ガチ中華の名店「味坊」が茨城になぜか「町中華」、料理人不足解決へロボットシェフ導入
茨城県守谷市の国道294号線沿いに今月6日にオープンした「町中華 炒炒」。見た目はよくある中華料理店だが、実はこの店、都内を中心にラム肉を使ったガチ中華を提供する人気チェーン「味坊集団」の新店舗であり、自動調理マシンのロボットが炒め物を作る「ロボット料理店」でもある。ロボットでなぜ町中華なのか味坊集団社長の林さんに聞いてみた。
具材セットし2分で完成
「町中華 炒炒」がオープンした翌日、茨城県守谷市の店舗まで足を運んでみた。店は国道294号線沿いに位置し、つくばエクスプレスの守谷駅からは徒歩15分ほど。店内に入ると子供連れの家族や男性一人客、年配のご夫婦などの客が料理を食べていた。国道沿いかつ大型パチンコ店に隣接した場所にあるため、男性客が目立つ印象だ。

お店の外観。一見するとどこにでもありそうな中華料理店だ
メニューを開くと料理は約50種類ほどある。林さんによると肉野菜炒めや青椒肉絲(チンジャオロース)や回鍋肉(ホイコーロー)などの炒め物を自動調理ロボットで調理している。
厨房で自動調理ロボを見せてもらった。あらかじめカットした野菜や肉をケースの中にセットし、モニターから調理する料理名を選ぶと、鍋に油が落とされ加熱が始まる。その後、具材が鍋の中に投入され、炒められた後、自動で調味料も追加されて料理が完成する。調理の時間は具材のセットからおよそ2分足らずと、中華鍋で調理するよりも短時間で完成する。
実際に自動調理ロボで作った回鍋肉と青椒肉絲を食べてみると、よくある中華料理店で食べるような味が再現されており、ロボットが作ったとは感じられない出来栄えだ。タレも具材にしっかり行き届いていて、ムラなどもなかった。
「調味料の量もロボットが一定のタイミングで自動投入するので、味が均一になるんです」と林さんは話す。調理のタイミングや料理人によって味が変化することがないのがロボットに調理を任せるメリットと言えるだろう。

鍋が回転して炒めるようになっている

できあがった回鍋肉はトレーに着地する
ガチ中華増加で料理人不足
なぜロボットで作る店をオープンさせたのか。林さんは「ロボ中華については数年前からずっと考えていたんです」と話した。
都内を中心にガチ中華の店が増えたことで腕の良い料理人の確保は近年、難しくなっている。さらには円安の影響もあり、中国人の料理人がわざわざ日本に来て仕事をするメリットも薄くなってきている。せっかく確保した料理人も待遇のよい店を求めて別の店舗に転職してしまうこともあり、人気店の味坊集団にとっても、料理人の確保が課題になっていた。
導入した調理ロボットは1台280万円。この新店舗と別のもう一店舗に計2台設置した。
人間のように他店に引き抜かれることもないロボ中華は、料理人不足を解消する“切り札”と言える。
「現在はオープン直後で、オペレーションもまだ不安定なため数人の料理人が厨房にいますが、将来的には1~2人の料理人とロボットでお店を回せるようにしたいと考えています。配膳ロボットやQRコードでの注文メニューなども今後導入予定で、より少ない人数でお店を運営していく予定です」と林さん。
茨城で町中華の理由
中国でも一部の店ではロボットが調理をする店が出てきているが、まだ主流になっているわけではなく、味坊集団としてもロボットが調理する店舗は実験店との位置づけもあるようだ。

ロボットで炒めた回鍋肉。味坊集団でおなじみの水餃子や青菜の湯引きもある

ロボットで炒めた青椒肉絲。ロボットを調整することで作れるメニューは今後増えていくそうだ
同集団は茨城県守谷近郊に自社農園を所有し、採れたての野菜をすぐに店舗に配送することができる。また、守谷市だと都内よりも家賃が抑えられる。国道沿いにはサイゼリヤやラーメン山岡家、かっぱ寿司などのチェーン店が多く、独自性がある店であれば差別化が図れることや、隣接地に大型のパチンコ店には1000台近くの駐車場もあるため、ある程度の集客が見込める。
トラックの運転手やドライブがてらの家族など、想定する客層からするとガチ中華は集客が難しいと判断し、青椒肉絲や回鍋肉など町中華メニューを中心にしたそうだ。ただし、メニューをよく見ると焼売や水餃子、海老蒸し餃子など味坊集団の他店と同じメニューも一部並んでいる。これらは足立区にある味坊集団の工場で作ったもので、店内で蒸すだけで提供できるため、運営の負担になりにくい。
守谷市は運営のコスト面が抑えられ、集客も見込める場所だが、都内から遠く料理人が確保しにくいという点からロボ中華を導入するにも打ってつけの場所だ。
林さんによると、守谷のロボ中華がオペレーションにうまくはまれば、他の店舗に展開する可能性もあるとのこと。味坊集団としてはさらなる店舗拡大も計画しているそうで、ロボットが味坊集団の厨房を救うことが期待されている。

店内は町中華とは違った近未来感がある内装だ
(文:阿生)
東京で中華を食べ歩く会社員。早稲田大学在学中に上海・復旦大学に1年間留学し、現地中華にはまる。現在はIT企業に勤める傍ら都内に新しくオープンした中華を食べ歩いている。X:iam_asheng
36Kr連載:中華ビジネス戦記