熱暴走ゼロ、劣化極小ーー米ニッケル水素電池「EnerVenue」が480億円調達、中国・常州で量産加速
新型ニッケル水素電池を手がける米スタートアップ「EnerVenue」が、シリーズBで優先株式により3億ドル(約480億円)の追加資金を調達した。今回は香港系ファミリーオフィスのFull Vision Capital(賦生資本)が主導し、香港投資管理有限公司(HKIC)が戦略株主として新たに参加した。資金は生産体制の拡充や供給網の整備、技術開発、海外展開に充てられる。
EnerVenueは2020年にスタンフォード大学材料科学工学科の崔屹教授によって設立された。現在、中国・江蘇省常州市と米国ケンタッキー州に生産拠点を持つ。今回調達した資金は、常州工場の生産ライン建設や稼働(同工場第1期の計画上の年産能力は250メガワット時)の推進に加え、香港での地域本部とイノベーション研究開発センターの新設に充てられるという。
EnerVenueの技術的な特徴は、宇宙用途で長年実績を積んだニッケル水素電池を、地上の蓄電装置向けに転用した点にある。主力製品は、そのニッケル水素技術をベースとした水系金属電池だ。水溶液を電解質、金属化合物を正極に用いた構造により、高い安全性・超長寿命・幅広い温度域での稼働・メンテナンス不要という特長を実現している。また、再生可能エネルギーの蓄電、電力網のピークシフト・周波数調整、建物向け蓄電など幅広い用途に適用できる。
同社グローバル最高経営責任者(CEO)のHenning Rath氏は、熱暴走試験で発火が発生しなかった点や、3万回以上の充放電サイクル後でも劣化が極めて小さい点を強調し、「これがリチウムイオン電池との本質的な違いだ」と述べた。
またRath氏は、現在の最大の競合はリン酸鉄リチウム(LFP)を代表とするリチウムイオン蓄電製品だと述べた。リチウムイオン蓄電製品は現時点で市場の主流を占めるものの、メンテナンス需要が高く、安全面でのリスクも相対的に大きいとされている。蓄電市場の顧客が求めているのは、30年に及ぶ長寿命、低い劣化率、高い安全性、そして極めて低いメンテナンスコストを備えた製品であり、これこそがEnerVenue製品の主要な価値だという。
同社は現在、中国、オーストラリア、米国、EUで顧客向けの実証プロジェクトを展開している。
*1ドル=約159円で計算しています。
(36Kr Japan編集部)