圧力も滑りも温度も検知、伸縮率400%超 中国新興がロボット用「電子スキン」

ロボット向け触覚技術を手がける中国スタートアップ「感知紀元(SensEra)」はこのほど、松禾資本(Green Pine Capital)の主導するエンジェルラウンドで1000万元(約2億4000万円)規模の資金を調達した。調達資金は試験生産ラインの建設や製品開発、人材採用などに充て、複数種類の触覚情報を検知できる「電子スキン」の量産を目指す。

感知紀元は2025年12月に設立された。マルチモーダル対応の電子スキンや触覚センサー、AIを組み合わせ、ロボット向けの触覚システムを開発する。創業者で最高技術責任者(CTO)の劉瑞遠氏は、中国科学院院士でナノ発電機の研究で知られる王中林氏や、フレキシブルエレクトロニクス研究の第一人者である東京大学の染谷隆夫教授のもとで研究した経歴を持つ。現在は蘇州大学の特任教授を兼務する。

エンボディドAI(身体性を持つ人工知能)の実用化に向け、ロボットが現実世界の物体や環境を認識する技術の重要性が高まっている。カメラなどを使った視覚認識に比べ、触覚認識は発展途上にある。現在主流の触覚ソリューションには電気抵抗式、静電容量式、6軸センサーなどがあるが、検出できる情報は圧力や位置など特定のデータに限られる。そのため、ボ壊れやすい物体をつかんだり、滑りを検知しながらボトルのキャップを回したりするといった細かい操作には対応できず、信号ドリフトや応答遅延などの課題も抱えている。

感知紀元は、圧力や滑り、温度、表面の質感、変形などを同時に検知できる電子スキンを開発した。柔軟性の高い生体模倣材料を使い、ロボットの腕や指、関節など曲面部分にも装着できる。伸縮率は400%を超え、100万回の耐久試験を実施したという。取得した複数の情報をミリ秒単位で処理し、ロボットの制御システムに送る。一部の製品では、外部の刺激に反応して色が変化する人間の皮膚の仕組みまで再現している。

高い柔軟性を実現

複数のセンサーを組み合わせる一般的な方式とは異なり、感知紀元は材料設計から独自に開発した。導電性インクや圧電材料など、異なる機能を持つ材料を1枚のフレキシブル基板に集積。信号干渉を抑える独自の配置設計により、柔軟性を保ちながら複数の触覚情報を同時に取得できるようにした。

触覚データを解析するAIアルゴリズムも開発した。転移学習を活用し、取得したデータから物体の硬さや表面の質感などを推定する。学習済みの知識を応用することで、初めて触れる物体の特徴も識別できるという。

センサーによるデータ取得から特徴の抽出、AIモデルによる認識までを一体化し、単に「検知」だけでなく、対象物を「理解」するシステムを目指している。

商用化に向け、中国の大手ヒューマノイドメーカーと戦略提携を結んだ。新エネルギー車(NEV)や介護ロボット分野でも商談を進めており、複数の企業から合計数千万元規模の発注意向があるという。スマートコックピットの触覚インターフェースやリハビリテーション用ロボットなどでは、すでに実証を始めている。

劉CTOは、ロボットの触覚技術も自動運転と同様に、まず高性能なセンサーを普及させ、そこで蓄積したデータをもとに標準化されたデータセットや汎用的な基盤モデルを構築する段階へ進むとみる。感知紀元は今後、材料からセンサー、AIアルゴリズムまでを網羅する技術基盤の構築を進め、ロボットの触覚産業を支えるインフラ企業となることを目指す。

*1元=約24円で計算しています。

(翻訳・畠中裕子)

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