中国発「宇宙バス」、年内初飛行へ 衛星輸送から軌道上メンテナンス狙う

宇宙空間での軌道上サービスを手がける「北京無限宇航科技(Beijing Infinite Aerospace Technology)」がこのほど、シリーズAで約1億元(20億円超)を調達した。鼎峰科創(TopView Innovation)が出資を主導し、雲鼎資本(Yunding Capital)、泰亜投資(Taiya Investment)が参加したほか、深担創投や松禾創投など既存株主も追加出資を行った。資金は軌道間輸送機(OTV)「宇宙バス」シリーズの初飛行試験や後続モデルの開発、量産体制の構築に充てられる。

無限宇航は2023年に設立され、商用衛星コンステレーション向けに軌道間輸送や軌道上サービスを展開する。創業者の李健氏は、宇宙ゴミを能動的に除去する宇宙機の開発や飛行試験に携わった経歴があり、中核メンバーは宇宙業界で平均15年以上の経験を持つという。

低軌道衛星コンステレーションの整備が加速するなか、複数の衛星を1基のロケットでまとめて打ち上げる「ライドシェア」が広がっている。それに伴い、宇宙空間に運ばれた衛星をそれぞれの目的軌道まで届ける「ラストワンマイル」が新たな商機として浮上している。

中国「朱雀3号」、着陸脚で地上に帰還 中国初のロケット陸上回収に成功

従来では、複数の衛星をいったん同じ軌道に投入し、その後、各衛星が自らの推進システムを使って目的の軌道まで移動する必要がある。OTVはロケットから複数の衛星を受け取り、それぞれの目的軌道まで送り届ける「宇宙のシャトルバス」の役割を担い、衛星の軌道面の調整や配置の変更にも対応する。

この方式により、衛星側の推進システムへの負担を軽減できるほか、1回のロケット打ち上げで衛星を投入できる軌道の選択肢を広げ、輸送能力を効率的に活用できる。海外では商用化が先行しており、米SpaceXの創業メンバーだったトム・ミューラー氏が設立した米Impulse Spaceや、イタリアのD-Orbitなどが事業を展開している。

無限宇航が独自開発する「宇宙バス」シリーズは、200~3万6000kmの軌道高度に対応する計画で、異なる軌道への衛星投入、複数衛星の同時輸送、コンステレーション展開などのサービスを提供する。衛星の輸送を終えた後も軌道上に長期間とどまることができ、実証実験やメンテナンス、燃料補給などのサービスに活用する構想だ。

技術面では、推進システムや誘導航法制御(GNC)、軌道上作業を柱とする技術体系を構築している。自社開発した推力300ニュートンの軌道変更用エンジンには再生冷却技術を採用したほか、高精度のGNCシステムと組み合わせることで広範囲の軌道変更に対応する。将来的には軌道上でのドッキングにも対応する計画で、軌道上作業に使う宇宙用ロボットアームの開発も進めている。

2025年3月、「宇宙バス1号」が中国初となる全システムの地上試験を完了。軌道変更や姿勢調整、軌道遷移など軌道上のプロセスについてもシミュレーション検証を行った。今後は制御システムと動力システムの連携検証を進め、26年10~12月期に最初の飛行試験を実施する計画だという。

無限宇航が独⾃開発する「宇宙バス」シリーズ

無限宇航は現在、複数の衛星・ロケット企業と提携を進めている。再使用型ロケットの普及などで打ち上げコストが低下し、軌道上の衛星数が増えれば、衛星を目的軌道まで運ぶだけでなく、燃料補給やメンテナンス、運用を終えた衛星の移動といった軌道上サービスの需要も拡大するとみる。「宇宙バス」を入り口に、衛星輸送から長期的な軌道上サービスへ事業を広げる方針だ。

*1元=約24円で計算しています。

(翻訳・畠中裕子)

日本企業のDXを促進するプラットフォーム「CONNECTO」
無料コンテンツ公開中

最新記事