中国の金属3Dプリンター「Aixway3D」、 精度10倍・後工程“不要”で量産対応
中国の金属3Dプリンターメーカー「雲耀深維(Aixway3D)」がこのほど、エンジェルラウンドとプレシリーズAで数千万元(数億円規模)を調達した。エンジェルラウンドは紅杉(Hongshan)のシードファンドや深圳高新投(Shenzhen High-tech Investment)、Plug and Play Chinaが参加。プレシリーズAには、博遠資本(BioTrack Capital)が主導し、藍群投資(Blue Hill)も参加した。資金は、コア技術の改良や生産能力の拡大、人材採用、市場開拓に充てられる。
雲耀深維は2021年設立で、江蘇省蘇州市太倉に本社を置く。コアメンバーは選択的レーザー溶融法(SLM)として知られるレーザー粉末床溶融(LPBF)技術を開発したドイツのフラウンホーファーレーザー技術研究所(Fraunhofer ILT)出身だ。創業者の沈李耀威氏はLPBF技術の発明者であるマイナーズ(Meiners)博士のもとで研究に従事し、金属3Dプリンター本体やソフトウエア、製造プロセスの開発に約10年携わってきた。
樹脂など金属以外の材料を使う3Dプリンターは、家電や自動車などの分野で幅広く活用されている。一方、金属3Dプリンターは加工精度の制約から製造業での本格導入が限定的だった。従来装置では加工公差が100~200マイクロメートル(μm)程度で表面粗さも大きく、研磨などの後加工に手間がかかるため、コストが跳ね上がるほか、効率の低さや品質のばらつきが課題だった。
同社は、高精度化に注力することで他社との差別化を図り、プリンターの公差を2~10μmと従来比で約10倍に向上させたうえに、表面粗さ(Ra)も約0.8μmに抑えた。これにより、造形段階で最終形状に近い「ニアネットシェイプ」を実現。後工程のCNC加工を大幅に削減、あるいは不要にすることで、製造コストの低減を可能にした。
一般に精度を高めると造形スピードは低下するが、同社は動的なレーザーフォーカス(焦点調整)技術を独自に開発した。レーザーのスポットサイズをリアルタイムに調整し、細かな造形が必要な箇所では20μm以下に、その他の箇所では大きなサイズへ切り替えて造形速度を高め、最大80%の効率向上を実現したという。これで量産用途への適用可能性が高まった。
さらに、接地面に対して10度以上のオーバーハング構造ではサポート材を使わずに造形できるため、材料ロスや加工コストの低減にも寄与する。
同社はすでに数百社の顧客を持ち、医療や家電向け部品の出荷量は10万点を超え、安定した量産能力を示した。さらに、人型ロボット(ヒューマノイド)など新たな用途開拓も進めている。例えばヒューマノイドの指部は内部空間が極めて限られており、従来の切削加工では対応が難しい構造が多い。高精度な金属3Dプリンターを用いることで油圧回路や電子回路、弾性構造を一体成形でき、精密な力覚センシングの実装につながるという。
共同創業者の尹伊君氏は、「今後3年以内に年間出荷量は100万点規模に達する見込みで、金属3Dプリンターによる量産化は製造業でさらに進む」との見通しを示した。
*1元=約23円で計算しています。
(翻訳・大谷晶洋)