「中国版スペースX」を狙う宇石空間、設立1年で累計230億円調達 27年に初打ち上げへ
中国で再使用型ロケットを開発するスタートアップ「宇石空間(Astronstone)」がこのほど、シリーズAで5億元(約120億円)を調達した。出資は高榕創投(Gaorong Ventures)と崑崙資本(Kunlun Capital)が主導し、建発新興(C&D)や藍湖資本(Blue Lake Capital)、弘暉基金(Highlight Capital)、既存株主の高瓴創投(GL Ventures)のほか、金鉱大手の紫金鉱業(Zijin Mining)なども参加。この1年間の調達額は累計10億元(約230億円)に達した。
調達資金は、ロケットの組立・試験や、ロケット回収技術の検証、生産能力の拡大などに充てる予定で、初号機ロケット「AS-1」の打ち上げとその後の本格運用を目指す。
ステンレス機体とアーム回収技術に注力
2025年初めに設立された宇石空間は、推力が大きく、低コストで迅速に再使用可能な液体燃料ロケットの開発に注力している。米スペースXの「スターシップ」をベンチマークにし、ステンレス鋼製の機体、液体酸素メタンエンジン、箸型アーム回収技術を開発する中国唯一の商用ロケットメーカーとされる。創業者で最高経営責任者(CEO)の唐文氏は、清華大学の航空宇宙学院で博士号を取得した。
「AS-1」は全長70メートル級の2段式液体燃料ロケットだ。離陸重量は約570トン、機体直径は4.2メートルで、低軌道への打ち上げ能力は使い捨て時が15.7トン、再使用時が10トンに上り、主に低~中軌道へのペイロード打ち上げ市場をターゲットとしている。

「AS-1」は全長70メートル級の2段式液体燃料ロケット
機体の材料には、主流のアルミニウム合金ではなく、革新的なステンレス鋼を採用した。唐CEOは、構造の最適化と精度の高い溶接技術によって、機体の重さをアルミニウム合金製ロケットとほぼ同じにしつつ、生産コストをアルミニウム合金製の10分の1に抑えたと説明する。また、中国初となるステンレス鋼製ロケットのサプライチェーンを独自に構築することで生産効率を数倍に向上させ、最短1カ月で出荷する体制も築いたという。
同社は、湖南省に年産8基のロケット生産拠点を建設中で、今年7~9月の完成が予定されている。北京市にある研究開発センターは4000平方メートル以上に拡張され、電気総合試験センターではすでにロケット電気システムの検証業務が始まった。また、電子機器センターと箸型捕捉アーム試験拠点の建設も進められている。
今年はロケット3基を生産する計画で、2027年前半の初打ち上げを目指している。
段階的なコスト削減で市場拡大狙う
唐CEOによると、中国の民間宇宙産業では、ロケットを作れるかどうかではなく、コストをいかに抑えるかが大きな課題となっている。
そこで同社は、ロケットの打ち上げコストについて、3段階の目標を設定した。まずは、重量1キロ当たり2万元(約50万円)を下回れば、衛星コンステレーション向けの大規模なサービスが可能になる。次に、5000元(約12万円)まで下がると、宇宙太陽光発電や宇宙コンピューティングなど軌道上インフラの建設が経済的に現実味を帯びてくる。さらに500元以下になれば、月面基地の建設といった深宇宙探査を支えられる。
唐CEOは「打ち上げコストがポイントとなる閾値に達すれば、新市場の開拓が一気に進むだろう」と話す。宇宙経済(スペースエコノミー)は新しい需要と供給を生み出し、そのサイクルが少なくとも10年以上続くと考えており、「このような時代を迎えたことは、特定の企業に限らず、業界全体のチャンスになる」と語った。
今回の出資を主導した高榕創投は、民間宇宙産業が検証段階から本格的な商用化へ向かう「2.0時代」に入り、推力の大きい再使用型ロケットが不可欠になるとの見方を示し、宇石空間の開発が競合より大きく先行していると評価した。
*1元=約23円で計算しています。
(翻訳・大谷晶洋)