AI需要で沸く中国メモリー。NAND大手・長江存儲(YMTC)がIPO始動、評価額6兆円超
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中国国産半導体メモリー大手の長江存儲控股(YMTCホールディングス)はこのほど、新規株式公開(IPO)に向けた指導届出を完了し、中国A株市場(科創板)への上場準備を正式に開始する。ロイター通信は、早ければ2026年6月中旬にも正式な上場申請を提出すると報じた。
市場では同社のIPO評価額が3000億元(約6兆9000億円)規模に達するとの観測もあり、もし実現すれば近年A株市場で最大級のテクノロジーIPOとなる。
事業会社「YMTC」との関係
長江存儲控股は2016年12月設立、本社を湖北省武漢市に置く。傘下に主力事業会社の長江存儲科技(YMTC)を擁し、チップ設計から製造、パッケージング、テスト、システムソリューションまでを手がける垂直統合型デバイスメーカー(IDM)である。
YMTCは現在、中国で唯一の3D NANDフラッシュメモリーメーカーとして知られる。3D NANDウェハーに加え、組み込みメモリー、コンシューマー向けおよびエンタープライズ向けSSDなどをなどを世界に供給している。
米規制環境の変化が転換点か
今回の上場準備の背景には、米国の対中半導体規制を巡る環境変化もあるとみられる。YMTCは2022年12月、米国商務省産業安全保障局(BIS)によってエンティティリストに追加され、先端製造装置へのアクセスが大きく制限された。当時、米調査会社TrendForceは「将来的に3D NAND市場から撤退する可能性がある」とまで予測していた。
しかし2026年2月、米国国防省は「2021年度国防授権法案」に基づく1260Hリスト(中国軍事関連企業リスト)を改訂し、YMTCと中国DRAM大手の長鑫存儲(CXMT)を同リストから削除した。エンティティリスト解除ではないものの、米中半導体対立の象徴的企業のが規制リストから外れたことで、IPO準備に向けた地政学を巡る地政学リスクは一定程度和らいだとの見方が出ている。
「メムフレーション」が追い風に
業績面では、市況が追い風となっている。報道によれば、同社の2026年1〜3月期売上高は200億元(約4600億円)を突破し、前年同期比で約2倍に拡大した。AI向けデータセンター投資の急増がメモリー需要を押し上げ、収益拡大を後押ししている。
市場調査機関のデータでは、2025年7〜9月は世界NAND市場におけるYMTCのシェアは13%に達しており、サムスン電子、SKハイニックス、米マイクロン・テクノロジーに次ぐ世界第4位に浮上したという。
世界半導体メモリー市場は、業界が「メムフレーション(memflation/メモリー価格インフレ)」と呼ぶ歴史的好況期に突入している。米調査会社ガートナーは2026年4月、世界半導体市場の売上高が前年比64%増の1兆3000億ドルを超え、過去20年で最高水準の成長率になるとの予測を発表した。なかでもメモリー市場の売上高は前年比約3倍に拡大すると見込まれている。DRAM価格は125%、NAND価格は234%上昇し、本格的な価格緩和は2027年後半まで期待しにくいとの見方だ。
月産20万枚から生産増強
YMTCは現在、武漢で2工場を運営し、合計月産能力は約20万枚(ウェハベース)。2025年には湖北省政府系投資会社・湖北長晟三期投資発展が共同で207億2000万元(約4765億円)を出資し、生産能力増強を担う新会社「長存三期(武漢)集成電路」を設立した。三期工場は、2026年末の稼働開始を予定している。さらに2工場の追加建設計画もあり、全工場が稼働に達した場合、月産能力は4-50万枚規模に拡大する見通しだという。
技術面では、YMTCは独自開発の「Xtacking®」アーキテクチャを核に、第5世代3D TLC NANDフラッシュの出荷を開始している。注目すべきは、サムスン電子が次世代「V10 NAND」でYMTCの特許採用を検討するとの報道もある。
「中国メモリー双雄」のダブルIPOへ
長江存儲のIPO準備に先立ち、中国DRAM最大手の長鑫科技(CXMT)も上場関連資料を更新し、1〜3月期の純利益が前年同期比1688%急増したことを公表している。NANDのYMTCとDRAMのCXMTという「中国メモリー双雄」が相次いで資本市場へ向かう構図は、中国半導体国産化政策の象徴的瞬間を示す。
(36Kr Japan編集部)