鹿島、アジア事業拠点「The GEAR」で2回目のイノベーションイベント 東南アジアのスタートアップと連携強化

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日本ゼネコン大手鹿島建設の子会社であるKajima Development(以下、Kajima)は2024年3月15日、シンガポールにあるアジア統括事業拠点「The GEAR」で、第2回となるイノベーション・イベント「フューチャー・シティ・フェスティバル(FCF)2.0」を開催した。

FCF 2.0は、シンガポール建設庁(BCA)と共同で開催され、Kajimaとそのパートナー企業が、建築・環境分野で共同展開する革新的な取り組みを紹介した。

Kajimaのイノベーション責任者であるLuke Wu(ルーク・ウー)氏は、FCF 2.0を開催するにあたり、「The GEARは、建設・不動産業界の実証プラットフォームであり、コミュニティのハブとして機能している。そして多様なステークホルダーが集うグローバルな場ともなっている。ここでは、様々なアイデアが集約され、イノベーションが繁栄し、パートナーシップが花開いている。私たちの施設は単なる物理的な空間ではなく、コラボレーションの触媒として、建築・環境の未来を形作ることを目指している」と述べた。

コラボレーションの触媒

2023年8月にThe GEARを開設して以来、Kajimaが当初から影響を与えたのは、建設・不動産分野で事業を展開するスタートアップ企業だった。同年9月に第1回FCFを開催した際に、Kajimaは国際的なスタートアップ支援機関「Rainmaking APAC」と提携して、スタートアップとの協業に向けたプログラムを開始した。そして過去6ヶ月間にわたって8社のスタートアップを支援し、コラボレーションを模索した。

FCF 2.0のDemo Dayにおいて、プログラム第1期生のスタートアップ8社は、Kajimaとの協業の進捗状況やソリューションについてプレゼンテーションを行った。

例えば、プライバシーを強化する技術として合成データ生成技術を開発する「Betterdata」はThe GEARと協力しながら、現地の個人情報保護法を遵守して居住者データを収集・分析している。

また、シンガポール国立大学が支援する研究プロジェクトとして、高性能で環境に優しいコンクリート接着剤を提供する「UrbaX」が、水の浸透やひび割れを防ぐため、The GEARのコンクリート構造物に持続可能な補修・保護製品の導入を進めている。

Kajimaグループ、Rainmaking APACの代表者、プログラムに参加したスタートアップ8社(写真提供:Kajima)

FCF 2.0では、ほかにも注目を集めるいくつかの発表があった。そのひとつが、シンガポール建設庁(BCA)が主導するイノベーション・プログラムであるBEAMP(Built Environment Accelerate to Market Programme)の第5期目となるチャレンジ・プロジェクトの発表だ。さらに、Kajimaとシンガポール工科デザイン大学(SUTD)は、建設・不動産分野における人材育成と技術の商業化を目的とした3年間の覚書に調印した。

もうひとつ注目すべきは、Kajima-BIG Startup Awardが、リアルタイム・データを活用して水の使用量を削減するスマート・タップ・アタッチメントを開発した学生主導のスタートアップ「Hoo(フー)」に授与されたことだ。彼らは、シンガポール経営大学(SMU)のビジネス・イノベーション・ジェネレーター(BIG)プログラムに採択された史上最年少のチームである。この賞は、KajimaとSMUが共同で提供しており、スタートアップと産業界の関わりをさらに強化することを目的として設立された。

Hooの共同創業者・CEOのXie Ningxin氏がイベントで発表している様子。彼女は現在シンガポールのラッフルズ高校の学生(写真提供:Kajima)

スタートアップ企業のリソース不足解消へ

KajimaはFCF 2.0でスタートアップと共に成長するための支援プログラムとして、新たにコミュニティ・アクセス・プログラムを発表した。この新しいプログラムは、スタートアップ企業が効果的にスケールアップするために必要なリソースが不足する可能性を考慮し、The GEARのワークスペースや施設を提供するほか、製品やソリューションを展示する機会や、The GEARでのスタートアップ企業とのコラボレーションに関心を持つ企業、高等教育機関(IHLs)、投資家、規制当局などで構成されるKajimaのエコシステム・ネットワークに触れる機会も提供する。

