中国Dexmal、エンボディドAI基盤を刷新 物流ロボで実機データも強化

AI(人工知能)の活用は、文章や画像の生成にとどまらず、ロボットを介して現実世界で作業を行う「エンボディドAI」や「フィジカルAI」へと広がりつつある。

こうした中、汎用エンボディドAIを開発する中国スタートアップ「原力霊機(Dexmal)」は7月9日、北京で開催した開発者会議「Action 2026」で、新製品5つを一挙に発表した。汎用エンボディド基盤モデル「DM0.5」、汎用ロボット本体「Apex」、モデルの実用化を支える開発者向けプラットフォーム「DexDev」(DFOL2.0、MaaS、DexOSで構成)に加え、実際の生産現場を想定したソリューション「Ferrata」の産業実践例も披露した。

汎用性の高い基盤モデルから、開発者向けツール、体系化されたシーン別ソリューションまで、エンボディドAIを研究段階から実用段階へ引き上げる狙いだ。

大型調達とM&A

Dexmalはこの前に、新たに資金調達を実施した。出資には、智譜(Zhipu)、階躍星辰(StepFun)、商湯科技(SenseTime)といったAI開発企業のほか、スマートデバイスの華勤技術(Huaqin Technology)や上海汽車集団(SAIC Motor)傘下の恒旭資本(Hengxu Capital)なども参加した。また、株式取得を通じて物流ロボットメーカー「原力聚合(Atomix)」を傘下に収めたことも明らかにした。

Dexmalは2025年3月、AI大手・曠視科技(Megvii)の共同創業者でCTOを務めた唐文斌氏によって設立された。設立直後のエンジェルラウンドに続き、蔚来資本(NIO Capital)主導のシリーズA、2025年11月にはアリババグループを単独出資者とするシリーズA+を実施した。

最大の課題は「データ収集」

Atomixは、唐氏が2016年にMegviiで立ち上げたスマート物流事業から、24年にスピンオフした企業で、今や中国を代表する物流ロボットメーカーへと成長した。20以上の国・地域で事業を展開し、ユニクロや電池大手の寧徳時代(CATL)などを顧客に抱えている。売上高は年間10億元(約240億円)近くに上り、四方向パレットシャトルの販売台数は世界2位だという。

業界関係者は、DexmalによるAtomix買収について、事業拡大にとどまらず、エンボディドAI業界が抱える最も難しい「データ問題」の解決を狙ったものだとみる。。ロボットに搭載するAIは大量の実機データによる継続的な学習を必要とする一方、AIの性能が不十分だとロボットが作業をこなせず、結果として質の高いデータの収集も難しくなるというジレンマを抱えているためだ。

この点で、Atomixは大量の実機データを継続的に取得できる基盤となる。物流現場でのピッキング、搬送、仕分けといった作業は、AIにとって最も基本的かつ重要なタスクとされる。物流ロボットが世界中で稼働することで、大量の実機データが蓄積され、AIの学習・改良に活用される見込みだ。

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今回発表した基盤モデル「DM0.5」は、前世代モデル「DM0」をアップグレードしたもので、ロボットアームや人型ロボットなどが現実の物理世界で指示を理解し、複雑な操作タスクをこなせるようにすることを目的としている。既存モデルが抱えていた記憶力の弱さを克服し、最長60秒の長期記憶を備える。長時間・多段階にわたる複雑なタスクも安定してこなせるという。

訓練データの規模は前世代比400%に拡大し、約5万時間の高精度な操作データと10万時間のシーン映像データ、計15万時間分のデータで学習させた。異なる形態のロボット機種をまたいで対応できるほか、指示文、画像、動画など多様な入力情報を理解し、ナビゲーション、把持、押し引き、積み上げといった繊細な動作を実行できる。

また、独自開発のワールドモデルと組み合わせることで、DM0.5は仮想環境上で動作の結果を事前にシミュレーションでき、強化学習の訓練を通じてロボットが自律的に誤りを回避・修正することを学習できるという。これにより、実機での検証に要する時間やコストを大幅に削減できるとしている。

*1元=約24円で計算しています。

(翻訳・大谷晶洋)

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