「Seedance」の次は「世界モデル」 バイトダンス、2026年AI戦略の全貌

TikTok運営会社の中国テック大手、バイトダンス(字節跳動)が、AI戦略の全面的な刷新を進めている。複数の関係者によると、同社のAI開発部門「Seed」は2026年に、世界モデルの構築、動画生成モデルの優位性維持、コーディング能力の基盤強化、AIアシスタント「豆包(Doubao)」の商用化と海外展開の加速という4つの重点目標を設定したという。

AI競争の次なる主戦場は「世界モデル」

バイトダンスのAIモデル「Seed 2.0」と動画生成AIモデル「Seedance 2.0」はともに世界のトップ集団入りを果たし、豆包の1日あたりアクティブユーザー数(DAU)も2億人を突破するなど、同社のAI事業は順調に拡大している。しかし、そのAIラインアップに唯一欠けているのが、次世代AIモデル研究の重要なステップとなる世界モデルだ。

実のところ、バイトダンスは世界モデルの分野では後発組になる。2024年、電子商取引(EC)大手アリババグループから移籍して間もない周暢氏が世界モデル研究の責任者となったが、当時は動画生成モデルへのリソース投入が優先され、目立った動きはなかった。25年になってようやく小規模なチームを編成し、視覚・言語・動作を統合して制御する「VLA(Vision-Language-Action)」モデルに取り組み始めたものの、エンボディドAI向けの活用に重点が置かれていた。

今年に入って、世界モデルの重要性はより一層高まっている。Seedチームで基礎研究責任者を務める呉永輝氏は、Googleが25年にリリースした「Genie 3」をベンチマークとする世界モデルを、年内に少なくとも1バージョン発表するという明確な目標を掲げた。だが関係者によると、年初の内部テストの段階では、同社の世界モデルの総合性能は世界最高水準(SOTA)に10%及ばないことが明らかになったという。

巻き返しを図るため、バイトダンスは組織体制とリソース配分の見直しを進めた。2026年2月には、Seed内に世界モデルの研究チームを新設し、米MetaのAI研究所「FAIR」出身の範浩奇氏を中心に、3Dシミュレーション技術の研究開発を推進している。また、2つあったVLA研究チームを統合し、エンボディドAIの開発に注力する体制を整えた。

世界モデルはバイトダンスのAI事業のなかでも最も多くの資金が投入されている分野だ。2026年には世界モデルの学習データに充てる予算として数千万元(数億円)が計上され、その規模は他社の3倍から4倍にあたるという。

業界関係者は、世界モデルがエンボディドAIの発展を左右するだけでなく、ゲームやエンターテインメントなど新たな応用分野の基礎になり得ると指摘、今後数年間にわたりAI開発競争における大きなポイントなるとの見方を示す。

AIエージェントを支える「コーディング力」

バイトダンスは、コーディング能力がAIエージェントの性能を決める要素であり、推論や計画能力を支える重要な基盤になると考えて、長期にわたり多額の投資を続けてきた。

しかし、智譜(Zhipu AI)や月之暗面(Moonshot AI)といったAIモデル開発企業の製品に比べ、バイトダンスのコーディング事業はこれまで存在感が薄かった。その最大の要因は、現場からのフィードバックが不足していたことにある。これまでバイトダンス社内では、開発に米アンソロピックの「Claude Code」や中国AIスタートアップ・DeepSeekなど外部のツールを利用するケースが多く、Seedが独自開発したコーディングモデルには、改良に必要なデータを継続的に蓄積されにくかった。

その状況がここにきて変わりつつある。関係者によると、今年に入ってからバイトダンスは複数の事業部門で、開発にSeedモデルを優先的に使用するよう求めているという。社内で大規模に使用することで自社で製品をテストする「ドッグフーディング」の仕組みを確立し、モデルの最適化や実データのフィードバック、評価システムのサイクルを形成して、AIエージェントの能力向上を加速する狙いだ。

以前は高額な報酬で人材を集め、開発チームを拡充してきたが、2026年になって人事戦略にも変化が生じている。人材紹介会社によると、Seedチームは社内での人材育成を重視するようになり、同時にDeepSeekや米OpenAI、Google傘下のDeepMind、MetaなどからもAI人材の募集を継続しているという。

「動画生成は「動的生成」の時代へ

動画生成はバイトダンスが最も得意とする分野だ。

業界関係者の多くは、動画生成モデル・Seedance 2.0が世界トップクラスとなれたのは、膨大な学習データと大規模な評価システムの貢献が大きいとみている。しかしAI開発が次第にポストトレーニング(事後学習)のフェーズに移行するにつれ、単にデータ規模の拡大を続ける方法では効果が薄れつつある。このためSeedanceは、今年からデータの質とポストトレーニングの最適化に重点を移し、「動的生成」という新たな方向を模索し始めている。

動的生成とは、ユーザーが動画の生成過程で継続的に指示を入力することにより、ストーリー展開やキャラクター、映像の方向性をリアルタイムに変化させる技術を指す。こうした技術は、ショートドラマやAIミニゲームに応用できるだけでなく、世界モデルの有力な実用化分野と考えられている。

周氏は動的生成の将来性を高く評価し、将来的には世界モデルとのシナジー効果を期待しているという。

豆包、収益化フェーズへ

AIアプリ・豆包の2026年のキーワードは商用化だ。

今年の春節(旧正月)後、豆包のDAUは2億人を突破し、中国最大級のユーザー規模を誇るAIアプリとなった。しかしユーザーの増加は、推論コストの上昇や維持管理の負担増を意味する。

今年に入り、豆包は明らかに商用化のペースを加速している。6月にはプロユーザー向けの「豆包プロ版」をリリース、ソフトウェア開発からデータ分析、金融分析、パワーポイント資料作成など幅広い業務シーンに対応する。

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今後さらにエンタープライズ版のリリースも計画しており、企業内の業務システムとの連携をさらに強化する。AIを生産性向上のツールへと高め、Claude Codeが海外のビジネスや開発現場で多額の年間経常収益(ARR)を手にした成功モデルの再現を目指す。

しかし、競争環境は熾烈だ。業界関係者によると、現在法人向けAI市場にはすでに大量のソリューションプロバイダーがひしめいており、後発組となる豆包は顧客獲得のために多額の費用を投じる必要がある。

国内市場だけでなく、海外展開も今年の重要な目標だ。関係者によると、豆包の海外版「Dola」は、年内にDAU3000万人達成を目標としている。欧米市場は既にClaudeを初めOpenAIの「ChatGPT」やGoogleの「Gemini」などに押えられていることを考慮し、Dolaはインドネシア、マレーシア、メキシコなど非英語圏の市場に重点を置いて、差別化を図ることでユーザー規模の拡大を狙う。

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モデルやデータ、アプリのクローズドループが形成されつつあるなか、バイトダンスのAI事業は、モデル単体で戦う段階から、世界モデルやAIエージェント、収益性など総合力を競うフェーズに移行し始めている。

(翻訳・36Kr Japan編集部)

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