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「J&T Express」社は、急成長を続けるインドネシアの宅配企業だ。2015年8月に設立された同社は、わずか2年間で1日あたりの宅配便取扱個数が東南アジア第2位、インドネシア第1位にまで成長した。今年3月、J&Tは「極兎速逓」という社名で中国に進出し、すでに江蘇、浙江、上海、山東、安徽、福建、広東、広西などで営業を開始している。
特に注目すべきなのは、今後極兎がEC大手「拼多多(pinduoduo)」の配送をすべて担当する可能性があることだ。それが実現すれば、中国の3大ECサイトであるアリババ、「京東(JD.com)」、拼多多の物流戦争が一触即発の状態となる。
(関連記事:J&Tエクスプレス、CEOが語る「4年でインドネシアにおける宅配最大手になった理由」)
極兎と拼多多の関係
中国で宅配業務を行うには郵政管理機関の許認可が必要だが、極兎は、すでに許認可を受けている「上海龍邦速運有限公司」を買収することで、この問題をクリアした。買収後に龍邦速運と複数の企業を新設し、企業名はすべて「地域名+極兎供応鏈有限公司」に統一されている。
EC業界関係者からの情報によると、未確認ではあるが、拼多多のEC担当チームと極兎は両社の倉庫の統合について話し合っているという。また、極兎は中国本土の宅配企業「中通(ZTO EXPRESS)」、「申通(sto express)」、「圓通(yto express)」、「百世(BEST)」、「韵達(YUNDA Express)」から管理職を中心に人材を引き抜いているとの情報もある。
J&Tの海外事業はインドネシア、ベトナム、マレーシア、タイ、フィリピン、カンボジア、シンガポールで広く展開されている。同社は、当初スマホ大手「OPPO」社の製品の東南アジアでの物流の課題を解決するために設立されており、創設者の李傑氏(Jet Lee)はOPPOインドネシアの創設者でもあった。OPPOのネットワークの支援があったからこそ、J&Tはインドネシアで順調に成長を遂げたのである。
OPPOとの関係は中国本土でも同様だ。極兎の各省の担当者は、大半がOPPO社の出身である。拼多多との関係は、電子機器メーカー「歩歩高(BBK)」の創設者段永平氏まで遡ることができる。段氏の薫陶を受け成功した経営者として、OPPO創設者の陳明永氏、同じくスマホ大手「VIVO」創設者の沈煒氏、歩歩高の金志江CEO、そして拼多多の創設者黄崢氏が有名だ。段氏はOPPOとVIVOの設立を支援し、拼多多のエンジェルラウンドの出資者でもある。したがって、OPPOと強いパイプを持つJ&Tは拼多多と緊密につながっていると考えるのが自然だ。
極兎は脅威となるか
J&Tは東南アジアで主にECサイトの「Shopee」、「Tokopedia」、「Lazada」、「Bukalapak」と提携しており、中国でも同様の戦略を取ろうとしている。これまで、極兎は拼多多、小売大手の「蘇寧(Suning)」、京東と交渉しているが、蘇寧と京東は自社の物流システムを構築しているため、極兎と競合するところがある。
極兎はほかにも「抖音(Douyin、海外版は「TikTok」)」、「快手(Kuaishou、海外版は「Kwai」)」、「頭条(Toutiao)」との提携を模索しているが、魅力的なのはやはり拼多多だ。2019年、ECによる宅配便の1/3が拼多多での購入から来ており、その比率はさらに増えている。
だが、極兎の計画通りに行くかどうかは未知数である。
まず、極兎にはまだ十分なキャパシティがない。次に、拼多多のあくまでマーケットプレイスで、どの物流業者を利用するかは出店者が決めるものであり、拼多多が強制することはできない。そして、極兎のコストはまだ高い。現在同社の宅配物1点あたりのコストは3元(約45円)前後だが、中国の大口顧客は通常1点2.8元(約42円)の価格を求めてくる。
そのため、極兎の関係者は「2年間赤字の覚悟はできている」と話す。中国の既存大手宅配企業と価格競争をするつもりはなく、業界平均水準の価格を維持していく予定だ。
中国のEC大手のなかで、拼多多のみが物流に乗り出しておらず、宅配企業の株式も保有していない。また、同社がこれまで何度も物流に興味がないと表明していたのも事実である。しかし、同社からの宅配物の件数が増えるに連れ、宅配企業との交渉において優位に立つようになり、業界を左右するだけの発言力を持つに至った。このタイミングで、満を持して物流に参入することも不可能ではない。
(翻訳:小六)
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