SNSで話題の中国「無人配送車」 実際はどこを走り、何の役に立っているのか

中国版TikTokの抖音(Douyin)や小紅書(RedNote)といったSNSを眺めていると、ときどきインパクトのある小さな無人配送車(ロボバン)の走行動画に出会う。農村の未舗装路を大きく跳ねながら進む車両や、道幅の狭い生活道路で対向車と向き合って立ち往生する車両、あるいは工事の窪みにはまって横転する車両⋯。「無人配送車は本当にこんな道を走っているのか!」と驚く人も多いだろう。その答えは、部分的には「イエス」で、公式の走行試験場での出来事も含まれている。

たしかに商用走行中の事故映像も混ざっているが、段差、路上駐車、仮設の工事柵、突然の横断者の飛び出しなど、様々なケースが存在する実際の現場で無人配送車は試されている。一方、専用のテストコースでは、工事中の道路や減速帯、冠水路、でこぼこ道などを人工的に再現している。

無人配送車大手の「新石器(Neolix)」の車両も、降雨環境や15度の登り坂での試験、センサーの校正などを経て出荷される。また、吉林省遼源市では大小さまざまな道を含む計68kmがテスト路線に設定されている。都市中心部の整った道路だけではなく、道路規格や交通環境が異なる場所で走行データを蓄積しようとする取り組みである。

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主戦場は都市部ではなく「郊外」

無人配送車の導入先は、現段階では深圳市福田区など一部都市の中心部に見られるが、主戦場は経済技術開発区やハイテク産業開発区、工業団地といった郊外エリアだ。これらの地域は歩行者が相対的に少なく、道路構造も単純で、倉庫から営業所、あるいは営業所から集荷拠点といった決まったルートを設計しやすい。SNSでは頻繁に映像を目にする一方、中国の一般的な街中で無人配送車を見かける機会がまだ少ないのは、このためだ。

郊外エリアでは、無人配送車の能力と物流の需要がかみ合う。宅配営業所と各建物の小包受取所の間を1日何度も往復する作業、工場から物流センターへの部材輸送、夜間の拠点間輸送などは、ルートが固定されていて荷物量も予測しやすい。人間にとっては単調で負担の大きい業務だが、低速で決まった区間を繰り返す無人車には適している。もちろん開発区も多少は人や二輪車、一般車両が行き交う。無人配送車はまず物流の流れを予測しやすい場所で走行データを蓄積し、運営の型を作ろうとしている。

「人の代替」ではなく「負担軽減」

新しいテクノロジーには、「実際に役に立つのか」という根本的な問いがつきまとう。無人配送車も、現時点で人間を完全に置き換えられる段階にはない。それでも、反復的で時間のかかる拠点間輸送を任せられる点は、配送員や営業所の責任者から評価されている。

広東省での具体的な事例を挙げる。佛山市のある営業所は、新石器の無人配送車を導入し、営業所から小包受取所への固定ルートで運行している。1年間の運用試算では、ラストワンマイルの総コストが30%削減され、配送員が移動に費やす時間は40%減少したという。浮いた時間を集荷や個別配送といったより付加価値の高い業務に充てられるようになったと説明する。

深圳市龍華区の順豊エクスプレス(SF Express)中継センターでは、夜間に無人車を1日60便、約10分間隔で運行している。日中の配達と違い、夜間の拠点間輸送は人員を確保しにくい。無人車は24時間止まらず動けることが価値であり、同センターは導入前後で全体効率が20%以上改善したとされる。

このように各所から出てくる評価は、「運転手が不要になった」というより「配送員が最もきつい往復作業から離れられた」という点である。つまり、無人配送車は少なくとも現段階では配送員を減らすツールというより、物流工程の一部を切り出して再編する設備として機能している。

現在、中国の無人物流車市場をけん引するのが、新石器と九識智能(ZELOS)の2社だ。両社はいずれも低速・L4レベルの無人物流車を量産し、一般配送、コールドチェーン、小売店への商品補充など、幅広い用途で展開してきた。2026年に入り、両社の戦略の違いは一段と鮮明になっている。

九識智能:高精度地図レスとアリババ連携で急速拡大へ

技術面での注目の動きは、九識智能が2026年7月に発表した「L4向け高精度地図レス自動運転ソリューション」の量産化だ。

これは従来の「車線や停止線の位置、右左折の指示などを細かく書き込んだ専用地図」に依存せず、標準的な道路地図と車両センサーによる現場の状況把握によって走行する設計である。事前に専用の高精度地図を作る必要がなくなるため、新たなルートへ車両を投入する際の準備期間は、従来のおよそ1カ月から1日以内へ短縮される。九識智能は「より多くの都市、より多くの顧客へ迅速に展開できる」強みで優位を築ける可能性がある。

同社は2026年1月、アリババ傘下の物流企業「菜鳥(Cainiao)」の無人車事業を取り込み、資本面でも菜鳥との戦略的統合を進めた。菜鳥は自前で無人車を生産・販売するのではなく、事業を九識智能へ集約して「菜鳥無人車」ブランドを委ねる形を取った。これにより九識智能は、単なる車両メーカーや自動運転のソフトウエア開発企業にとどまらず、菜鳥の物流現場、顧客接点、配送ネットワークに近づくことを意味する。

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新石器:配送サービス化(RaaS)と運用インフラの構築

対する新石器は、車両を販売するだけでなく、無人車を物流の現場での配送力を強化し、必要な時だけ呼んで使う配送サービスRaaS(RoboVan-as-a-Service )へ舵を切っている。

たとえば山東省青島では、ネット配車大手「滴滴(DiDi)」傘下の物流プラットフォーム「滴滴送貨」と協力し、本来は人が運転する車とマッチングするところを状況により無人車に割り当てる実証実験が進んでいる。

新石器が目指すのは、車両を購入した配送営業所だけが利用するモデルではない。都市内の配送需要に応じ、必要な場所へ無人配送車を柔軟に配車できる物流インフラである。

また、EV充電インフラ企業の「特来電(TELD)」と提携し、無人車の自動充電・運営センター「来電島」を展開している。無人配送車を安定に稼働させるには、自動運転ソフトやセンサーだけでなく、充電、点検、整備、トラブル時の駆け付けまで含めた運用体制が欠かせない。こうした運営インフラを押さえることで、無人車を「うりきりの製品」から「都市物流サービス」へ進化させようとしている。

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台数から「運行効率と収益性」の勝負へ

新石器と九識智能の競争は、今後も販売台数や稼働台数といった数字面で比較されるだろう。しかし、勝敗の鍵は単に路上へ送り出す車両の数だけではない。

九識智能は菜鳥との統合や、高精度地図レス技術を活用し、新規都市・物流現場へ車両を素早く広げる方向を選んだ。一方の新石器は、RaaSの展開や、滴滴の配送プラットフォームとの連携、充電・運営拠点の整備を通じて、都市物流の輸送能力そのものを握ろうとしている。前者は「技術と物流エコシステムの接続」、後者は「車両と現場運用の一体化」というアプローチだ。

両社の競争は、悪路や混雑した場所を安全に走行する技術を比べる段階から、都市物流の中で、誰がより確実に荷物を運び、高い稼働率と収益性を確立できるかを競う段階へ入りつつある。

(文:山谷剛史)

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