清華大発の量子新興、数十億円調達 原子1万1000個捕捉で世界記録

世界で量子計算の開発競争が激化している。量子計算には超伝導やイオントラップ、中性原子など複数の方式があるが、そのうち中性原子方式では、中国のスタートアップが原子の捕捉数で世界記録を更新した。

北京に本社を置く「両儀万象科技(Qosmos Technology)」は、設立2年足らずにもかかわらず、清華大学の研究チームと共同で1万1000個の原子を安定して捕捉し、米カリフォルニア工科大学の6100個を上回る世界記録を達成した。

「我々の目標は、カリフォルニア工科大学やハーバード大学、マサチューセッツ工科大学など世界トップクラスのチームと肩を並べて競争することだ」と両儀万象の石琦会長は話す。

同社は2024年、清華大学の原子量子計算研究チームを母体として設立された。チーム自体は2000年前後に冷却原子物理の研究に着手しており、会社として独立した後には同大学と共同で「冷原子量子計算北京市重点実験室」を設立。大学が先端的な基礎研究を担当し、会社が実用化を担うモデルを構築した。石会長によると、世界記録を更新した1万個の原子捕捉にあたっても、まず大学の研究室で理論検証を完了し、続いて会社のエンジニアリングチームが実用化の段階にまで進めたという。

技術面を見ると、同社の第1世代原子量子コンピュータは、独自開発した「光ピンセットによる超低温ルビジウム原子アレイプラットフォーム」を基盤とし、動的再配置技術によって数百〜1000ビットの欠損のないプログラム可能な原子アレイを構築する。1量子ビットゲートと2量子ビットゲートの忠実度も世界最高水準に達しているという。このほか、中国初となる小型・集積型原子ビーム発生装置や、大規模・高品質な光ピンセットアレイを生成できる光学メタサーフェス技術も独自開発し、1万個規模の原子を捕捉するための基盤としている。

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事業化にも着手している。石会長によると、同社は設立からこれまでの約2年間で、量子コンピュータ本体の開発・製造と並行して、フィードバックシステムや原子源、光学メタサーフェスなど10種類近くのコンポーネントや部品を独自開発してきた。一部の部品はすでに受注・販売を開始しており、初期顧客は大学や研究機関が中心だという。

両儀万象はこのほど、シリーズAの追加ラウンドで数億元(数十億円)を調達した。君聯資本(Legend Capital) が出資を主導し、基石資本(Costone Capital)などが参加したほか、既存株主の順為資本(Shunwei Capital)とAI大手の科大訊飛(アイフライテック)が追加出資している。調達資金は研究開発や人材採用、量子コンピューターの開発・製造などに充てる。

2026年3月にはアイフライテックと合弁会社「量智開物科技(Intelligent Quantum Inception)」を設立し、量子技術とAIの融合を模索している。両儀万象傘下の「天策量物」が測定・制御システムや量子クラウドプラットフォームなどの開発を担う。また、天津大学精密試験技術・計測機器全国重点実験室と共同研究センターを設立し、光電技術やレーザー技術などの分野で協力を進めている。

石会長は業界競争の核心に言及し、量子計算は参入障壁が極めて高く、原子ビットを捕捉・制御する規模、精度、誤り訂正能力のどれが欠けても成立しないと指摘。開発チームには確かな科学研究力と高度なエンジニアリング能力の双方が求められるとし、「個別の技術でブレークスルーを果たすだけでは、総合的な競争優位性を築くことはできない」と強調した。

*1元=約24円で計算しています。

(翻訳・田村広子)

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