企業価値が半年で2倍に、ソフトバンクGから巨額資金を調達したフィットネスアプリ「Keep」

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コロナ禍によって健康の重要さを再認識し、自宅での運動を習慣化させた人は多い。現在、世界中のホームフィットネス業界で激しい競争が繰り広げられている。

昨年は、ネット接続型のフィットネスバイクやトレッドミルなどフィットネス機器を手掛ける米「Peloton Interactive(ペロトン・インタラクティブ)」の時価総額が6倍に跳ね上がった。米アップルはフィットネス動画配信のサブスクサービス「Apple Fitness+」を一部の国で先行リリースしている。

フィットネス関連企業向け店舗管理システムを手掛ける「三体雲動(styd)」によると、昨年はフィットネス関連企業の資金調達が世界全体で109件あり、うち過半数がオンライン機能やスマート機能に関係していた。中でもとくに注目されたのがホームフィットネスだった。6月には、カナダのスポーツウエア大手「lululemon athletica(ルルレモン・アスレティカ)」がホームフィットネス機器メーカーの米「Mirror(ミラー)」を5億ドル(約520億円)で買収した。

中国では12月末、ホームフィットネスサービス「Keep」が、ソフトバンクグループやテンセントなどから3億6000万ドル(約370億円)を調達した。これにより評価額を20億ドル(約2100億円)の大台に乗せ、昨年5月の資金調達後の10億ドルから2倍に膨れ上がった。

Keepは昨年6月、事業全体の黒字化達成を明らかにし、引き続きホームフィットネスに注力するとしていた。また、健康補助食品やトレーニングウエア、フィットネス機器、フィットネスプログラムなど複合的な事業展開を推進し、オンラインプログラムと会員システムを全面的に連携させ、3億人を超えるユーザーにホームフィットネスサービスを提供すると同時に、プラットフォーム化を進めていく方針も示していた。

フィットネス機器メーカーからフィットネスの総合プラットフォームへ

Keep社が提供するフィットネスアプリ「Keep」のファーストバージョンは、2015年2月4日にリリースされた。中国はすでに本格的な4G時代に突入しており、米アップルの「iPhone6」も発売されたばかりだった。Keepが普及するための下地は整っていた。

リリースから3カ月でKeepのユーザー数は200万人に達し、同一カテゴリーでランキング第5位に入った。同年にはアップルが選ぶ傑作アプリ「BEST OF 2015」に選出され、大中華圏で発売されるiPhoneの全モデルにプリインストールされることとなった。

同社はアプリの機能改善を進めると同時に、フィットネスプログラム1200本以上を自社開発し、会員システムも打ち出した。会員はプロインストラクターによる動画レッスンを視聴できるほか、自分専用のトレーニング計画も受け取れる。現在の会員数は1000万人を超えており、契約初月の会費9元(約144円)で計算すると1カ月当たりの売上高は1億元(約16億円)以上になるとみられる。

2018年にはオンラインコンテンツの強みを生かしたオフライン事業の展開をスタート。ユーザーの生活全般に焦点を合わせ、家庭用のスマートフィットネスデバイスやフィットネス機器、健康補助食品などを開発したほか、フィットネスクラブ「Keepland」を開設した。家庭用スマートフィットネスバイク「Keep C1」は、昨年のショッピングイベント「ダブルイレブン(双11)」にはアリババ系ECモール「天猫(Tmall)」の同一カテゴリー内で売上高第1位となった。

昨年は、ホームフィットネス愛好者向けのワンストップ型ソリューションをリリース。これまで続けてきた改善の成果を統合し、運動に対する意識付けや機器・コンテンツの提供、フィットネスコミュニティの構築などを結びつけたサービスネットワークを形成しており、ユーザーにとって最も便利なフィットネスツールとしての位置付けを確かなものとした。

その一方で、コンテンツIPや有名インストラクターによるプログラムを導入し、オンラインレッスンの開発を進めており、コンテンツ製作者やインストラクターなど業界関係者が新たなビジネスチャンスを見つける場にもなっている。Keep社はその役割の幅を広げ続け、プラットフォーム化に向けて前進している。

(翻訳・田村広子)

 

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