margrethe Vestager)氏が欧州委員会の競争政策担当委員に就任して5年になる。通常ならば、同氏の任期は年末を迎える前に終了するはずだった。しかし9月、欧州委は同氏を来期の競争政策担当委員に再任命。しかもデジタル経済政策執行副総裁も兼任させることにしたのだ。
べステアー氏は米国の大企業に対して容赦ないことで有名だ。過去5年間の任期でアップルやグーグル、クアルコムなどに罰金を科したり、アマゾンに追徴課税を求めたりするなどし、これらの企業に科した罰金総額だけでも200億ユーロ(約2兆4000億円)を超える。
べステアー氏は10月初め、欧州議会の4つの委員会からの約3時間におよぶ質疑に応じた。人工知能や税収、個人情報保護、貿易など重要なトピックについて論じている。
大企業への制裁について
べステアー氏はすでに大企業に多額の罰金を科してきたが、それでも、大企業にとってこれらの罰金は取るに足らず、違法行為の抑止力にならないのではないかと危惧する声もある。公聴会でべステアー氏は罰金以外の制裁、例えば企業の分割などは考えないのかという問いに対し、「最小限の介入で市場に競争を取り戻すことが我々の役目であり、企業の分割も選択肢の一つだが、一番避けたいものだ」と語っている。
デジタルサービスについて
この問題に関するべステアー氏の態度は明確だ。「デジタルサービス法案」を制定し、デジタルプラットフォームやデジタルサービス、デジタル製品に関する責任と安全規則について明確に規定するとし、「我々は企業のデータ収集や使用、共有などの方法についても基準を設ける必要があるかもしれない。そうすることが社会全体の利益になるからだ」と述べている。
人工知能について
またべステアー氏は「目的のある人工知能」を発展させることを挙げた。技術を医療や交通、気候変動などの方面で応用し、人工知能の分野で欧州を「世界のリーダー」にしたいという。もちろん「世界のリーダー」となるには「人工知能に関する倫理的規範」があることが前提だ。
課税について
べステアー氏は、将来的に大企業の税金逃れを無くしていきたいとしている。国境を超えた企業の利益計算の問題を考慮し、税法の改革について世界のコンセンサスを得たいとしているが、それができなかった場合、欧州は2020年末以前に独自のデジタル課税案を制定する予定だという。
個人情報保護について
べステアー氏はEUの定めた新しい個人情報保護に関する規則「一般データ保護規則(General Data Protection Regulation)」を支持するとし、個人情報保護の問題を一般市民に押し付けるべきではないと考えているという。「もしも自分がサービスを使用する前に何ページにもわたるプライバシーポリシーを読まなければいけないなら、面倒に感じて読まずに直接アカウントを作成してしまう」と話し、「これではいけない。人々が自分の力で自分を守ることができるようにするため、EUにはまだ多くのなすべき仕事がある」と語った。
中国について
べステアー氏は質疑会で明確にこう話している。同氏の次の目標はテクノロジー関連の大企業ではなく「中国」だという。べステアー氏は中国を「戦略的競争相手」と評し、中国と「互恵関係」であり続けるべきだと話した。
(翻訳・山口幸子)
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