公道物流に⾃動運転トラック 中国「SENIOR」、荷役も無⼈へ
中国では大型無人トラックの商用化が新たな段階に入っている。2026年上半期だけで関連スタートアップ5社が計70億元(約1700億円)を調達し、新規株式公開(IPO)を視野に入れる企業も相次ぐ。港湾や鉱山といった閉鎖環境で需要が拡大する一方、公道物流でも政策支援を背景に実証や導入が進み始めた。
こうしたなか、「斯年智駕(SENIOR)」がこのほど、シリーズCで興証資本(Industrial Securities Asset Capital)と頤道資本(MEDISOPHY Capital)からで3億元(約70億円)を調達した。資金は次世代自動運転ソリューションの開発に充てられる。
SENIORは2020年に設立。コンテナトラックやダンプトラック、トレーラー向けの自動運転システムを開発する。環境認識、将来予測、運転判断を一体で処理する独自の「One-Stage World Model(1段式世界モデル)」と、ドメインコントローラーを中核技術とする。
同社は完成車の販売に加えて輸送サービスも展開。閉鎖環境では、従来のコンテナ港湾やバルクヤードから、製鉄所や製紙工場、鉄道駅などへと事業範囲を広げているほか、開放環境向けでも物流企業などと提携している。海外事業についても成果が出始めており、某海外大手からドメインコントローラーのサプライヤーに指定された。

一方、閉鎖環境での無人運転が実現したとしても、物流の全プロセスの無人化にはまだ遠い。荷物の積み下ろしや、トレーラーとけん引車との切り離しなどには依然として人手が必要だ。同社の何貝CEOは、世界モデルやエンボディドAIを活用し、輸送だけでなく荷役設備や各種システムまで含めた一体的な無人化を目指しており、3〜5年後には実現のめどが立つとの見方を示した。

同社は長期的には、閉鎖環境よりも公道物流に大きな成長余地があるとみる。今回調達した資金は、ドメインコントローラーを非車載グレードから車載グレードへ高度化する開発に重点投入する。何CEOは、ドメインコントローラーは自動運転システムの「大脳」であり、無人運転実現の鍵を握る部分だと説明する。
公道での自動運転には、高い信頼性に加え、膨大な走行データの蓄積が欠かせない。何CEOによると、公道で扱うデータ量は閉鎖環境の1桁から2桁上回る。今後の競争では、実際の運行データを継続的に蓄積し、モデル性能を改善できるかが重要になるという。
収益面では、業界各社の粗利益には差が出にくいため、コスト管理が鍵となる。販売費は事業運営の効率性、開発費はAIの活用効率や製品化能力に左右される。何CEOは「大型無人トラックも、自動車製造業の枠組みに属している。中国の製造業は利益率が低いため、ハードウエアのコストや運営コストを下げるしかない」と話す。
一方、海外市場では利益とリスクが正比例するため、利益を出すためには製品価格を中国国内の3〜4倍にする必要がある。何CEOによると、先進国では労働組合の反発もあり、大型無人トラックの導入が遅れ気味だが、新興国では効率化を求める声が大きいため、目下のところ同社の受注先は新興国に集中しているという。
*1元=約24円で計算しています。
(翻訳・田村広子)