「テスラよりABB」 中国ロボット新興、精密制御で24億円調達
産業オートメーションに取り組む中国スタートアップ「国奥科技(Goal Technology)」はこのほど、シリーズAの追加ラウンドで約1億元(約24億円)を調達した。既存株主の深圳市創新投資集団(SCGC)のほか、基石資本(CoStone Capital)や粤科金融集団(Guangdong Technology Financial Group)が出資した。資金は主に産業用ロボットの量産とロボット開発チームの構築に使用される。
国奥科技は2019年に設立され、当初は精密モーターを足掛かりに産業オートメーション市場に参入した。主力製品の2自由度ZRモーターは、すでに半導体や3C(コンピューター、通信機器、家電)などに採用されているほか、産業ロボット完成機にも事業を広げつつある。
従来の産業設備では一般的に、Z軸の直線運動とR軸の回転運動を両立させるために、2組のモーターと伝達機構を組み合わせる必要がある。国奥科技が開発したZRモーターはひとつのモーターで直線と回転の動きを実現、ダイレクトドライブ方式を採用することで動力伝達機構を省き、動作の精度、安定性、力の制御性能を向上させた。
半導体の後工程で使用される中核装置のダイボンダーは、国奥科技のZRモーターが最も早い時期に本格導入された分野だ。同社のZRモーターはすでに中国で多くの有力半導体メーカーや、電子機器大手の歌爾(Goertek)、光学部品大手の舜宇光学(Sunny Optical Technology)などのサプライチェーンに参入している。
主力部品の事業をベースに、産業用ロボット完成機の製造にも乗り出した。AIモデルや汎用性の高さを重視する今の人型ロボット業界では、異色のアプローチといえる。創業者の李思陽氏によると、現段階でロボットを製造現場に導入するに当たりネックとなるのは、「頭脳」に相当するAIモデルの性能不足ではなく、動作精度や安定性、力制御機能が生産ラインで使えるレベルに達していないことだという。
李氏は「今、3Cの大手メーカーが汎用型人型ロボットの導入を検討することはない」と指摘。走る、踊る、衣類を片付けるといった幅広い能力を磨くよりも、まず特定の作業の精度を産業レベルにまで引き上げ、そのうえで段階的にロボットが対応できるタスクを広げていくべきだとした。
国奥科技が自社開発の多自由度モーターをベースに開発した産業用ロボットは、独ボッシュグループへ納入されたほか、複数の大手メーカーの生産ラインで試運転の段階に入っている。2026年4月には、業界初となる2軸自由度関節を搭載した産業用ロボット「G-Tools」を発表した。G-Toolsは太さ0.5ミリの針をつまんで小さい穴に通すという精密作業が可能で、位置決めの精度は±2マイクロメートル(㎛)、力制御精度は±0.05ニュートン(N)とされている。

国奥科技の製品ラインアップ
量産品の品質管理とコスト削減のため、2024年に江西省贛州市に自社の加工・組立工場を建設し、25年に量産を開始した。現在の生産能力は1カ月に約1800~2000台だ。
国奥科技がロボット用関節モジュールの販売ではなく、完成機の開発を手がけることにした理由について李氏は、2軸自由度のZRモーターはロボット全身の運動制御と構造設計にも関わり、部品を提供するだけでは十分な性能を発揮できないためだと説明する。同社は2026年の売上高が1億元(約24億円)に迫り、黒字化を見込めることから、開発チームを約60人から140人体制へと大幅増員、本格的にロボット完成機に取り組む条件を整えた。
李氏は、「私たちがベンチマークにするのは米EV大手テスラの人型ロボット・オプティマス(Optimus)ではなく、スイスの産業用ロボット大手・ABBだ」と語り、人型ロボットのような汎用ロボットではなく、高精度の運動制御を備え、実際の産業現場で稼働できるロボットの開発を目指す考えを示した。
また、香港に研究開発センターを設置し、香港理工大学と共同で先進モーター研究室を開設、より自由度の高い球面モーターの開発にも取り組んでいる。270~360度の球面運動が可能で、単関節の自由度では既存の7軸ロボットアームを上回り、ロボット関節の究極のソリューションとして期待されている。ただし、この技術はまだ開発段階にあり、本格的な実用化にはさらなる検証が必要だ。
人型ロボットが量産競争のフェーズに入るなか、業界の焦点は「製品として作れるか」から「安定して稼働できるか」へと移りつつある。国奥科技はAIの汎用性を追うのではなく、まず製造現場で求められる精度や安定性を高め、対応できる作業を段階的に広げる方針だ。
*1元=約24円で計算しています。
(翻訳・36Kr Japan編集部)