Kajima Development イノベーション責任者のLuke Wu氏(写真提供:Kajima)

「資金調達の冬 」への対応

FCF 2.0では、スタートアップにとって「資金調達の冬」とも呼ばれる激動する経済環境の中で、ベンチャーキャピタリストの戦略を探るパネルディスカッションも行われた。ディスカッションでは、現在の情勢におけるスタートアップの資金調達の厳しさ、投資家の行動変化、そして長期的に成功するためにスタートアップがどのように適応すべきか、という話題を中心に展開された。

左からIon MobilityのCEO James Chan氏、Heritas CapitalのCEO Chik Wai Chiew氏、Tin Men Capitalのパートナー Murli Ravi氏、Antlerのパートナー Fady Abdel-Nour氏(写真提供:Kajima)

Tin Men CapitalのパートナーであるMurli Ravi(ムルリ・ラヴィ)氏は、資金調達の冬がもたらす影響について率直に語った。それはつまり、持続不可能な戦略を用いて顧客を「買う」スタートアップの終焉と、より少ないリソースでより多くのことを実現することに焦点を当てた価値提案の台頭である。「インフレに見舞われ、労働力が安価で獲得できなくなったとき、テクノロジーが救いの手を差し伸べることができる」と言う。

Ravi氏は続けて、投資面ではスタートアップは相互の期待に基づいて投資家を慎重に評価しなければならないと強調した。そうでなければ、スタートアップのエクイティのキャップテーブルに、まざまな期待を抱える投資家が集まり、中には裁量権を多く持ってしまう投資家も出てしまい、やっかいな状況に陥るリスクがあると述べた。

「起業家自身のやりたいことに本当に賛同してくれるかを確認するべきだと考えている。単純に、1億ドルの会社を一緒に作ろうという意味ではない。例えば、夜中の1時でも相談の電話に出てくれるような投資家を探したいのであれば、彼らがそうしてくれるかどうかを尋ねてみてほしい。ただの受動的な投資家になりたいだけかもしれない」。

Antler社のパートナーであるFady Abdel-Nour(ファディ・アブデル=ヌール)氏は、Ravi氏の指摘に加え、事業の実現性と持続可能な成長について論じ、ユニットエコノミクスと顧客獲得戦略の重要性を強調した。現在の市場環境ではスタートアップの成長に対してよりシビアに見られるようになり、実証可能な成長が最も重要であると強調している。

Heritas Capitalの最高経営責任者(CEO)Chik Wai Chiew(チク・ワイ・チュウ)氏も同様の感想を述べ、過去10年間の投資環境の変化を振り返った。低金利に後押しされ積極的な成長を遂げた時代を回想し、「季節の移り変わり」によって引き起こされた現在の市場の混乱についても語った。Chiew氏は、このような変化が創業者に与える影響にも触れ、厳しい環境に適応するための強いマインドと、抜本的な対応が求められていることを示唆した。

Ion Mobility社CEOのJames Chan(ジェームス・チャン)氏は、地政学の重要性が増していると感じているという。ディスカッションのモデレーターを務めた彼は、地政学が投資活動に影響を及ぼしている一例として、ある米国のリミテッド・パートナー(LP)がIon Mobilityの子会社が中国にあることに懸念を表明したという自身の実体験を紹介した。

スタートアップにとって変動の激しい時代ではあるが、Kajimaは様々なパートナーと共に連携し合いながら、オーブンイノベーションを実践することで、有望なスタートアップを支援している。FCF 2.0では、Kajimaが未来都市に向けた変革的なソリューションを推進する触媒の機能として前進し続けていることをあらためて認識でき、アジア地域において重要な役割を果たしていることを示した。

(36Kr Japan編集部)

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