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「このビキニを見た瞬間、これを着てハワイでシュノーケリングしている自分を思い浮かべたわ」。米国のファッション系インフルエンサーの女性は、ある短編動画サービスを通じてネット通販で買ったばかりのセパレート式の水着を嬉々としてフォロワーに披露した。
彼女が購入したのは現在米国で流行中の中国ブランド「Cupshe(カップシー)」の水着だ。彼女は「開封動画」を撮影するためにさまざまなデザインのCupsheの水着を16着購入した。動画では「品質やファッショナブルさ、ユニークさが、わたしがスイムウェアを選ぶときの重要なポイント」と説明している。
中国発スイムウェア・ビーチウェアブランドCupsheはこの2〜3年ほどで米国で急速に人気となった。昨年は専用アプリのダウンロード数も好調だった。無名だったブランドが40カ国以上で人気となり、とくに米国では一気に火がついたが、この急成長ぶりはファストファッションブランド「SHEIN」のそれを連想させる。
CupsheもSHEINも中国の南京から世界へ進出し、サプライチェーンやマーケティング力を武器に欧米市場を一気に切り開いた。Cupsheは第2のSHEINになれるのだろうか。
急成長の条件
中国は長年にわたり水着の生産大国で、輸出量が輸入量を大幅に上回っていた。関連データによると世界の水着の70%が中国製だという。中国の水着産業は長年の発展を経て、層の厚いインダストリアルチェーンと物流網の基盤を築いてきた。中国製品のブランド力が上がるにしたがって、中国の水着産業も単純なOEM(受託生産)から独自ブランドのグローバル化へと舵を切った。
Cupsheはその中でも群を抜いて成功している。2015年の設立当初はあらゆる商品カテゴリーを手がけており、スイムウェアはその中のごく一部に過ぎなかった。しかし1年後、より的を絞ってスイムウェア市場に注目。「高品質でファッショナブルでありながらリーズナブル」というブランドの位置づけを明確にした。その後、スイムウェアブランドとして徐々に海外進出を進め、南京から世界へ飛び出した。
コロナ禍にも関わらず、20年と21年の世界の水着の販売数は相次いで過去最高を更新した。市場調査会社NPDのデータによると、21年1〜5月、成人向け水着の販売額は27億ドル(約3600億円)で19年同期から2割近く伸びた。ネット通販大手アマゾンでは、水着の販売数の増加傾向がさらに顕著だ。21年3〜4月、アマゾンで販売された水着は前年同期に比べ2倍以上となっている。
Cupsheにとっては急成長の条件が揃った。
Cupsheの顧客数は18年に1000万人を超え、20年の売上高は1億5000万ドル(約200億円)に達した。21年には公式アプリのダウンロード数が米国の通販系アプリとして好成績を記録した。通販系で上位500位にランクインした中で唯一、Cupsheは水着の販売に特化したアプリだ。21年の売上高は2億5000万ドル(約340億円)を超えると予想されている。
ウェブサイト分析ツールSimilarwebのデータでは、Cupsheの自社サイトへのアクセス数は今年5月に520万に達しており、約6割が米国からのアクセスだった。
米国市場を魅了した理由
米国は世界最大のスイムウェア・ビーチウェア市場であり、Cupsheにとっても重要なターゲット市場だ。
Cupsheブランドを創業した趙黎明(Mike Zhao)氏は長年米国に住み、早くから米国で自らのデザインチームを立ち上げた。あるCupsheの関係者によると、越境コマースを手がける業者の多くがアリババの「1688.com」で商品を仕入れていたころ、Cupsheはすでに海外市場向けにオリジナル商品をデザインしていたという。そのためよりスピーディーに、より柔軟に現地の最新トレンドをキャッチできるようになり、海外ユーザーの消費習慣や美意識に合った商品を作れるようになったという。
Cupsheのサイズ展開はXSからXXLまでと幅広く、プラスサイズ専門の商品カテゴリーも設けており、サイトではプラスサイズのモデルたちが自信たっぷりに商品をアピールしている。
SHEINのスイムウェアは多くが10ドル(約1350円)以下だが、Cupsheは20〜30ドル(約2700〜4050円)とやや高い。それでも消費者は「コスパが良い」と評価している。両者はブランドの立ち位置もやや異なり、CupsheはZ世代の女性にとどまらず、ワーキングマザーやプラスサイズの女性、男性など、ターゲットをより幅広く設定している。
Similarwebのデータでは、SHEIN自社サイトの訪問者はZ世代が占める割合が最も高く、34歳以下の顧客が全体の約6割を占める。Cupshe自社サイトの訪問者でも25〜34歳の占める割合が最も高いが、55歳以上の占める割合も18%以上だ。
商品そのもの以外にSHEINとCupsheが似ている部分は、プロモーションでSNS運用を重視している点だ。Cupsheの商品は主に自社サイトとアマゾンで販売しているが、顧客をサイトに誘導する役割は各種SNSだ。
スイムウェアに関連したコンテンツは自然と多くの消費者がシェアしたり「いいね!」を押したりする。動画共有サイトYoutubeにはCupsheの商品レビュー動画が多数投稿されている。ファッション系アカウントが投稿するコンテンツの多くがカバー画像にスイムウェアを着用したものを使っており、多くの人の目を引いている。
このような動画はかなりの再生数を稼ぎ出す。カナダのユーチューバーMia MaplesがCupsheのさまざまな商品を試着した動画は70万回以上再生され、800以上のコメントがついた。
インフルエンサーマーケティングのほかにもCupsheはSNSで公式アカウントを運営しており、新商品を発表したりスタイリングを提案したり、プレゼントキャンペーンを展開したりしている。公式アカウントによってブランドの知名度は明らかに上がり、サイト外のトラフィックを自社サイトへ誘導する重要な役割を果たしている。
Cupsheは現在、InstagramとFacebookでフォロワーが105万人以上となっている。Similarwebのデータによると、SNSへのアクセスはFacebookが半数以上、YouTubeが約3割を占める。
水着は一般消費者が頻繁に購入するものではない上、業界は長らく季節性による販売への影響に直面してきた。Cupsheもスイムウェアから他の商品カテゴリーに拡張してリピート率を高め、季節による縛りを減らすよう取り組んでいる最中だ。
すでにスイムウェア以外の商品も取り扱っている。21年にはショートパンツやトレーニングシャツ、レギンス、ワンピース、カジュアルジャケットなどのスポーツウェアやカジュアルウェアも発売し、「夏」「ビーチ」などに限られてきたこれまでのイメージを取り払った。
(翻訳・山下にか)
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