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2025年11月某日、中国南部の家庭料理を提供する「南方急行」(新宿区)で「在日中国人シェフの会」が開催された。日本で働く中国人シェフ同士のノウハウ向上や関係構築が主な目的で、26回目の開催となる。今回初めて日本人にも門戸が開かれ、ガチ中華界隈で活動する筆者も参加した。
南方急行に集まったのは都内で中華料理店を経営するオーナーやシェフを中心に50人弱。
羊肉料理で有名な「味坊」で総料理長を務める明さんや社長の林さん、「南方急行」と雲南料理店「食彩雲南」を経営する牟さん、湖南料理店「李厨」のオーナー劉さん……ガチ中華という言葉が生まれる前から本格中華を提供する店として業界をけん引してきた店ばかりで、そうそうたる顔ぶれだ。首都圏で複数店舗を経営するオーナーや料理人も少なくない。
最初は大手町の「麻辣大先生」で料理長を務める四川出身の潘シェフが、麻婆豆腐や麻油鶏など調理を実演。料理におけるポイントの共有や使用している食材のこだわりなども併せて紹介された。


現地と同じ味を再現するには四川の厳選された食材を使うべしといったノウハウなども共有された。
同会には中華食材の輸入会社「三明物産」や青島ビールを輸入する「池光エンタープライズ」、オイスターソースなど調味料を販売する「李錦記」、中国ワインを輸入する会社なども協賛していた。
協賛した食材や飲み物を多くの店の料理人にもお試ししてもらうことで、メーカーや商社側にとっては新たな店への卸先の開拓にも繋がり、料理人にとってはより質の高い食材や調味料を比較して選べるというウィンウィンな場にもなっているのである。
潘さんによる麻婆豆腐実演では三明物産が輸入する豆板醤や花椒、豆豉(トウチ)などが利用され、四川省で作られた調味料や香辛料を使うことでより本場の味が再現できることも伝えられていた。
池袋などの中華物産店などで購入できる食材を使って調理をするだけでお店の味になるというのがシェフからすれば当たり前なのかもしれないが、家でも中華料理を作る私自身にとっては意外な発見だった。
シェフは中国語で説明するが、日本人参加者向けに同時通訳される。できあがった麻婆豆腐は参加者に振る舞われた。参加者たちからは「美味い。白米が食べたくなる」と絶賛の声が挙がった。
料理の実演が終わったらシェフの会の料理人たちがつくるガチ中華を囲んで宴会だ。

会場になった南方急行の料理に加え、潘シェフが特別にふるまう四川料理や、四川料理店「香辣妹子」の手作り四川式ソーセージ、その他この日限定のコース料理がなんと計15品も提供された。
協賛している企業から青島ビールや中国産ワイン、白酒なども提供され、複数店舗の看板料理や飲み放題のお酒を楽しめて参加費はなんと5000円。親睦を目的としている故のこの価格で、複数店舗のシェフが作るガチ中華を食べられるのはかなり貴重な体験でもある。

特にこういった会では店のメンツもかかっているのでまずいというレッテルが貼られないようそれぞれのシェフの気合もかなり入っているので必然的に美味い料理にありつくことができるのだ。
ガチ中国な雰囲気
在日中国人シェフの会は2017年に設立され、同日で26回目の開催だった。今回初めてガチ中華好きの日本人にも声が掛かり、20人近くの日本人が会場を訪れ参加した。
同会副会長で「南方急行」を経営する牟さんによると、これまでは一部の関係者以外に日本人が参加することはなかった。
「これまでもガチ中華に興味がある一部の日本人から参加希望が出ていたんです。どうせならたくさんの方に参加してもらいたいと考え、協会のメンバーとも話し合って広く募集をかけることにしました」(牟さん)。
ガチ中華に興味がある日本人や中国語を勉強している日本人にとっては、さまざまな店舗のオーナーや料理人と交流でき、日本にいながら中国語を実践で使うことができるので極めてよい機会であることには間違いない。
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一方で、参加した中国人料理人の大半は日本語が流暢でなく、交流の敷居は低くないと感じた。もちろんガチ中華が大好きなら、料理を味わうだけで十分に満足できる。
会が盛り上がってくる終盤にはテーブルでタバコが据える「ガチ中国」状態になっていた。かなりディープな雰囲気なので、さらに日本人参加者の裾野を広げたいのであれば改善点と言えるかもしれない。
次回は1月の開催を予定しており、引き続き日本人の参加者も募るという。ガチ中華のさらに奥にある深い世界に飛び込んでみたい方は要チェックだ。
(文:阿生)
東京で中華を食べ歩く会社員。早稲田大学在学中に上海・復旦大学に1年間留学し、現地中華にはまる。現在はIT企業に勤める傍ら都内に新しくオープンした中華を食べ歩いている。X:iam_asheng
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