脳波で「集中力」を見える化 中国BCI新興、スポーツ向けヘッドバンド量産へ
スポーツシーンに特化したブレイン・コンピュータ・インターフェース(BCI)を開発する中国スタートアップ「脳回録(Nanoloop)」はこのほど、シード+ラウンドで深圳市南山戦略新興産業投資から約1000万元(約2億4000万円)を調達した。資金はコア技術の高度化、製品の量産化、市場開拓などに充て、スポーツ向け非侵襲型BCIの大規模商用化を加速する。
Nanoloopは2024年、清華大学出身の張昊天氏によって設立され、スポーツ時の脳状態のモニタリングに注力してきた。張氏は、スポーツ・ヘルスケア向けウェアラブルデバイスには十分なニーズがあり、その市場規模は100億ドル(約1兆6000億円)に達していると説明。ギーク層から一般消費者に人気が広がった「Whoop」や「Oura Ring」が、ウェアラブルデバイス市場の拡大を象徴する代表例だと指摘する。
ただ、市場に出回るスポーツ向けウェアラブルデバイスは、心拍数や血中酸素濃度といった身体指標のモニタリングが中心で、運動中の集中力やストレス、神経疲労といった脳の状態を捕捉するのは難しい。集中力などの要素はスポーツパフォーマンスに大きく影響するが、これまで定量化する手段に欠けていた。
Nanoloopがスポーツ愛好家600人余りを対象に調査研究を実施した結果、明らかな筋肉損傷が見られないにもかかわらず、「調子が悪い」「練習を重ねるほどパフォーマンスが落ちる」などと訴えるケースが少なくないことが分かった。そしてその背景には、往々にして神経疲労や心理的プレッシャーなどの要素があった。
この点に着目し、Nanoloopが2024年に初代製品として発売したスマートヘッドバンド「Nuromova N1」は、非侵襲型BCIを通じて運動中の前頭部脳波信号を収集し、慣性センサーやマルチモーダルデータ、AIアルゴリズムを組み合わせ、集中力やストレス、疲労、感情の起伏といった脳状態を分析。トレーニング効果や回復傾向などの複合的指標を生成し、トレーニングの参考として提供する。
スポーツシーンは、BCI技術の応用が最も難しい分野の一つとされる。運動中は頭部の揺れや筋肉の活動などによって大量のノイズが発生するため、脳波信号が干渉を受けやすくなる。この課題を解決するため、Nanoloopは電極設計や信号補償、データ品質評価、アルゴリズムを用いたノイズ除去などの技術によって、運動中の脳波データの実用性を高めた。
Nuromova N1にはコーチ向けと一般ユーザー向けの2つのバージョンが用意されている。コーチは脳状態データを組み合わせてトレーニング計画を最適化し、選手がトレーニングの強度やペースを合理的に調整するようサポートできる。一般ユーザーは自身のトレーニング状態をモニタリングするだけでなく、メディテーションや呼吸トレーニング、ストレッチ、睡眠管理などの方法を組み合わせ、コンディションの回復を促すことができる。

張氏によると、スポーツシーンに特化して蓄積した脳波データやアルゴリズム能力は、将来的にはヘルスケアなど幅広い用途への活用が見込めるという。Nanoloopはすでに、脳波や慣性センサー、トレーニング内容、主観評価などの情報を含む約500時間分のマルチモーダルデータを収集。射撃やゴルフ、自転車競技、バスケットボール、レスリングなどの種目に応用している。
事業化の面では、清華大学や北京体育大学、首都体育学院などの大学のほか、スポーツデータサービス機関と提携関係を構築。また、スポーツ愛好家など初期ユーザーからの受注獲得を進めると同時に、海外展開も開始している。
*1元=約24円、1ドル=約162円で計算しています。
(翻訳・田村広子)