AIで工場のエネルギーを自律制御 中国新興が数十億円調達、TSMCやCATLにも導入
フィジカルAI(現実世界の物理法則を理解し、自律的に機器を制御するAI)を手掛ける中国スタートアップ「深度智控(DeepCtrls)」はこのほど、シリーズBで数億元(数十億円)規模の資金調達を完了した。今回の出資は、国投創新(SDIC Fund)と招銀国際(CMB International)が主導し、太陽光発電大手の晶科能源(Jinko Solar)に加え、紅杉中国(HongShan)、源碼資本(Source Code Capital)、光遠資本(Forebright Capital)、招商局創投(China Merchants Venture Capital)などの既存株主も参加した。
資金は主に、フィジカルAIのコアアルゴリズム開発や省エネAIエージェント搭載システムの標準品「DeepBot」のアップグレード、および東南アジア、中東、欧米など海外市場の開拓に充てられる。
2018年設立の深度智控は、エネルギーシステム用フィジカルAIを手がけている。メカニスティックモデルとAIを組み合わせて独自に開発したフィジカルAIは、データを分析するだけでなく、設備動作の基本的な物理法則を理解し、自律的な意思決定、閉ループ制御、継続的な最適化が可能で、従来の産業用AIが抱える解釈可能性の不足や汎化性能の限界といった課題を解決した。
ほとんどの産業用AIが依然として「診断・提案システム」のレベルにとどまるなか、同社のAIはエネルギーシステムを自律的に制御し、データセンターや半導体、新エネルギーなど高い安定性とエネルギー効率が求められる分野に導入できる。
創業者の李輝博士は長年にわたって物理学とAIの学際研究に携わり、中国の清華大学や米ローレンス・バークレー国立研究所でエネルギーやAIについて研究してきた。深度智控を通じて、AIの活用シーンを物理空間へと広げ、エネルギーシステムのスマート化を目指している。

AI向け計算需要の急増に伴い、データセンターや先進製造業などの分野では、より高いレベルのエネルギー管理や制御効率が求められるようになり、フィジカルAIの活用シーンも広がった。同社によると、中国には世界で最も整備された複雑な産業システムがあり、フィジカルAIのトレーニングや検証に活用できる産業シーンが豊富なため、技術の高度化も進めやすいという。
同社は本格的に製品を供給し始めた2023年以降、売上高が毎年倍増し、昨年には大幅な黒字化を果たした。顧客は台湾積体電路製造(TSMC)、半導体メモリーの長鑫存儲(CXMT)、光モジュールの中際旭創(Zhongji Innolight)、電子機器の工業富聯(FII)、IT大手のテンセント、TikTokの字節跳動(バイトダンス)、車載電池最大手のCATLといった大手企業を含め360社余りに上る。
深度智控のAIモデルは、30万台を超える設備のリアルタイムな運用データによって学習と改良が続けられ、汎化誤差は3%を下回るという。また、標準品の「DeepBot」を通じてさまざまな業界への技術導入を進めている。
中国国内で技術力を培った同社は、2024年に海外進出を開始した。すでに東南アジアや中東、北米など10以上の国・地域に進出しており、現地で先進製造業のメーカーやAIデータセンターにサービスを提供している。今後も海外事業の規模を拡大し、世界のエネルギーインフラ分野でフィジカルAIの活用を進めていく方針だ。
*1元=約24円で計算しています。
(翻訳・大谷晶洋)