ごみが多すぎて困った中国が、今や「ごみ不足」問題⋯ごみ発電大国の皮肉な悩み

中国の街角で見かける赤緑青黒などの色とりどりの種類別のごみ箱。中国では2010年代後半以降、官民を挙げた大規模なごみの分別が進められ、住宅地の掲示板からネット上に至るまで、あらゆるところで宣伝された。実態としては、誰もが厳格に分別しているわけではなく、分別されてないごみが入ったごみ箱を見るものの、それでも結構対策はうまくいっている。

当時、ごみ問題に中国は悩まされていた。急速な都市化が進んだことにより、都市のごみは2011年の約1.5億トンから数年で2億トン余りへと増加。ごみ処理が追いつかないのではないかという危機感があった。

加えて中国の都市ごみは、食堂やレストランなどからの生ごみが多く、家庭ごみも水分が多く混じることから燃やすにしても発熱量が低いという特性がある。また、長年混合収集が基本だったため、紙・プラ・金属、生ごみがごちゃ混ぜで、日によって成分や熱量などの成分が大きく変動した。当時主流だった「欧米・日本仕様」の焼却炉では、こうした「湿ったごみ」を安定して燃焼させることが難しかった。

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中国産焼却発電技術の台頭

この課題に対応するため、中国政府は五カ年計画で都市生活ごみの「無害化処理率」「資源化利用率」「焼却比率」などを指標化し、各地の地方政府に徹底した対策を迫った。そこで分別用のごみ箱を各地で見るようになったのもその影響だ。

また、投入されたのが、水分を飛ばして高温で焼き切る、中国独自の「ごみ焼却発電」技術である。ごみを燃やした熱で蒸気を発生させタービンを回すこの仕組みは、ごみの減量とエネルギー創出を同時に実現した。

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かつては、海外製の設備に頼っていたが、00年代から10年代にかけて中国製の品質があがっていくと国産化にシフトしていった。専門家の分析によれば、中国製の設備は燃焼効率や排ガス基準で日欧の水準に並びつつ、建設・処理コストを3〜5割も抑えることに成功したという。

この事業を支えたのは、「処理補助金」と「売電収入」という二階建てだ。1トンのごみを受け入れるたびに政府から65〜100元(約1500円〜約2300円)程度の処理補助金を受け取り、さらに発電した電力を電力会社に売る。つまりごみが集まれば集まるほど儲かる仕組みというわけだ。

「ごみ不足」という皮肉な結末

かくして各地で競うようにごみ焼却発電所が建設され、2020年代前半には全国で約1000カ所、1日あたりおよそ100万トンという巨大なごみ焼却能力が整備されていく。途中から政府のごみ処理目標が変わり、ごみの分別ではなく、ごみの焼却によるリサイクルとされるようになった。燃やすだけでだいたい政府目標を達成でき、おまけに各ごみ焼却場が儲かった。

特に財力のある上海周辺や広東省などの沿岸部にごみ焼却発電所が多く建設され、人々のごみの分類も他所よりは進んだ。すると何が起きるか。ごみ焼却発電所をつくりすぎて燃やすごみが足りなくなるのである。

燃やすごみが減った結果、全国平均の稼働率はおよそ6割となり、つまり4割近い能力が余ると指摘されている。住民に分別の徹底を強く求めすぎると、さらに燃やすごみが減って収益が悪化するため、かつての激しい分別宣伝も次第に影を潜めていった。

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東南アジアに活路

国内で余剰となった技術と資本は、いまは海外、特に東南アジアへと向かっている。

ベトナムやタイ、インドネシアといった国々の都市部は、かつての中国の後を追うかのように、急速に進む都市化にごみ処理インフラが追いつかず、ごみに悩まされている。例えばベトナムでは、生活ごみの処理率が50%に満たない地域もあり、雨の多い気候による「湿ったごみ」の処理に頭を抱えている。

ここに、中国が国内の過酷な環境で磨き上げた「湿ったごみ向け焼却技術」と「低コスト施工」のノウハウが東南アジア各国の市場に合致した。

中国企業は「国内ではごみが足りないが、東南アジアにはごみがあふれている」という絶好の稼げるチャンスとばかりに進出している。

海外進出パターンとしては、ほぼすべて現地で工場を建設し、現地のごみを現地で燃やすというものだが、細分すると2パターンある。ひとつは中国企業が資金を投じてごみ発電所を建て、20〜30年の特許経営期間の間、現地政府のごみを受け入れて処理費と売電収入を得るというもの。ごみ焼却発電を展開する「康恒環境」や「中国天楹」などが代表的な企業だ。もうひとつが焼却炉やボイラーなど主要設備や技術ライセンスを供給するというもの。

中でも中国天楹は、ベトナムの首都ハノイのソックサンごみ発電プロジェクトにおいて、1日あたり4000トンを処理し、年間で約2.6億kWhを発電・供給。現地政府から比較的高い売電価格と、「4年間の免税」と「9年間は半減」という税の優遇措置を受けている。

中国天楹のベトナム・ハノイごみ焼却発電プロジェクト

またインドネシアのパレンバン(スマトラ島)、タイ(バンコクやノンタブリー県)などでも、ごみ焼却処理費と売電価格は中国国内よりも高めに設定され、長期契約とあわせることで、投資の採算性が中国案件を上回るケースが多いという報告がある。

中国のごみ問題に対し、政策目標と補助金+売電価格で多くのごみ焼却発電所を建設し、培ったノウハウで海外展開へ。各国のごみ問題でも中国の存在が目立っていきそうだ。

(文:山谷剛史)

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