自動運転向けに合成データ 中国・光輪智能、生成AI活用

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合成データを手がける中国スタートアップ企業「光輪智能(Lightwheel AI)」がこのほど、プレシリーズAで数千万元(数億~十数億円)を調達した。出資は経緯創投(Matrix Partners)が主導し、既存株主の奇績創壇(MiraclePlus)と辰韜資本(Cherish Capital)も参加。資金は合成データプロダクトの開発や改良、ハイレベルな人材の獲得、海外進出などに充てられる。

2023年に設立された光輪智能は、人工知能(AI)向けの合成データソリューションに注力している。生成AIとシミュレーション技術を組み合わせ、物理的にリアルで汎化可能な3Dデータを合成し、自動運転技術やエンボディドAI(身体性を持つAI)の開発向けに提供。また、モデルのトレーニングにおける実データの使用率の低さ、タグ付け(アノテーション)コストの高さ、コーナーケース(まれにしか起こらないケース)の不足といった問題の解決に貢献している。

創業者兼CEOの謝晨博士はシミュレーション分野の第一人者で、半導体大手のNVIDIA(エヌビディア)、自動運転技術開発のCruise(クルーズ)、電気自動車(EV)メーカーの蔚来汽車(NIO)などで自動運転シミュレーション部門の責任者を務めてきた。その中で合成データシステムの立ち上げに関わり、世界で初めてシミュレーションに生成AIを取り入れたことで知られる。光輪智能のチームは、NVIDIAのシミュレーション部門テックリード、アリババDAMOアカデミー(達摩院)のシミュレーション部門責任者、アントグループ(螞蟻集団)の最上位エンジニア職に最年少で就いた人物など、生成AIとシミュレーションに関する国際的な専門家で構成される。

光輪智能は、顧客企業のセンサーパラメーターやアノテーションのフォーマットに従ってデータを作り、データ量に応じて料金を課している。中国の主要自動車メーカーはここ数年、海外市場を重視するようになったが、データ収集の効率、人件費、法律などの課題にぶつかっている。同社は海外の道路が持つ特性に合わせた合成データを作り、これら企業のコストとトレーニング時間を大幅に減らしている。また、中国国内では都市部NOA(Navigate on Autopilot、自動運転のためのナビゲーション機能)の開発競争が進み、コーナーケースのデータ合成に対する大きな需要が生まれた。

同社は国内外の大手自動車メーカー、ティア1サプライヤー、自動運転技術開発企業などと提携している。2024年3月には上海人工智能実験室(Shanghai Artificial Intelligence Laboratory)と共同で、自動運転の3D Occupancy(3D占有予測)合成データセット「LightwheelOcc」を公開した。同社の合成データは、自動運転のほかにエンボディドAIやマルチモーダル大規模言語モデル(LLM)の分野でも使われ始めている。

LLMの急速な発展に伴い、それを支えるデータの重要性がますます高まっている。例えば、アノテーションと合成データを手がけるAIスタートアップScale AIは、Amazon(アマゾン)、Meta(メタ)、NVIDIAなどの大手企業を含む新たな投資家から10億ドル(約1600億円)を調達し、企業評価額は前回の資金調達時に比べ2倍の138億ドル(約2兆1700億円)に上った。CEOのAlexandr Wang氏はXで「最先端技術の研究開発では、現時点で存在しない多くのデータが必要とされており、技術開発の行方はデータに左右される」とツイートした。

米テスラの運転支援機能「FSD(フルセルフドライビング) V12」は、エンド・ツー・エンドの自動運転技術の開発に新しい流れをもたらした。しかし、FSD V12の技術アーキテクチャと複雑な環境適応性は、トレーニング用のデータをこれまで以上に必要とする。光輪智能の合成データソリューションなら、運転支援機能の開発でボトルネックとなっているデータ不足を解決できる。

今回出資した経緯創投の王華東マネージングパートナーは、AI技術の発展に伴って、データがモデルの継続的な改良に影響を及ぼす重要な要素になりつつあるとの見解を示した。合成データは理想的なソリューションだが、データの信憑性と汎化性をどのように確保するかが難しいという。その点、光輪智能は長期にわたってデータ合成に携わっており、生成AIとシミュレーション技術を組み合わせることで、合成したデータの質と効率を高めることに成功していると評価。将来的には合成データ分野の国際的なリーディングカンパニーに成長し、エンボディドAIとマルチモーダルLLMの開発を加速させることに期待を示した。

*1元=約22円、1ドル=157円で計算しています。

(翻訳・大谷晶洋)

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