LFPより高性能、三元系より安いーー次世代電池材料LMFPの中国新興、特許と量産で先行

中国のリチウム系電池材料メーカー「珩創納米科技(HENGTRON)」(江蘇省)はこのほど、シリーズBの資金調達で銀川育成鳳凰科創基金から数億元(数十億円)を確保した。資金は主に、寧夏回族自治区銀川市の新工場建設に充て、年産13万トン(第1期は3万トン)のリン酸マンガン鉄リチウム(LMFP)正極材料の生産ラインを整備する。江蘇省塩城市の既存拠点でも増産を進める方針だ。

珩創納米は2022年設立。二次電池に使用するLMFP正極材料の開発、生産、販売を手がけており、製品はすでに電気自動車(EV)や電動二輪車、蓄電システムなどに活用されている。

LMFPは近年注目を集めている正極材料で、リン酸鉄リチウム(LFP)の進化版として位置づけられる。LFPの一部をマンガンに置き換えることで、電圧は約3.4Vから約3.8Vに向上し、エネルギー密度も5~20%高まる。また、ニッケルやコバルトを使用する三元系材料に比べてコストが低いというメリットがあり、LFPと比較しても電力量あたりのコストを抑えられる。

会長の姚維広博士は、マンガンの含有量を高めると、マンガンが溶出しやすくなり、結果として電極の劣化につながると説明する。この課題を解決するため、同社は材料構造や製造プロセスの技術革新を進めてきた。なかでもコア技術の「固液二相法」は、マンガンと鉄を同じ結晶相に原子レベルで均一に分布させることで、材料構造の安定性を高めるものだ。さらに、炭素コーティング技術や多元素添加などを継続的に改良し、結晶構造の完成度を高めることで、マンガン溶出の抑制を図っている。

これらの技術を採用した同社のLMFP電池は、高温環境でも2000回以上の充放電が可能で、高温下でも1年半以上にわたって性能を保持できる。一部の性能指標では三元系電池を上回るという。

競争力の柱となるのが特許戦略だ。米ダウ・ケミカルが保有していたLMFP分野の中核特許を取得したうえで自社開発を積み重ね、材料組成から構造設計、応用方法まで広くカバーする特許体系を構築した。現在は約100件の特許を持ち、世界32の国・地域に展開。LMFP分野でグローバルな特許網を持つ唯一の企業と自負する。

中国ではマンガン含有量70%以上、海外では50%以上の配合で特許を押さえ、炭素・酸素結合構造や三元系材料との混合に関する特許も組み合わせることで、高い参入障壁を形成している。

市場シェアは2024〜25年にかけてLMFP材料の中国国内販売量で首位を維持し、40〜50%に達した。車載電池分野への本格参入は2026年末を予定しており、大型トラックや乗用車、プラグインハイブリッド車(PHEV)向けの供給を見込む。顧客企業によるサンプル検証が現在進行中だ。

銀川市の新拠点は車載電池市場向けの主力工場と位置づけられ、塩城市拠点より単一ラインの生産能力を高め、車載用途に対応したプロセス設計を採用する。寧夏回族自治区は電力・ガスコストが低く、生産コストの低減と大規模展開の両立が期待できると同社はみている。

*1元=約23円で計算しています。

(翻訳・畠中裕子)

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