ロボットハンドの心臓部に商機 中国新興、超小型モーターで「業界初」の構成
中国の人型ロボット(ヒューマノイド)産業の活況を受け、ロボットハンドや関節モジュールといった中核部品にも投資家の関心が集まり始めている。
超小型高性能モーターを手がけるスタートアップ企業・指尖智擎(Vaxor Motor)(江蘇省蘇州市)がこのほど、プレシリーズAで数千万元(数億円規模)を調達した。深創投集団(SCGC)が出資を主導し、天啓資本(Tianqi Capital)と卓源亜洲(G&O Capital)が参加した。資金は主に、次世代の超小型アキシャルフラックス(軸方向磁束)モーターの量産、コアレスモーターの生産ライン建設、主要顧客向けの供給体制づくりに充てる。
指尖智擎は2024年8月に設立。超小型アキシャルフラックス関節モジュールとコアレスモーターの開発に注力し、ロボットハンドや消費者向けロボット、小型ロボットアーム、医療機器などに製品を提供している。創業者の張楊氏はモーター業界で12年間にわたって実績を積んでおり、家電大手の美的集団(Midea)や自動車部品メーカーの威孚高科(Weifu High-Technology)に勤務した経験を持つ。
ロボットハンドは人型ロボットに必要不可欠なエンドエフェクタであり、その性能は実環境での作業能力を左右する。「小型+高性能+低コスト」の3条件を兼ね備えたロボットハンドの実現は難しいとされてきたが、指尖智擎は「超小型アキシャルギャップモーター+プリント基板(PCB)巻線+サイクロイド減速機」という構成を採用し、超小型設計によって独自色を打ち出している。提供する関節モジュールの外径は16〜30mm。最小の16mm規格では、電動駆動ユニットの最大連続トルクは0.10〜0.31Nm、伝動効率は80〜88%に達するという。

16mmの関節モジュール
製品の特長は主に3つ。1つ目は、軸方向磁束構造による出力密度の向上。2つ目は、PCB巻線技術の全面導入による品質安定性の向上。3つ目は、サイクロイド減速機の採用によるコスト・精度・信頼性のバランス確保だ。
張氏によると、「超小型化」こそが差別化の要であり、最大の参入障壁になるという。市場には類似の技術も出回っているが、「アキシャルギャップモーター+PCB巻線+サイクロイド減速機」を組み合わせて超小型化した製品では、同社が業界初となる。
ロボット産業の足元の課題のひとつが信頼性の向上だ。業界では現在、ロボットハンドの耐久性を「100万回の開閉」でアピールする例が多いが、産業現場や家庭での長期の安定稼働には十分とはいえない。同社は材料や構造、製造プロセスなど複数の角度から、信頼性の向上に取り組んでいる。
超小型関節モジュールは、すでに4機種の標準品を投入し、複数のカスタマイズ開発も進めている。コアレスモーターの製品群も年内に整う見込みだ。
事業化でも具体的な成果が出始めた。ロボットハンド関連の顧客が売上高の6〜7割を占め、複数の業界大手との協業も進む。蘇州市に研究開発拠点と工場を構え、2026年7〜9月期には超小型関節モジュールの生産能力を年間20万個に引き上げる見通しだ。
張氏は、ロボット本体の製造には参入せず、超小型・高性能モーター分野のトップ企業を目指すと強調する。超小型モーターは、消費者向け電子機器、医療、産業オートメーションなど用途が広く市場も大きいため、ロボット製造に参入するより長期的な競争優位を築きやすい、というのが理由だ。
*1元=約23円で計算しています。
(翻訳・田村広子)