安くなった中国EV、修理は高い⋯高度化する車両、追いつかない整備網

中国では手頃な価格帯の電気自動車(EV)が増えるなか、EVの車両構造の複雑化に伴って、修理費用や待ち時間、サービスの透明性といった新たな課題が浮かび上がってきた。

自動車産業調査会社J.D. Powerが発表した「2026年中国新エネルギー車(NEV)アフターサービス満足度調査」によると、事故で損傷したEVの修理費用はガソリン車の1.7倍に上る一方、顧客満足度はガソリン車より低かった。アフターサービスを利用する際の待ち時間は前年比で45.6%増加している。

同調査は、2024年1月から26年2月にかけてNEVを購入した中国81都市の1万3708人を対象に実施したもので、56ブランドのEVが含まれている。

もっとも、EVの修理費用が全て高額になるわけではない。調査によると、事故車両の88%は1万元(約24万円)以下の少額修理に該当する。多くのユーザーにとっては修理費用だけが問題なのではなく、面倒な修理手続きや進捗の分かりづらさも負担になっているのだ。

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修理費用が高額になるのは、車両構造の変化によるところが大きい。一部の車種では、一体成型を可能とするダイカスト工法や集積度の高い設計を採用し、部品点数を減らすことで生産効率を高めている。その反面、主要な構造部品が損傷した場合には、広範囲にわたって交換が必要になり、部品代や工賃が膨らむ。ただ、「一体成型された部分は修理できず、丸ごと交換するしかない」とは限らず、損傷した場所や程度、メーカーの修理規定によって、部分的な修理が可能かどうかは異なってくる。

車両のスマート化も、修理工程をより複雑にしている。カメラやレーダーなどを搭載した車両が衝突した場合、修理の際にセンサーの点検や再調整が必要になるケースがある。バッテリーやモーター、電気制御系統など高電圧システムの修理では、専門の検査機器や安全な作業環境が欠かせない。もちろん、こうした問題はEVに限ったことではないが、電動化にスマート化が加わることで、整備工場に求められる設備や技術者の水準が跳ね上がってくる。

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修理に必要な設備や情報の十分な確保も課題となっている。報道によると、中国にある約40万店の整備工場のうち、バッテリー、モーター、電気制御系からなる「三電システム」を一通り修理できる店舗はわずか2%ほどにとどまる。EVの修理のうち、独立系の整備工場が請け負う割合も8%程度で、大部分はメーカーの正規ディーラーに集中している。独立系整備工場が複雑な修理に対応できるかどうかは、診断ツールや技術情報、純正部品、ソフトウエアサポートを入手できるかにかかっている。ただし、こうしたリソースをどこまで開放するかはメーカーによって異なる。

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しかも、ガソリン車をメインに扱ってきた整備工場がEVに対応するためには、技術の習得や設備投資など、さまざまな壁が立ちはだかる。タイヤ交換や板金塗装ができても、高電圧システムの故障に対応できるとは限らない。複雑な修理が限られた認定サービス拠点に集中すれば、修理先の選択肢が少ない、予約が取りにくい、見積もりを比較しにくいといった問題が噴出するのは目に見えている。

現在、中国ではアフターサービス体制の整備が進められている。交通運輸部は2025年3月、NEVのアフターサービスや修理に関する技術要件などの業界基準を公表し、サービス体制強化に向けた基盤を整えた。ただ、いずれも強制力を伴わない推奨基準であり、実効性を高めるには、自動車メーカーや整備工場、保険会社の協力と連携が欠かせない。また、車両の設計段階から、修理のしやすさに配慮することも重要になる。

消費者が重視するのは、車両の購入費用だけでなく、電気代や保険料、修理費用などを含めたトータルの維持費だ。今後は、無理なく負担できる費用で、迅速に修理を受けられるかどうかも、EVブランドの価値を決める要素になるだろう。

*1元=約24円で計算しています。

(翻訳・畠中裕子)

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