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コンピューターグラフィックス(CG)のレンダリングエンジンを開発・提供する「粒界信息科技(GritWorld)」がシリーズB+で数千万ドル(数十億円)を調達した。出資したのはIT大手バイドゥ(百度)傘下の百度創投(Baidu Ventures)や既存株主の高瓴創投(GL Ventures)など。調達した資金は第3世代レンダリングエンジンの端末・クラウド間インタラクションや使用感を改善し、商用化やプロダクト活用のエコシステム構築を加速させるために充てられる。
粒界信息科技のコアプロダクトは、昨年9月にリリースしたデュアルエンジン構造の第3世代CGレンダリングエンジン「GritGene」だ。GritGeneはクラウド用の「GritGene for Cloud」とモバイル端末用の「GritGene for Mobile」の2つのサブエンジンを擁する。クラウド側と端末側に2つのエンジンを持つデュアル構造をCGレンダリングエンジンで採用した世界初のケースだ。
この1年、メタバースという新しい概念が市場を沸かせ続けており、多くの大手企業やベンチャー企業、政府機関までが幅広い業界をターゲットにして、より没入感の強い3Dの応用形態を積極的に模索している。近い将来、XR(クロスリアリティ:仮想現実・拡張現実・複合現実などの総称)デバイス市場により一層火が着けば、この動きはソーシャルネットワーク、ゲーム、消費財など消費者向けマーケットにも必ず飛び火するだろう。そうなれば3Dアニメーション、3Dコンテンツ、リアルタイムな3Dインタラクションなどに対する需要は爆発的に伸び、新世代のCGレンダリングエンジンが誕生するのは必然となってくる。
粒界信息科技の創業メンバーたちは世界の三大ゲームエンジンの一つ「CryEngine(Crytek)」に携わった経験があり、第1世代ゲームエンジン「Unreal(Epic Games)」、第2世代ゲームエンジン「Unity 3D(Unity Technologies)」を目標としてきた。以下2つの現状が示す通り、将来的にデバイス形態やコンピューティングをめぐる環境が進化していけば、第3世代エンジンの誕生が望まれるようになる。
1)マルチデバイス対応のグラフィックシステムに対する需要がますます顕在化してきた。マルチデバイス対応とは具体的に、クラウドに加え、スマートフォン、スマートテレビ、IoT機器、スマートグラスなどのスマートデバイスを包括する。
2)モノリシック(単体モジュールで構成された)構造のモバイルコンピューティング機器に関しては、マルチCPU、マルチGPUのほか、レイトレーシング(光線追跡)やAI処理装置(NPU、TPUなど)など特定の新しい処理装置が進化を続けている。これまでのCGレンダリングエンジンの設計段階では、将来的にここまでデバイスが進化することを充分に想定していなかった。
スマートフォンに続くインフラ級の端末機器には、より高い計算処理能力のほかに、新しいインタラクションの形式に対応でき、より大きな差別化能力や拡張性を備えている必要があるというのが業界共通の認識だ。そのため、第3世代CGレンダリングエンジンの活用ニーズはさまざまな分野に広がり、対応するデバイスもこれまでより多様になり、同時に設計の難易度も高くなる。
モバイル機器の処理能力には限界があり、消費電力に求められる条件も厳しい。また、低遅延で低消費電力であると同時に、シングルエンジンでこれらの条件を高度に満たし、なおかつクラウド側だけで計算処理を行って動画ストリーミング方式でデバイスに配信するという方法では、ローカルデバイスの計算能力やリソースの利便性を活かせない上、不安定なインターネット環境でスムーズなユーザー体験の質を保証するのが難しい。デバイスとクラウドが協調して計算する方法ならば、ローカルデバイスとクラウドの計算能力を柔軟に調整しながら、ユーザー体験の質を確保してリソースを存分に活用できる。これは必然的に第3世代CGレンダリングエンジンに求められる基盤技術となる。
粒界信息科技は5年前にはこうした第3世代エンジンの開発に着手していた。デュアルエンジン構造を採用すれば、さまざまな業界からのニーズに適応できるようになるだけでなく、クラウド用・デバイス用双方のエンジンにとって最適な基盤アーキテクチャーと技術スタックを把握することにもつながる。さらにクラウドとデバイスの協調計算処理に関するデータや経験の蓄積にも役立つ。デュアルエンジンの自社開発は技術面でも必要な道のりだったと言える。
粒界信息科技はGritGeneの特徴として、1)CPUやGPUの拡張性や新しい処理装置(レイトレーシングやNPU、TPU)への対応により優れていること、2)さまざまな業界にピンポイントで適応できること、3)ローコード化(必要最小限のソースコードで済むこと)、4)CGやデジタルコンテンツ制作のインテリジェント化、5)バーチャルとリアルのハイブリッドデータに対応できることを挙げている。
GritGeneが活用できる分野はスマートシティ、3Dアニメーション、特殊エフェクトなどだ。創業者の呉小毛博士は「今後は工業、生活、教育などさらに多くの分野に事業を広げていきたい。またライトユーザーからミディアムユーザーが使える娯楽系アプリにも対応し、3Dコンテンツ制作の間口を広げ、ユーザーを増やしていきたい」と述べている。
(翻訳・山下にか)
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